よく拝見しているブログ、「日本大好き、好きです早稲田日記」で、1日の参院教育基本法特別委員会の参考人招致の際に、国民新党が推薦した新しい歴史教科書をつくる会の小林正会長が、民主党の反対で参考人から外されていたことを知りました。

 これは、小林氏が元神奈川県教職員組合委員長でかつ元社会党参院議員という経歴を持ち、日教組について内部も裏側も知り尽くしていることから、日教組出身議員5人を擁する参院民主党が嫌がったのが見え見えですね。

 迂闊に参考人となるのを認めて、国会の場で本当のことを指摘されるのが怖かったのでしょう。それはそれで分かりますが、小林氏の証言が封じられたのは残念です。

 そこで私は、あくまで拙ブログ用に利用させてもらうと断った上で、小林氏に電話インタビューを申込み、快諾いただきました。日曜日の朝だというのに、いきなり図々しく電話する方もする方なら、受ける方も受ける方だと…ともあれ、非常に感謝しています。以下、やりとりです。

 《Q:参考人招致の件、民主党に拒否されたそうですね

 小林氏:国民新党の亀井郁夫さんに「自由に発言してください」と依頼されていたのだけど、先月27日の夜にまた亀井さんから電話がかかってきて、「野党で協議したら小林さんはまずいという話が出た」ということだった。

 Q:やはり、民主党の特別委理事が嫌がったのか

 小林氏:名簿を見たら、特別委の委員に日教組出身議員が4人はいっていたからね。

 Q:内実を知っている小林さんは避けたいと

 小林氏:まあ、そうだと思うね。それで、民間の教育再生機構の会合が30日にあって、そこでいじめ問題が議論になった。私が民主党に外されていじめられた話をしたら、みんな笑ったよ。

 Q:今回の教育基本法改正に関する日教組の対応をどうみるか。国会前では座り込んでいたが。

 小林氏:(31年ぶりに)非常事態宣言まで出し、シュプレヒコールまでやっている姿勢は信じ難いね。それで民主党議員が参院の議員面会所で拳を振り上げて「教育基本法改悪反対!」と言っている。民主党は堂々たる対案を出しているのに、まるでマンガだね。

 Q:日教組中央本部はどうか

 小林氏:10月16日の中央委員会議案書には民主党の対案について何も書いていないし、自分たちの支持政党である民主党が対案を出していることを完全に無視している。それでいて、地方からの質問には「教育基本法改正自体に基本的に反対だ」としている。何やっているんだか。

 Q:参考人として出ていたら、どんな話をするつもりだったか

 小林氏:日本で一番大きな教職員団体が、自分たちとの対決法案だとしてとらえ、非常事態という騒ぎ方をする。これは55年体制下の自社対決と同じ構図だと。しかも、日教組は反対理由の一つとして、教育基本法改正は憲法改正につながるという言い方をしている。ということは、これは政治的闘争ですね、と。

 日教組の今回の騒ぎは、80年代初め、中曽根内閣のときの臨教審設置関連法案な対する反対闘争のとき以来だ。職員団体がああいう形で、しかも国会前に連日動員して政治活動をするというのは時代錯誤も甚だしいし、職員団体としての責任放棄にもなる。

 Q:確かに、座り込んでいる人たちのコメントでは、「こんな重大事態なのに粛々と授業が行われている方がおかしい」というものがあった

 小林氏:職場を巻き込んで、もっと大々的に活動したいのだろう

 Q:あとはどんな話をするつもりだったか

 小林氏:実例に基づいてばんばん言うつもりだった。あと、(政府案では公明党との妥協で不十分となった)「宗教的情操の涵養」「不当な支配」「国を愛する心」の三点セットについて、政府案も批判しなくてはいけないと思っていた。

 Q:今回の教育基本法審議をどう思うか

 小林氏:伊吹文明文部科学相自身が修正に前向きだったんだから、自民、民主の折衝で文言是正をやってほしかった。1日には傍聴に行って、委員会室に民主党の西岡武夫氏や鈴木寛氏がいたから、「よろしく」と言っておいた。鈴木氏は「がんばります」と言ったが…。民主党案だって、あれだけ日教組に妥協した中身なんだから。

 Q:今回は珍しく、公明党も修正を認めると言っていた。それが進まなかったのは、衆院採決時に欠席するなどの小沢流の国対戦術が禍したと思うが

 小林氏:最終的にはそこに尽きる。小沢氏が対決法案にしてしまった。そういう小沢流への反発もあったと思うが…。だいたい、今度の民主党の対案のベースは7割ぐらい自由党の「人づくり基本法案」が入っているのに、小沢氏は何を考えているのだか

 Q:ところで、民主党の日教組出身の教育特委員4人のうち、小林さんは個人的にどれぐらい知っているのか

 小林氏:個人的に知っているのは佐藤泰介理事だけだ。彼は愛知県の教職員組合委員長で、僕は神奈川県の委員長で、ともに社会主義者協会と対決した同志だった。当時、彼はまだ若かったから、いろいろと一緒にやってきた。

 Q:現在の関係は

 小林氏:先日会ったときには握手してきた。彼としても、内心忸怩たる思いがあるのだろう。

 Q:委員会質疑を聞いていると、「不当な支配」に対するやりとりなどでも旧態依然な感じを受けるが

 小林氏:言われた通りに言っているだけだろう。もともと彼に理論も何もないから。愛知県というはっきりしない風土の中から選ばれてきた、それらしい感じのする人だ。

 Q:確かに、愛知県教組は過激ではない

 小林氏:穏健だ。山梨県教組ほど教育行政とべったりではないが、教育委員会とはうまくいっている。

 Q:国会前の座り込みでは、北海道教組と大分県教組が目立った

 小林氏:地域の体質的に教委の指導が弱く、組合のイニシアティブで何でも運動が可能なところがやっている

 Q:ただ、民主党の日教組議員をみていても、今のところ、思ったほどしゃかりきに反対活動をしていないように見える

 小林氏:まあ、親玉の輿石東参院議員会長にしてもぼーっと何となく推されて出てきて理論も何もないし、民主党は対案を出しているわけだから、力も入らないでしょう。そういうジレンマ、板挟みはある。

 Q:委員会質疑で面白かったのは、「不当な支配」の主体について佐藤泰介氏に追及された伊吹文科相が、言葉に詰まって「オウム真理教」と言ったところ。あれは「日教組」と言いたかったのでは

 小林氏:そんなの教職員団体と解放同盟とはっきり言えばいいのに。それ意外にはないんだから。広島県で通知を出した件だって何だって。文科相はそれを言いたかっただろう。

  Q:政府案に残る問題点は

 小林氏:宗教的情操の涵養を、宗教に関する一般的教養にしたのはひどい。あと、男女共同参画が教育の目標に入った点だ。この問題は、日教組が今後、誇大に宣伝し、しっぺ返しのように教育現場で利用しかねない。》

 小林氏はいろいろと率直にお話しくださいました。重ねてお礼を申し上げます。みなさんのご感想はいかがてじょうか。電話しながら手でメモをとった範囲ですが、ほぼニュアンスは伝えられたかと思います。

  国会で呼ばれる参考人については、各党の推薦人を持ち寄って理事会で決定されるのですが、国会の事務方はだれがどこの推薦かなどと教えてくれません。当然、だれがどこの党の反対で外されたかなどは、その場にいた理事の議員に聞きでもしないと分からないことがほとんどです。

  今回のように、招致されなかった人へのインタビューというのも、ブログならではですね。新聞紙面に反映させることはまず、できない話でしょうから。今後、ブログと紙面が良き補完関係を保てるようになるといいのですが。

 ※お断り 先日のエントリで、4日に山梨県昭和町で開かれる集会で、山梨県教職員組合の問題点に関する小冊子が配られる予定であると告知しました。ところが昨日、私のもとに連絡が入り、冊子は配られないことになったそうです。

 どういう理由なのか経過も分かりませんが、その代わり、山教組問題について八木秀次高崎経済大教授が話をすることになったそうです。ここに訂正いたします。あしからず、ご了承ください。