今朝の東京新聞に、自民党の有志議員でつくる「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」が、米下院で審議されている慰安婦をめぐる対日非難決議の採択阻止のため、今月末にも訪米する方針を決めたという記事が、小さく掲載されていました。いわゆるミニ・ニュースという扱いです。

 私が見た限り、在京紙では東京新聞だけが取り上げていました。これは当然、弊紙も取材していたのですが、この議連の先週の会合と内容がそれほど進展していないということで、記事化は見送られたようです。でも、後輩記者が丁寧にテープ起こししてくれたメモを読むと、なかなか重要な内容が含まれていると感じたので、紹介します。まずは、会合の冒頭、報道陣もいる場での会長挨拶です。

・中山成彬会長冒頭あいさつ

 中山氏 これから日本の前途と歴史教育を考える議員の会いわゆる従軍慰安婦に関する河野官房長官談話を検証する会を開きたい。先週はアメリカの下院で従軍慰安婦に関する公聴会が開かれたこともあり、今週は世耕(弘成)広報官が、アメリカに行っていろんな方々に説明をして回っている。この河野官房長官談話、一応、安倍さんも踏襲すると言っていますけども、これが正しく理解されていない、あるいは誤解をされて、それが色んな弊害を産んでいるからこの会を開いている。「いわゆる従軍慰安婦」というのは全くのでっち上げですし、また今、アメリカで(映画が)作られている南京事件、これも本当にでっち上げだ。私たちはもっと声を大にして言わないと、国際政治の中では黙っていると認めたことになる訳ですから、私はこの会は非常に大事な会であると考えている。時間的にも非常におしていますので、来週中には河野官房長官談話についての我々の見解も示したい。そして、できれば来週の各派閥の総会において、皆様方からこの河野官房長官談話について我々がいろいろ、検証した結果を報告していただいて、まずは自民党の先生方にこの問題の真相、ことの重大性をしっかり認識してもらう作業をしていただきたい。

 …日本の官憲による慰安婦募集の強制性を認めた河野談話について、いよいよ見直しが進められていることが分かります。これはあくまでも自民党の有志による議員連盟の活動ではありますが、当然ながら安倍首相サイドと水面下での連絡・連携はとられていることでしょう。そもそも、安倍氏はこの議連の立ち上げメンバーで、初代事務局長でしたし、初代会長は中川昭一政調会長でした。で、会合後の記者ブリーフは次のようでした。

・中山成彬会長、中山泰秀慰安婦問題小委員長ブリーフ

 成彬氏 日本の前途と歴史教育を考える議員の会の中で、いわゆる河野官房長官談話を検証する小委員会、中山小委員長の下で今日は4回目です先週、15日にアメリカの下院で元従軍慰安婦と称する女性達を呼んで公聴会が開かれた。採決とかそんなことになると、少し急がないといかんということで、早く私たちの見解をまとめたいと今日、開いたわけです。今日、河野官房長官談話を逐一、読み上げ説明しながらこの辺がおかしい、おかしいということで中山小委員長が話しをし、それに対して先生方から色んなご意見、ご質問が出たということで、具体的なことは小委員長から話しをします。

 泰秀氏
 「いわゆる従軍慰安婦については」という文言で始まる河野官房長官談話に対して検証し、バージョンアップという形で我々が提言を、現時点において取りまとめる意味の重要性をしっかりと鑑みながら、この1週間、取りまとめに走らせていただいた。

 同時に、先生方から足りない部分に対してご指摘、ご示唆をいただいた。
 特に先日、予算委員会で1年生の稲田朋美先生から法務大臣に対する質疑の中で、相手方のいわゆるエビデンスがどのようなものか請求をなさったやに聞いていますが、しっかりと「相手方がどういうエビデンスに基づいて訴訟を起こしているのかという部分をもっと精査した方が良いだろう」という話。あとは、戸井田とおる南京問題小委員長からも「私どもが作り出す新しい提言に対する礎となるエビデンスを、指摘があった場合にしっかりと、総理もおっしゃったように客観的な史実に基づく資料を準備するべきではないのか」というご意見。それから西川京子事務局長からも「公娼制度というものが当時、背景にあった」ということ、「その中で同じ女性としての立場から、痛ましいという部分に関してはしっかりと同時並行で訴えていく必要がある」というご指摘。あと、小島先生からは「今回、当時、河野官房長官談話が出されるに至る経緯の中で、外政審議室が数々の資料を調査したはずだ。その資料をできるだけくみ取れるような形で可能な限り、当時以上に情報の開示を迫るべきじゃないか」というご意見も頂戴しています。中川先生からも同じようなご意見を賜りました。
 私どもとしては同時並行でそういった部分も行っていき、今回の米国のマイク・ホンダが提出している1月31日の決議案に対するだけでなくて、それ以後もしっかりご指摘をいただいた部分については調査、研究をより深く進めたい。

 記者
 来週まとめるものは、政府に新たな談話を出すように求める提言か。

 泰秀氏
 はい、小委員長の私としては、バージョンアップという形で、私ども特に若い世代の政治家からすれば戦争から62年たっている今日、現在でも米国に置いて日系人の方からそういった指摘を受けることが、寝耳に水のような気がしてなりません。ですから、その中で時代にあった文言で勘違いを世界の人たちに与えないような、しっかりとしたものの必要性は感じています。ですけど、新しいものを官房長官から発表させるかどうかと言うことは、中山会長のご指導にも従いながら前に進めなければ行けません。中川昭一政調会長、また党三役にも了解を得ながら、アメリカに赴く際も、オーソライズされた党務として行くことをすでに計画をしています。しっかりと重い物を、作業として重責を担っているという認識を深めていきたい。

 成彬氏 今、中山小委員長が話したように、まさに若い議員の方々に本当にそういう意味で尽力をいただかなきゃならんと思うと、先輩議員として申し訳ない気もします。戦後の日本の政治が、どちらかと言えばその場しのぎでやってきたことのツケが今、来てるんじゃないかな、と思う。
 1つの例を言うと、河野官房長官談話において、これは色んな方々が証言していることですけど、「強制性、強制という言葉を入れればそれでいいと、誰も言わない」という韓国側の要請を受けて、この河野官房長官談話にも分かりますように、誰が主語なのか分からない(
ようになっている)。確かに女衒と言われて昔は公娼制度がありましたからね。女買いというかな、そういう事業者の人たちが無理矢理かっさらって行ったとか、あるいは親から身売り、日本でも沢山あったんだけども、身売り同然で引っ張られていった、そういう意味で気の毒な女性が沢山いたことは確かなんで、そういう事業者が強引に強制的に引っ張っていったということはあった。しかし、それは日本の政府、軍、官憲がやったことはない訳なんですけども、主語がはっきりしないもんですから、小委員長も言ったけども、タイムズか何かに英語では誤解を受けるような訳になっていると。ジャパンタイムズか。そこのところはっきりとしないと誤解を受けている。
 ですから私どもとしては
というか先輩方はああいう形で球を出せばこれでもう終わりだと思われたのかも知れませんが、今日またそういう風な議会で取り上げられることになっている。私どもの気持ちとしては降りかかる火の粉は払わないといかん、これはもう当然のことだ。日本の国益に反することですから、このことについてはマスコミの皆さん方も是非、ご理解いただきたい。
 今、私たちの教育改革、教育再生ということで、安倍さんも美しい国、学力と規範意識の向上と言っていますが、やはりこれからの日本の若い人たちが自分の国に自信と誇りを持って世界の中で生きていってもらうためにはしっかりとした歴史認識、日本人としての自信と誇りをもって雄々しく歩んでいただきたいなと、そういう思いもございまして、会長を務めている。これから来週にかけてまとめ、アメリカに赴き、ぜひアメリカの国会の先生方にも真相をしっかりと伝えていきたい。そういう努力をしなきゃいけないと考えています。

  記者
 河野談話のどういった点がおかしいという議論が出たのか。

 成
彬氏 それは今度、来週にしましょう。沢山、あるんですよ。沢山あるし、色んな質問も出ましたし。

 泰秀氏
 1点だけ申し上げるならば、「いわゆる従軍慰安婦問題」という文言自体、従軍のついた看護婦、従軍のついた記者という表現は当時もあったと思いますけども、従軍のついた慰安婦という表現はなかったということを先日の予算委員会で、麻生太郎大臣、現在の外務大臣までもが国会答弁で正式におっしゃっている。このことと当時の官房長官談話の「いわゆる従軍慰安婦」という問題提起の表現方法が歴然と違うわけです。ですから、時代がたって当時よりもさらに情報が集まった部分、風化した部分、色々精査をしながら検証するのが中山会長のおっしゃっている部分だと受け止めていますので、小委員長の認識としてはそういった部分も含めて来週までにバージョンアップした提言をまとめたいと思います。

 記者
 提言ということは、何を求める提言になるのか。

 泰秀氏 非常にいいご質問だと思いますが、私個人的には小委員長としては今の官房長官に談話という形で発表されることがあれば、私どもが努力した甲斐があったんじゃないか

 

 記者 河野官房長官談話に対する議連としての考え方をまとめたものになるのか。

 泰秀氏 いえ、河野官房長官ではなく、河野さんが官房長官自体に発表された内閣官房長官談話自体が世界的に誤解を生んでいることに対して、しっかりと誤解をひもといて行かなきゃいけないということが、我々の主たる業務であるということだと思います。

 

 記者 官邸や党に出してアメリカに行くという話しがあったが、アメリカに行ってホンダ議員にあって何を求めるのか。

 成彬氏 理解を求めるの、理解をね。

 泰秀氏 マイク・ホンダに会うか、誰に会うかはまだ調整をしていますので、現段階では報告を出来ないと思いますが、今、会長もおっしゃった通り、理解を求めるという作業には変わりがないと思います。アメリカはご承知の通りロビー活動が議会に対して行われるのは当たり前のことですから、私どもはその筋に則って外交としてそういった活動を展開していくということに尽きる。

 

 記者 訪米までの段取りとしては、提言をまとめ官邸に持って行き、その後か。


 泰秀氏
 来週、提言を取りまとめたものを5回目の小委員会で発表して、そして加筆修正を加えた上で、党三役、特に政調会長がメンバーでもございますから、政調会長を中心に三役、そして官邸の方に持って行くと。それと同時期くらいになると思います。現実的には。今月末、早ければ今月末、遅くとも3月上旬には渡米をすることはもう内々、決めています。

 

 記者 来週までにまとめる提言というのは、「こういう新しい提言を出して欲しい」というものか、それとも「今の談話でこことここがおかしいからまた違う物をだしてくれ」というのか。

 泰秀氏 前段のご理解の方が相応しいかと私は個人的には思いますけども、要するに後段の部分を踏まえて前段ができあがるわけですから

 

 記者 そうなると次回は新しい談話案みたいなものが出てくるのか。

 泰秀氏 そうです。そういうご理解をいただいた方がいいと思います。

 

 記者 15日の公聴会の内容は精査しているのか。

 泰秀氏 いや、具体的にどんな方がどんな形で発言されたかということ、特に旧連合国としてオーストラリアの一部の新聞等の報道など、数々の情報も外務省と共に精査をしている最中にあります。それと、安倍総理は河野官房長官談話を踏襲されるということもご発言されているところを我々も念頭に置いていますから、そこを外して、ということではないことも同時にご理解いただけければありがたい。

 

 成彬氏 踏襲はするんだけども、誤解を与えている面もあるようだから、そこはこうだよ、こういうことじゃないですか、ということを言ってもらいたということですね。

 

 泰秀氏 何か消化不良みたいな感じですけど、実際は枕カバーに鋭い出刃包丁を隠して持って行くという表現でご理解をいただけたら、意のあるところをお酌み取りいただけるのではないか。

 

 成彬氏 それはきついよ、ちょっと(笑)。

 

 記者 来週も水曜日か。

 成彬氏 水曜日になるんじゃないかな

 泰秀氏 会長と日程と。今度はフルメンバー、お越しをいただこう、政調会長のお時間もいただきたいと思っていますから、政調会長、会長おそろいいただいた中で今回よりも大きな部屋でやりたい。

 …ということです。議連の思惑通りに進むかどうかはまだ予断を許しませんが、首相の立場を慮って慎重に話を進めているようですね。この動きは各紙が思っているよりはるかに大きな意義を持っていると思います。新しく、河野談話を事実上修正する「塩崎談話」を出すことなるのか、それとも河野談話そのものに加筆・部分修正することなるのか、第三の選択肢があるのかは分かりません。

 安倍政権下で、日本政府による「狭義の強制性」を伴った慰安婦狩り、強制連行のたぐいは存在しなかったことを、明確にしようという動きがだんだん具体化してきたと感じています。肝心の塩崎官房長官が、いまひとつ歴史認識問題にうといように、日ごろの答弁から感じてしまうのが気がかりなのですが。