本紙19日付朝刊は、北朝鮮が米国による金融制裁発動後、ベトナムやモンゴル、ロシアなど少なくとも10カ国23銀行に新たに口座を開設したと報じています。米国により、マカオの「バンコ・デルタ・アジア」と「中国銀行」の口座が凍結されたことが、北朝鮮に大きな打撃を与えたことの現われのようですね。

 

 この記事を読んで、どうしても連想してしまうのが、日本国内で破綻した北朝鮮系の朝銀信用組合の問題です。平成9年の朝銀大阪に始まる朝銀信組の破綻処理で投入された公的資金の総額は、なんと1兆4000億円弱で、平成8年に国会を揺るがした住宅金融専門会社7社への公的資金投入額6800億円の2倍にも上るのです。

 

  この朝銀信組の運営には、朝鮮総連が深くかかわっていたことが事実として認定されています。というより、総連幹部が理事長を務めるなど朝銀信組は事実上、まぎれもない総連の下部団体でした。たとえば、総連元財政局長は朝銀東京に約20の仮名・借名口座を開設し、約8億3000万円を不正流用したとして、業務上横領罪で懲役6年の実刑判決を受けています。また、朝銀東京の元理事長は、総連側に200億円以上のカネが流れたことを認めています。

 

 小泉純一郎首相が初訪朝した平成14年秋には、関東信越の破綻朝銀から、大量の預金者不明口座が見つかりました。これらの中には、朝鮮総連が管理していた口座も少なくないとみられています。あるいは、金一族の仮名口座もあったかもしれません。

 

 当時、この問題を調べていて驚いたのは、預金者が名乗り出ない(名乗り出ることができない)口座には、億を超える口座もけっこうあったことです。普通、億単位の金を預けていて、「私のものです」といえないなんて、後ろ暗いカネだとしか思えませんね。私が手に入れた金融当局の資料(非公開)によると、関東信越破綻5朝銀の「真の預金者が判明しない預金」の状況(14年10月末現在)は

 

 朝銀東京  6278口座    49億5000万円

 朝銀関東  5786口座    2億7000万円

 朝銀千葉  893口座     5000万円

 朝銀新潟  311口座     3000万円

 朝銀長野  799口座     6000万円

 合計     1万4067口座  53億6000万円

 

 また、その大口口座の上位10位はすべて朝銀東京で、内訳は

 

 ①2億5051万円②2億2807万円③1億8819万円④1億5459万円⑤1億5165万円⑥1億4935万円⑦1億3826万円⑧1億1799万円⑨1億1391万円⑩1億1390万円

 

 でした。軒並み1億円以上の預金残高があるのに、預金者が姿を見せないというわけです。こうした口座は、整理回収機構(RCC)が引き継いだのですが、相続時や転居時の届出漏れなどごく一部の単純ミスの事例を除き、ほとんど口座権利者が名乗り出ない不自然な状態が続いているようです。

 

 日本から北朝鮮への資金の流れをつかむためにも、ぜひ警察・金融当局には、こうした疑惑の口座についても解明を進めてほしいものだと思います。以前ならば北朝鮮・朝鮮総連関係は当局も手を出しにくいタブーだったかもしれませんが、今なら国民世論の後押しも得られると思うのですが。