ポスト小泉候補の一人、福田康夫元官房長官は外遊先のインドネシア・ジャカルタでの講演で、「東アジア共同体」を目指すことを柱とする「新・福田ドクトリン」を発表し、東アジアでの地域統合の必要性を強調したそうです。お父上の故・赳夫元首相の「福田ドクトリン」が主に東南アジア外交の基本原則をうたったものであるのに対し、どうやら中国、関係との関係強化を念頭にしたものであるようです。

 

 これ自体はもともと、外務省の田中均前外務審議官の路線と同じですから、特に新味はありません。豪州、インドなどの役割を重視する安倍官房長官、谷内正太郎事務次官らの感覚とはやはり違うんだろうなあ、との感想を持つばかりです。

 

 でもねぇ、正直なところ、これほど執拗に反日言動を繰り返し、世界中で日本の悪口をいいまくって足を引っ張る中韓と、どうしてそこまで地域統合する必要があるんでしょうか。日本が中国文化の影響を受けたり、朝鮮半島がその窓口の一つになったりしたのは本当かもしれませんが、遣隋使、遣唐使の時代から1000年以上のときがたっています。

 

 その後も日中間、日韓間では細々とした交易や交流はありましたが、有史以来、はっきりいえば「没交渉の時代」が一番長かったのではないでしょうか。距離感がある方が自然なのかも。

 

 大阪万博の「太陽の塔」で知られるかの岡本太郎氏は、本土復帰前の沖縄に取材し、昭和35年に「中央公論」に連載した「沖縄文化論-忘れられた日本」に次のように書いています。

 

 「東洋文化圏をかざしたり、『アジアは一つなり』なんて根拠のない迷文句が、われわれの根源にあるエネルギーを見あやまらせてしまった」

 「私は極論したい。沖縄・日本をひっくるめて、この文化は東洋文化ではないということだ。地理的にはアジアだが、アジア大陸の運命はしょっていない。むしろ太平洋の島嶼文化と考えるべきである」

 

 断片的な紹介では、岡本氏の主張をあまり正確には伝えられませんが、今日まさに注目されている点(海洋国家と大陸国家との対比など)を、半世紀近く前に指摘していたのはさすがですね。岡本氏といえば、どうしてもテレビコマーシャルで目をひんむいて「芸術は爆発だ」と叫んでいた姿を思い浮かべてしまいますが、独特の観察眼と緻密なフィールドワークに基づいたこの本は、本当に面白い。名著だと思います。