下村博文官房副長官の河野談話に関するごく抑制的な問題提起に対し、野党4党は「閣内不一致」だとして追及するそうです。「もっと大事なことがほかにあるだろ」「本気で河野談話が正しいとでも思っているのか」といろいろと突っ込みたいところですね。

 それできょうは、まずは冷静に、発端となった下村氏の発言と、それに対する政府・与野党の反応ぶりを紹介します。残念ながら、あくまでオンレコしかお見せすることはできませんが、それでも雰囲気は伝わることと思います。

 問題となった10月25日夜の下村氏の講演から、河野談話部分を抜粋します。

 《安倍総理の今までの歴史認識に対する考え方、具体的にいえば村山談話について、従軍慰安婦を認めた河野談話について、否定的な、そのものを見直すべきだとの発言をしていたではないか。しかし、総理になってからは違うではないかという批判がある。

 しかし、私はそれは当然だと思う。一国会議員と内閣としての発言は違う。もし、村山談話、河野談話を変えるとすると、これは閣議決定しているので重いものだ。もし、修正するならもう一度閣議決定して、政府はこのように考えるということをし直さないと総理の国会発言はできない。

 その空間、時間が許されるかを考えると、いま各大臣の了解を得る、歴史認識を共有しあうような知識と時間と努力をしている時期かというとそうではないと思う。

 また総理という立場から、これは歴代の内閣の積み重ねの中で歴史もあるわけで、これは安倍総理が考えを曲げたとかではなく、そういう立場における認識の答弁であると思う。

 ただ、安倍首相は村山談話、河野談話についても100%そのままというわけでなく、総理の立場から答弁していて、改めて読んでもらえれば分かる。これは私は個人的には、特に河野談話はもう少し事実関係をよく研究して、その結果どうなのかということについては時間をかけて、客観的に科学的な知識をもっと収集して考えるべきではないかと思う。今後、そういうことも私自身は自分の検討課題としてあっていいと考えている
。》


 これに対して翌26日午前、民
主党の高木義明国対委員長が記者会見で、早速反応しています。

《高木氏:下村官房副長官がいわゆる河野談話について、安倍総理の発言について、一国会議員の発言と総理の発言と違った当然だとか、考え方を曲げたとか日和ったということではない、ということを述べたという報道もある。これらの事実経過も確認する必要があるが、いわゆる使い分けというか、そういったことなのかどうか、これは非常に訳の分からない発言で、何らかの場でその真意をただす必要がある。

 Q:下村発言について、使い分けではないかといっているが、どこを問題視しているのか

 高木氏:まず事実確認をしてみたい。どの場でどういう発言をされたのか。これは、ある意味では、本会議であるいは予算委員会等で総理が発言したこと、そして同じ官邸の官房副長官が違ったことを言っていれば、当然、どちらが本当なのかただしていかないと、国民に十分説明がつかないのではないか。具体的にどの部分かはこれから精査したい。

 Q:追及の場は

 高木氏:いろいろな場が考えられる。どの場が一番有効なのか、答弁が引き出せるのか早急に対応したい。

 Q:総理自らにただすのか

 高木氏:そうだ》

 民主党は、よく分からないけどとにかく追及できそうだから食いついてみた、という感じでしょうか。この午前の塩崎恭久官房長官の記者会見でも、この問題に関する質問が出ました。

 《Q:昨日、下村副長官が河野談話について、個人的な見解とした上で、客観的に科学的に考えるべきだという話をしたが、総理の考えと矛盾しないか

 塩崎氏:私が理解する限りでは昨日、下村副長官が講演で、個人的な考え方ということでこの問題に触れたと聞いております。そういうことですから、政府の方針はまったく安倍総理が国会などで答弁した基本ラインとはまったく変わりませんし、平成5年8月4日の河野官房長官談話を受け継いでいるというのが政府の基本的な立場です。

 Q:政府の人間が公の場で、個人的な見解であれば、政府の方針と違うことを述べてもいいと考えるのか

 塩崎氏:そこは政治家下村博文さんのご判断することだと思います。

 Q:下村副長官の講演の話で、別の話として、総理の村山談話、河野談話に関する発言が就任前後で変わっているとされることについて、「総理はひよってらっしゃるわけではない。総理としての立場で、答弁をされているのである」という話をされていて、要するに総理としての発言と安倍さん本人の意思とは別であるということをおっしゃっているが、こういうことを副長官が代弁するという形でおっしゃることに関してはどのように考えるか。

 塩崎氏:それも先ほど申し上げたように政治家下村博文さんがお考えになってご判断をされると思います。

 Q:総理自身は、この変化に関して批判は甘んじて受けるとおしゃってますが、そこを敢えて閣内の身近な方が代弁する必要はあるとお考えか。

 塩崎氏:それは何度も申し上げますけども、下村博文さんがご判断することだと思います。

 Q:副長官は塩崎さん直属の部下ですけども、その方が河野談話に見られるように、違うことをおっしゃったり、首相の意向はこうであるというふうに公の場で述べることは特に問題はないとお考えか

 塩崎氏:何度もいいますけども、子供ではありませんから、政治家として判断するということは、私がそう思っていることも彼がよく分かっているはずであります。》

 どうしてもこれは問題だと言わせたい社だか記者だかがいるということが分かりますね。私は、塩崎さんの答弁は、そんなに上手な方ではないと思うのですが、「子供ではありませんから」にはちょっとウケました。

 この日の昼、自民党の谷垣派総会の記者ブリーフをした中谷元・元防衛庁長官からも発言がありました。聞かれたから答えただけのようですが。

 《Q:下村博文官房副長官の慰安婦に関する発言については


 中谷氏:報道でしか知らないが、彼の個人的な考えを言われたのでは。総会では特に話題にならなかった。


 Q:中谷元さんの意見は

 中谷氏:総理が談話を継承するといっているので、今の段階で見直しとかは内閣としてはないと思う。役職に就いているので、内閣で混乱とか意見の違いがあってはならない。内閣できちんと統一すべきだ。》

 そして今度は午後の塩崎長官会見です。河野談話を見直されたら困るという人がいる一方、そんなことばかり言っていていいのかということを婉曲に表明している人もいますね。

 《Q:先ほどの委員会答弁の中で、長官は非核三原則については政府としても堅持しているし、これを変えることもないという話をしていた。また、午前中の会見でも河野官房長官談話については内閣として引き継いでいくと言ったが、麻生大臣にしても、下村副長官にしても、政府の立場と個人の立場を使い分けて違うことを言っているが、国民の信頼、理解が得られないのではないのかと思うが。

 塩崎氏:繰り返し麻生大臣も今日答弁しているが、内閣としてその方針を変えることは一切考えてなくて、それは堅持するということを明言している。麻生大臣が言っていたのは、国民の中で議論を封殺するつもりはないと言っているだけで、基本的な閣僚としての立場については繰り返し明言しているとおり、政府としてこの問題に変更を加えることはありえないということは明確に言っているわけであるから、閣僚としてそのラインを変えることはありえないというメッセージを出していると思う。

 Q:歴史認識や非核三原則といった政権にとって重要テーマに関して、個人的な発言ということでいろいろ閣内、政府内から発言が相次いでいるのはどうしてと考えているか。

 塩崎氏:今回の北朝鮮の問題については、北朝鮮がとった行動がいかに重大な影響を日本に与えるのかということを意味していると思う。それから下村発言については、今朝申し上げた通り、政治家の説明責任を伴う行動を下村さんはとっているわけなので、これは下村さんが説明責任を果たして頂くということだと思う。

 Q:重要なテーマに関して総理なり長官が個人的な発言と言っているのは、何らかの効果を意図して黙認しているのか。

 塩崎氏:それは今後の説明責任の応対ぶりを見てもらった上でご判断を頂きたい。

 Q:過去の内閣では、政府の重要なテーマに関して閣内なり政府内なりでいわば不規則発言のようなものが出た場合には、総理なり官房長から注意するケースがあったと思う。現段階では、歴史認識や非核三原則というテーマに関してのこれまでの発言でそういったことは必要ないと考えているか。

 塩崎氏:今日も麻生大臣のことについての質問に対して、先ほどの麻生大臣として、閣僚としての判断でこの三原則については変えることはまったくないという政府の基本線を繰り返したうえで私が申し上げたのは、その後のことは政治的な判断をしたうえで今の発言をしているのだろうということで、これは麻生大臣の説明責任の問題だろうと思う。

 Q:北朝鮮の核実験という目の前の重大な危機がある中、60年前のことに関する河野談話や村山談話の話をするというのは、政府の北朝鮮への脅威に対する国民への説明が不十分なのではないか。

 塩崎氏:河野談話と北朝鮮の問題がどうつながっていくのか。

 Q:民主党の菅代表代行の会見でも問題にしているのだが、北朝鮮の問題よりも野党がそういった河野談話の話などを持ち出すのは、政府の北朝鮮の脅威に対する説明が不十分だからではないかというふうな印象があるが。

 塩崎氏:なぜ説明をするかについては、野党の皆さんに聞いていただいたほうがいいと思う。》

 最後は塩崎氏が質問の意味がよく分からなかったようで、やりとりが成立していません。この日はまた、
野党幹事長会談があり、4人の幹事長がそろっての記者会見もありました。

 《民主党の鳩山由起夫氏:共産党、社民党、国民新党、民主党の野党4党の幹事長・書記局長会談を2時すぎから行い、2時35分まで行った。あらましの合意された事項を申し上げる。

(中略)
2点目は麻生外相の発言だ。北朝鮮の核実験に関し、核の保有すべきかいなかについて、議論をするべきだという発言は、とても許せる話ではない。日本としては、核廃絶にむけてリーダーシップをとっていかないといけないところ。衆参でも決議がなされている。こういった問題に対し真っ向から反対するような意見が出てきてはならない。徹底して追及していきたい。

 あわせて、下村博文官房副長官の従軍慰安婦の発言も看過できない。立法府に対して行政府が三権分立を無視するような強引なやり方で進めていくとすればこれはとても看過できない。この問題に関しても共闘していこうということになった。

 社民党の又市征治氏:本当にいまの安倍内閣はバラバラ内閣と言わざるを得ない。安倍総理が非核三原則を堅持するといっているのに、何度も国会で麻生外相がこのことを否定するような核平気保有論議発言をする。そしてそれは衆参両院の決議のなかに、改めて核兵器廃絶への不断の努力を誓うと両院が決めたものを、逆らっていくという中身だから、本来、罷免要求すべきもの。

 次々と下村さんもそうだが、安倍総理が発言したあとに、それをひっくり返す発言をしている。首相の任命責任が問われている。本来ならば罷免にあたいする。

 Q 下村発言はどうやってだれに対して、どの点でただしていくのか


 鳩山氏:それはそれぞれの立場から追及していく話だから、場はいろいろある。委員会、その他ある。そこで追及していくことになる。官邸のなかで、総理と官房副長官の意見が異なっていることが明らかになったわけだから、その問題は内容如何にかかわらず大きな問題だ。その追及をそれぞれの政党として行っていきたい。

 Q 本来なら罷免に値する、と又市さんはいったが、罷免要求は話し合われたか

 鳩山氏:罷免という話はわれわれのなかではない。下村さんの罷免の話はしてないと思う。》

 そうして夜には、安倍首相の
ぶらさがりインタビューでも、関連質問が出ました。

  《Q:下村副長官から河野談話の見直しの必要性を示唆する発言が出た。総理は河野談話を踏襲する考えだが、閣内で矛盾していると考えないのか。

 安倍首相:それは議員の資格としておそらく意見を言っているのだろうと思います。私も官房副長官時代にも議員としての資格でいろんな意見を言ったことがあります。それは議員として言うのは議員個人の責任で言っているんだろうと。全く問題ないと思います。

 Q:結果として発言を麻生大臣の発言も含めて、黙認している形になると思うが。

 安倍首相:全く問題ないですね。私が申し上げているのは閣内、内閣としての意見ですから

Q:議員としてであればどのような発言でも構わないと。

 安倍首相:今私が申し上げたとおりです。

 Q:非核三原則について政府として意思統一する考えはあるか。

 安倍首相:もう今申し上げたとおりです。

 Q:下村さんの発言の問題で、総理自身が総理になってモノを言いづらくなったなあと思われることはあるか。

 安倍首相:そんなことはありませんよ。》

で、一夜明けて頭の整理がついた民主党の高木国対委員長が再び記者会見し、次のように述べました


《高木氏:昨日も少し触れたが、下村官房副長官の河野談話の見直し発言については、昨日の幹事長・書記局長会談でも提起され、この問題について国対で追及していくことが確認された。菅代表代行は予算委員会で安倍総理の姿勢をただしたときにも、総理としては河野談話については、閣議決定事項でもあるし、これを尊重するという趣旨の答弁をしていたが、同じ政府のしかも官邸の官房副長官たる政治家が見直し発言をするということは一体どういうことか。

 総理大臣との意見の違い、あるいは官房副長官の上司である官房長官はどのようにこの問題を考えているのか。この問題は予算委員会を中心に改めて開催を要求し、閣内が統一しているのかどうかただしていきたい。

Q:下村発言について予算委員会で閣内不一致をただしていくということだが、麻生発言と同じ委員会で?

高木氏:閣僚がそろったところが一番いいのは予算委員会だから、予算委員会については麻生発言をめぐってはすでに要求しているので、それに付け加える。同時に予算委員会がいつ開催されるか、これも相手のあることだから、それまで待っているわけにはいかないので、関係委員会で議論の場があればそういう場を、あらゆる場を通じて、この問題を取り上げるという気持ちだ。》

 それにしても、政治は言葉をやりとりするのが仕事ではありますが、政治家は大変ですね。いつも思うことですが、私のような面倒くさがりにはとても務まらない仕事です。

 ただ、国民に語りかける言葉が大事なのは言うまでもありませんが、だからといって片言隻句をとらえてのあげ足取りばかりが国会の仕事ではないだろうと思うのです。

 予算委員会での質疑でも、今回の「閣内不一致」うんぬんにしても、じゃう政治家は間違えないように「紙だけ読んでいればいいのか」「何事も前例に従いますでいいのか」と言いたくなります。私が末席を汚しているメディアにも、大きな責任がありますが…。