本日も、あいかわらず国会前はにぎやかです。教育労働者たちは座り込み、宗派の分からないお坊さんは教育基本法改正反対のパンフレットを配り、そして職業不詳の若者がギターをかき鳴らして「何が美しい国だ~ファシスト安倍政権を倒そう!」と歌っています。

 常軌を逸した光景に目眩をこらえ、いつものように全国労組交流センターが配るビラ「国会闘争速報」を受け取った私は、歩きながらその中身を読んでいて、さらにくらくらさせられたのでした。それは、「包囲ネット・Wさん」の発言の中にありました。ちょっと引用します。

 「明らかに我々の(※教育基本法改正に反対する)闘いが政府を追いつめてきた。千葉高教組の仲間が街頭でビラまきしていても反応が非常にいいという。学校でも北教組グッズに生徒たちは大喜びだった」

 何の説明もなく、いきなり北教組グッズといわれても分かりません。私が非常識なのでしょうか。金日成バッヂか太極旗ストラップのようなものでしょうか。何より、生徒たちが大喜びだったというのが理解できません。そこまで洗脳されているのか、捏造コメントなのか…。

 この「速報」によると、衆院本会議で教育基本法改正案が可決された翌日の17日金曜日には、北教組50人と大分県教組60人が元気に早朝から座り込みをしていたそうです。あいかわらず授業は放棄しているようです。

 また、「速報」には「一度も日教組の委員長が来ない。地方動員に激励の言葉どころか挨拶さえない。こんなことで勝てるのか」という日教組組合員の不満も掲載されていました。では、その委員長さんは何をしていたのかというと、昨日は国会に出没していたようです。

 きょう、国会議員会館で入手した資料によると、日教組の森越康雄委員長は、20日11時から参院議員会館で開かれた国際人権法政策研究所総会で、「教育基本法改正と子どもの教育を受ける権利」という題で講演しているようです。

 この研究所とは、兵庫県教組出身の本岡昭次元参院副議長が中心となって設立した団体で、よく分かりませんが人権諸政策の実現に取り組んでいるのだそうです。本岡という人は、慰安婦問題を盛んに国会で追及していた人ですね。ふーん、総会にはどうやら、民主党の日教組系議員らが出席していたみたいです。

 残念ながら、詳しい講演内容までは分かりませんが、森越委員長が講演用につくったレジュメには、次のように書いてありました。

 1.政府教育基本法案は子どもたちの思想チェック
  (1)徳目の羅列と伝統と文化の尊重
  (2)「国を愛する態度」の明記は必ず評価につながる

 2.政府法案で上意下達の教育行政がより強固に
  (1)法律で定めれば「不当な支配」から除外
  (2)政権が変わるたび教育内容が変わる?

 3.子どもたちの「不安」を煽り立てる教育の競争原理
  (1)「勉強しないとひどい目に会うぞ」
  (2)外され・落ちこぼれる不安

 4.教職員を「不安」で管理する教育行政システム
  (1)事件・事故のたびに山のような報告書-議会対策・アリバイづくり
  (2)指導力不足・不適格教師さらには教育免許更新制度

 5.政府法案成立でますます悪化するいじめ・自殺・未履修・やらせ
  (1)寺脇研流文部省改革-教育の地方分権-トップに存在したい文部官僚の抵抗
  (2)自民党の教育支配が遠慮がちから直結へ

 6.子どもの生命より自民党結党以来の悲願が優先
  (1)与党協議さえ三年かかったのに-なぜ急ぐ
  (2)山積する教育課題こそが最優先事項

 7.本当の教育改革は「どの子どもにも公平で質の高い公教育を」
  (1)安倍首相の手本=サッチャー改革・アメリカの競争原理は破綻
  (2)共生の教育で成功したフィンランド=学ぶ意欲と教職員の誇り

 8.政権交代しなければどうにもならない日本
  (1)民主党案の参考部分=教育関連法の改正で対応できる-政府法案阻止に全力を
  (2)死物狂いの自民党=骨身に沁みた野党経験-喧嘩できない民主党では歯が立たず

 …なるほど、地方組織が座り込んでいる間に、トップは頂上工作を展開していたわけですね。日教組の不安がどのあたりにあるのかがよく分かります。実際の講演は聞いていないのでよく理解できないのですが、どうして政府案成立でいじめや未履修が増えるのでしょうか。

 ともあれ、あすからは参院の特別委員会で教育基本法審議が再開されます。現時点では、民主党のだれが委員に選ばれるのか私は把握していませんが、きっと、上記の森越委員長と同じような論理展開で政府案を攻撃してくるでしょう。それは確かだと請け負えます。