先日、10年前に1度取材させてもらったことのある世界出版の茂木弘道さんから電話をいただきました。当時、茂木さんは日本の漫画を英語に翻訳し、文化背景などの説明を加えた雑誌『MANGAJIN』の著作権交渉、販売業務などに携わっていました。私は当時の連載記事「日本とUSA」の中で茂木さんを取り上げたのです。

 取材に対し、茂木さんはかつて国際羊毛事務局(本部・ロンドン)に勤めていて、外国との商取引や事務手続きで不都合が起こるたびに、相手側の日本への無知のために誤解され、偏見で判断された体験を語り、こう言っていました。

 「日本を理解してもらうためには、ただ訳すだけではなく、背景説明などの付加価値が必要。日本の若者は米国流を受け入れることが英語の勉強と勘違いしているが、これからは日本を伝えることが大事だ。発信型英語の学習教材として『MANGAJIN』を読んでもらいたい」

 それはともかく、久しぶりの電話に、一体どうしたのかなと思いましたが、茂木さんの用件は米下院外交委員会の慰安婦問題に関する対日決議問題に関してでした。私がブログを始めたのを聞き、「何だったら取り上げてくれないか」という趣旨でした。はい、諒承します。

 なんでも茂木さんは外交評論家の加瀬英明氏が代表の「史実を世界に発信する会」の事務局長を務めているとのこと。それで、発信する会は、今回の対日決議問題をめぐって、435人の下院議員全員に対し、決議文の事実認識の誤りや偏向ぶりを指摘する抗議文書(当然英文)をファクスで送ったというのです。

 茂木さんは「効果はあまりたいしたことはない。しかし、決議内容はひどいデマそのもので、これが向こうでは常識にされていることは見過ごせない」と話していました。

 この決議の採択阻止をめぐっては、外務省も一応の働きはしたようですが、民間有志が有意義な活動をされていたようです。敬服した次第です。以下、この抗議文の日本語文(抜粋)を掲載します。

 《■慰安婦問題対日決議案の不当性

 アメリカ下院外交委員会が提出しようとしている慰安婦問題に関する対日非難決議は、極度に歪曲された歴史認識に基づくものであり、直ちに撤回さるべきものです。

 (中略)1945年夏、北ビルマのミートキナーにて米軍にとらわれた朝鮮人慰安婦20人と雇用主の北村夫妻からの尋問記録では「慰安婦とは売春婦にすぎない」「月平均で1500円の総収益をあげ(債務者の)マスターに750円を返還する(注:当時日本軍曹の月給は30円、したがって軍曹の25倍は稼いでいた!)」などと書かれています。

 1945年3月三人の韓国人軍属から聴取した記録でも、「太平洋の戦場で会った朝鮮人慰安婦は、すべて志願者か、両親に売られたものばかりである。もし女性達を強制動員すれば、老人も若者も朝鮮人は激怒して決起し、どんな報復を受けようと日本人を殺すだろう」と述べられている。

 そもそも「戦場と性」の問題は古くて新しい問題です。ところが旧日本軍の「慰安婦」が性的虐待であったとしてことさら厳しく非難されています。なぜ、旧日本軍の場合のみこのように糾弾されるのでしょうか。

 それは日本の場合、慰安婦(売春婦)を国家権力をもって奴隷狩りのように狩り立て、強制的に日本兵相手の慰安婦にしたというキャンペーンがある時期に日本で一部の人達によって行われたものが国際的に広がってしまったためです。しかも政府の対応が事実に基づかずに、隣国政府への配慮を優先したために、虚説をはびこらせることになってしまいました。三つのことがポイントです。

 ①1983年、吉田清治なる日本人が「戦争中、軍の命令で自分が韓国の済州島に出かけ、多数の女性を従軍慰安婦にするため狩り立てた」と「自白」し謝罪したこと。
 ②朝日新聞がこの「自白」が事実だと報道した上、91年8月11日、「強制的に戦場に連行され慰安婦とされた『朝鮮人従軍慰安婦』の内、一人が名乗り出た」と報じたこと。
 ③93年8月4日、河野洋平官房長官が、「官憲等が関与した事例があった」と「権力による強制」を認める「河野談話」を発表したこと。

 では、これらの自白、報道、談話は事実に基づいていたでしょうか。まず、吉田清治の証言は全くのウソでした。89年に韓国の「済州島新聞」の女性記者が詳細な現地調査をしたところ、現地の人はみな「自分は当時から住んでいるがそんな事実は知らない」と否定しました。郷土史家も「自分も追跡調査したが、事実ではない」と否定。こうした証言をもとに、記者は吉田証言を全面的に否定する記事を書いています。ところが、国連人権委のクマラスワミ報告書はこの全くのウソである吉田証言を全面的に取り入れて書かれています。

 朝日の報道も事実ではありませんでした。実はこの女性・金学順さんは、日本政府を相手取って「謝罪と賠償」を求める裁判の原告の一人でした。彼女が東京地裁に提出した訴状には、「キーセンとなるべく身売りされた」と書いてあります。しかし、朝日の植村隆記者は、この「親から売られた」という決定的なことを書かなかったのです。

 最後に「河野談話」ですが、(中略)「強制」とは「権力による強制」から、「本人たちの意志に反して=強制」ということに定義を変えてしまったのです。このような定義を適用すれば、売春婦だけでなくあらゆる職業で無数の「強制」が成立します。愚かなことでした。事実でもないのに「強制連行」も認めたために日本人の名誉を傷つけ、「二度と問題にしない」はずの韓国政府は執拗に日本批判を続けています。韓国の教科書にも登場し、世界に誤った情報が発信されています。

 (中略)慰安婦というものが戦場における売春婦であったということからして当然のことですが、日本人がその多数を占めていました。最近の研究によれば、おおよその比率でいうと、日本人40%、現地人30%、韓国人20%、その他10%というのが実態でした。

 結論ははっきりしています。決議案が述べているようなことは、全く歴史的事実に基づかない虚説であります。そのような虚説に基づいて一国の政府を非難する決議を世界の民主主義国の代表を自認するアメリカの議会が行うなどということは信じられないことです。直ちに撤回を求めるものです。

 平成18年9月26日 「史実を世界に発信する会」
                         代表 加瀬 英明》

 実際のところ、私にもこの抗議文がどの程度、効果があったかは分かりません。ですが、こうして日本人の声、日本の主張を相手に届けることはとても重要だと思います。

 中国や韓国、北朝鮮は今後も世界を舞台に反日プロバガンダを繰り返すでしょうから、なおさらです。以前、インドネシアで慰安婦問題の取材をしていて、現地の新聞社の会長から、「なんで日本の大使館は反論しない。何をやっているんだ」と不思議がられたことがありますが、外務省にもぜひ一層の奮起をお願いしたい。

 この「発信する会」の活動は、有志の寄付でまかなわれているそうです。関心のある方は事務局(電話03-3519-4366、fax03-3519-4367)までお願いします。