昨日、ようやく参院の特別委員会で教育基本法の審議が始まりました。私が注目していたのは、民主党は参院に5人いる日教組出身議員のうち、だれを委員に立ててくるかでしたが、名簿を見て思わず笑ってしまいました。

 というのは、御大、輿石東参院議員会長元山梨県教組委員長)を除く4人全員が委員に選ばれていたからです。民主党の委員は12人ですから、3分の1に当たります。これは露骨ですね。少なくとも参院民主党は、日教組の代弁者であることを隠そうともしていません。

 念のために名前を挙げると、まず、理事に佐藤泰介氏元愛知県教組委員長)が入っています。あとは、神本美恵子氏元福岡県教組女性部長)、那谷屋正義氏元横浜市教組書記長)、水岡俊一氏元兵庫県教組書記次長)です。いやあ、壮観ですね。

 しかも、安倍首相の出席のもとに行われた昨日の審議で、民主党の質問のトップバッターに立ったのは佐藤氏でした。ここまで話をわかりやすくしていいのか、と突っ込みたくなるほどです。この日は水岡氏も質問していましたし。

  質疑では、自民、民主両党とも、「日教組」の一言を出すことを慎重に避けていましたが、双方ともそれを十分に意識していました。例えば、安倍首相は入学式や卒業式で「政治闘争の一環として国旗掲揚、国歌斉唱が行われないとすれば問題だ」と答弁しています。まあ、普通に解釈すればこれは日教組を意識した発言でしょうね。

 一方、その日教組の佐藤氏の方は、教育基本法改正案16条にある「不当な支配」について盛んに問いただしていました。現行法では10条にあるこの文言を使って、国旗・国歌の強制は「不当な支配」だと抵抗を続けてきた人たちですからね。

 これに対し、伊吹文部科学相は「教育行政上の要請は不当な介入ではない」と明言していました。佐藤氏はさらに「『不当な支配』はだれがどんな支配をすることか」と追及したのですが、このやりとりがなかなか興味深かったのです。

 伊吹氏はまず、「国民全体の意思とは違う意思で特定の団体による教育が行われることだ」と答えたのですが、佐藤氏は当然、納得しません。それで、「特定の団体とはどんな団体か」と重ねて聞いたのですが、このときの伊吹氏の表情が何とも言えないものでした。

 いつもは立て板に水の答弁を誇るこの人が「…」としばらく詰まり、苦しそうに「たとえばオウム真理教」と述べたのです。喉元まで他の言葉が出かかっていたように見えました。

 これは、推測するに「日教組」と答えたかったのではないでしょうか。でも、それを正直に言えば国会が紛糾して審議がストップすることを恐れ、言葉を濁してすり替えたのではないかと。伊吹氏は「特定の政治団体や特定のイズムを持つ団体だ。教育への介入を排除したい」とも答弁しています。

 そういうわけで、自民、民主両党が直接日教組に言及する場面はなかった(ずっと真剣に見ていられたわけではないので、たぶん)のですが、国民新党の亀井郁夫氏は違いました。亀井氏は民主党の対案について「本当に立派な対案をつくられてありがとうございます」と述べた後、民主党側にこう問いかけました。

 「よく民主党を支持している支持団体の日教組がこれを納得したものだと思うが、そのへんの経過はどうですか」

 民主党法案提出者の西岡武夫氏も、この質問には明確に答えられませんでしたね。このほかも、安倍首相が徒競走で全員が手をつないでゴールするなどの極端な結果平等主義を批判するなど、けっこう面白いやりとりがありました。

 昨日の質疑は、NHKで放送されていたので、与野党のやりとりは国民の目を意識して、ある意味で抑制されたものだったと思います。でも、これからの国会テレビなどでしか放映されない審議では、激しい応酬も予想されます。

 日教組は現在、教育基本法改正に反対して31年ぶりの「非常事態宣言」を出し、組合員に闘争を呼びかけています。今後の参院審議も波乱含みです。この4人の日教組議員がどんな質問をし、どんな行動に出るか、注目していきたいと思います。