本日のフジテレビの報道2001に、現在、米国の下院で審議中の慰安婦問題をめぐる対日非難決議案の提出者である日系のマイク・ホンダ下院議員が出ていました。で、この番組でのやりとりや、問題点はイザ内でもいろいろな方が取り上げていますので、私は一点、気になったことだけ書きとめておきたいと思います。

 フジテレビの黒岩キャスターと、ホンダ氏との間で、次のようなやりとりがありましたが、ホンダ氏の回答に、戦後長い間、日本政府・政治家が国際関係で繰り返してきた愚かな間違いの典型をみるような思いをしたからです。

 《黒岩氏 何を根拠にそういう事実があったと言っているのか。日本政府は強制的に女性を連行した事実はいくら探してもないと言うのが見解だ。そうじゃないという根拠はホンダ氏は何で持っているのか。

 ホンダ氏 歴史的事実を見ることが出来ると思います。個人レベルでそういうこと起こらなかったと、そしてそのような政策はなかったと言っているのにもかかわらず、しかし、そういうことが実際に起こったということ、実際に被害者サイドが言っている訳ですね。実際に償いという形で女性基金ということが起こっていること、そして声明という形で、談話という形でコメントが出ていること、そして首相が謝っているということは実際に過去、起こっていなければどうしてそういうこととが起こっているのか、私はそれ自体が理解できません。

 日本の政治家や官僚はつい最近まで、もっとはっきり言えば安倍政権発足まで、国内では権謀術数の限りを尽くしてのし上がった人物までが、対外的には「誠意を尽くせば分かる」「こちらが譲れば相手も譲ってくれる」式の、優しい日本社会でしか通じないナイーブな論理を外国にもあてはめては失敗してきまし
た。

 今回、ホンダ氏が対日非難決議案の根拠としたという(でもろくに読んではいないようですが)平成5年の河野官房長官談話にしても、日本側が慰安婦募集における何らかの強制性を認めれば、韓国側は国内世論を納得させてもう取り上げることはしないという、韓国側の働きかけをナイーブにも真に受けて政治決着を図った宮沢首相・河野官房長官ラインによる、根拠がないままとにかく謝ってその場を納めようという日本的な発想によるものでした。

 この点については、私は当時の事務の官房副長官として談話作成にかかわった石原信雄元官房長官に2度、インタビューして証言を得ているから確かです。また、当時の平林外政審議室長も国会答弁で同様の趣旨のことを述べています。もっとも石原氏自身は、あの談話で今日のような弊害が生まれることも薄々気付いていて、忸怩たる思いを抱いていたような気もします。

 でも、ホンダ氏のように日系人ではあっても、当然ながらメンタリティーは米国人である人物には、やってもいないことについてその場しのぎに謝るということが、理解できないというのは当然だと思います。それは、自らよって立つ正義にも反しますし、国民に対しても大裏切りなわけですから当然です。宮沢氏や河野氏らは、世界・社会・世の中というものに対して本当に何も分かっていなかった(現在も分かっていない?)のではないかと思います。

 そして彼らに限らず、靖国問題などをめぐる対中関係などで、同じ日本人が言ったら到底信じないような条件を、中国要人からささやかれるところっと信じてしまうベテラン政治家たちを見てきて、一体、彼らの頭の中身はどうなっているのか疑うことがたびたびありました。ハニートラップに無防備に引っかかる政治家も信じられませんが。

 こうした日本人以外はいい人で、日本人が大人しく謙虚に振舞ってさえいれば、世界は日本に優しくしてくれるはずだ…という類の何の根拠もない発想は、日本国憲法前文と共通しているように感じます。自尊心がなく、卑屈で、上目遣いで、媚びていて、しかも甘ったれていて自意識過剰で、どうしようもありません。日本人だけが特別悪いと思い込むこと自体、自分たちは特別な存在だと思いたがる幼児性の発露のような気もします。

 北朝鮮に対しても、日本が誠意を見せればミスターXだか金正日総書記だかもきちんと応えてくれるだろうという、これまたさらに輪をかけて根拠がないどころか、反証ばかりあるやり方で、日朝正常化を進めようとした経緯があります。幸い、当時からそういうやり方に批判的だった安倍首相は、「拉致問題解決なくして正常化なし」という原則を明確にしていますが、自民党内からも北朝鮮に手を差し伸べろと山崎拓元副総裁らがいろいろと策動を続けています。

 日朝交渉の失敗もまた、相手に対する分析も正しい認識もなく、とにかく、日本国内では何とか通じるかもしれないにしても、国際社会では通用しない「腹芸」と「譲歩で見せる誠意」で対処しようとした結果でした(拉致事件が公となったことと、一部被害者の帰国という成果はありましたが)。話を広げすぎたかもしれませんが、ホンダ氏の切り返しに対し、残念ながら「そういわれても仕方ないな」と感じてしまう自分がいたのが悔しくて…。