昨日は夢枕獏氏の原作を漫画化した「荒野に獣 慟哭す」の4巻が出ていたので早速読みました。いやあ、この作品にチャレンジした伊藤勢という漫画家さんはよく知らないのですが、たいしたものです。独覚ウイルスによって心身が変化した獣化兵の設定、デザインがとてもいい。夢枕氏の作品の漫画化としては、NHKでドラマ化され、映画も二本つくられた「陰陽師」が有名ですが、この「荒野に獣」の造形もグロくてそれでいて愛嬌があってとてもいい。

 
 

 以前、この欄で好きな小説、作家の名前をいくつか書きましたが、実は最も好きな作家の一人が夢枕氏です。ベストセラー作家なので、いまさら私ごときが宣伝することもないのでしょうが、すばらしい作家です。
 

 
 

 何がいいかといって、その情念と、一切の生を肯定しようという姿勢でしょうか。この人の小説は分野も方向も多岐にわたっていますが、私が最も好きな作品の一つは「涅槃の王」(全5巻)です。なにせ、主人公が若き日のゴータマ・シッダールタ、つまり仏陀なんですからぶっ飛んでいます。テーマも不老不死とはどういうものか、仏陀の悟りとは何か、という重いものでありながら、完璧なエンターテインメントのSF伝奇小説であります。すごいなあ。
 

 
 

 夢枕氏が若き日の仏陀の活躍と冒険(フィクション)を描いた作品はほかにもあります。最近、「ダ・ヴィンチ・コード」(原作は読みました。前作の「天使と悪魔」の方がいい)が妙に話題になっていますが、何もキリストものではなくても、仏陀ものでも面白いですよ。いや、ほんとにはまります。
 

 
 

 また、夢枕氏の格闘ものもすばらしいです。やはり漫画化されている「飢狼伝」をはじめ、強いとはどういうことか、人はなぜ強さを求めるのかがこれでもかと描写されています。毎日新聞が夢枕氏の格闘論の連載をしていましたが(すいません、継続中かどうか知りません)、うらやましい限りでした。今日の総合格闘技ブームの下地をつくったのは夢枕氏かも知れません。
 

 
 

 宮沢賢治という大詩人をつかって進化について考える「上弦の月を喰べる獅子」、日本史上に特筆されるべき天才、空海を主人公にした「沙門空海、唐の国にて鬼と宴す」もよかったなあ。宮本武蔵について新たな説得力ある描写をしている「大帝の剣」は近々映画が封切られるとか。
 

 
 

 手元からなくなり、本屋でもなかなかみつからない「怪男児」、読み返したいなあ。このほか夢枕氏の作品は不遇で切ない若い日々を描いた青春者、釣りもの、登山ものとさまざまで、読み応えがあります。登場人物とその名前もとても魅力的で、なんか本当に凄い作家だと私は思うのですが。