きょうの在京夕刊各紙の1面トップは、それぞれ見事にバラバラでした。毎日は公務員制度改革もの、朝日は不二家の洋生菓子販売再開、東京は弾道ミサイル緊急対処要領、日経は旅行会社やホテルの新入社員研修特需、読売はライブドア事件判決…と、一つも同じ話題がありません。では、東京本社管轄内で夕刊を廃止した産経の大阪夕刊はというと、大阪国税局の話題ものでした。

 人のうわさも75日と言いますが、マスコミは次々に飛び込んでくるニュース取材と執筆に追われて、それまで大々的に取り上げてきたテーマをすぐ忘れます(私も往々にしてそうなりがちです。反省)。あれほど狂騒状態を続けた柳沢伯夫厚生労働相の失言追及も、いつの間にか収まっていますし。何が言いたいのかというと、ここ数日は、昨年末から連日のように各紙が取り上げてきた「政治とカネ」をめぐる報道があまりないなあ、ということです。

 この問題については、私自身、うんざりしていてあまり考えたくない気分になったりもしたのですが、やはり、これからもちゃんとウォッチしていかないといけないな、と思い直した次第です。そこで、政治とカネについて再び考えてみることにしました。

 国会は週明けの26日に平成19年度予算が成立する予定です。となると、メーンの論戦の場である予算委員会は開かれなくなりますね。あとは、論戦の場は重要法案を審議する文部科学委員会だとか厚生労働委員会などに移ることになります。予算委員会よりも細分化された政策ごとの論戦になりますし、基本的に関係大臣しか出席しませんから、野党側としても、これまでのように、政治とカネをめぐるスキャンダルの追及を続けるのは難しくなるでしょう。

 国会で追及されないとたいしたニュースにはならないので、政治家は国会閉会中にスキャンダルが発覚しても、比較的平然としていることがあります。次の国会で仮に質問されても、そのときには話題が古くなり、インパクトが薄れていることが分かっているからです。

 そうすると、1本5000円の高価なミネラルウォーターを飲み、その分を政治資金収支報告書上の光熱水費に計上していたとされる松岡氏は、ひとまず「逃げ切った」ということでしょうか。疑惑の目を向けていた国民には大いに不満でしょうが、松岡氏をめぐる新しい疑惑が出てこなければ、この話はとりあえず沈静化していくのかもしれません。

 私がそう考える理由はもう一つ、この問題に対する民主党の足並みが、どうも大きく乱れているように見えるからです。多額な光熱水費を計上していた議員としては、松岡氏のほかに民主党の中井ひろし元法相の名前が上がっています。中井氏は一応、記者会見して釈明しましたが、この件をめぐって党内がぎくしゃくしているようです。

 私は野党担当ではないので、あまり核心的な情報は直接入手できないのですが、ここ数日の各紙のベタ記事を繋ぎ合わせて見ると、雰囲気が伝わってきます。まず、20日の朝日の記事からです。見出しは「中井氏の光熱水費問題」「責任果たした」「小沢代表が見解」とあります。

 《民主党の小沢一郎代表は19日の松山市内での記者会見で、同党の中井ひろし・元法相が自身の資金管理団体の光熱水費を付け替えていた問題について「単純な記載ミスとはいえ、ミスがあったのは事実。本人が公表して国民に謝罪したということなので、説明責任はきちんと果たした」と述べた。中井氏は党常任幹事会議長を退く必要はないとの認識を示したものだ。》

 なるほど、小沢氏は見事なブーメランを投じた中井氏はもう説明責任を果たしたので、これで一件落着と言っているわけですね。現在の党の役職も辞する必要はないと。まあ、自分も写真もコピーもだめで閲覧時間は30分だけという領収書の「公開」で、政治資金による10億円を超える不動産購入問題の説明責任を果たしたつもりでいらっしゃるようですから…。ところが、翌日の各紙を見ると、党内からも違う意見が出ていたようです。21日の読売は「民主・小川氏『中井氏は責任を』」と書いています。

 《民主党の小川敏夫参院幹事長は20日の役員会で、同党の中井ひろし・元法相の資金管理団体が政治資金収支報告書の光熱水費を虚偽記載した問題について、「きちんとした責任を取る必要がある」と述べ、常任幹事会議長を辞任すべきだという考えを改めて示した。》

 朝日が「付け替え」と書いた部分を、読売は「虚偽記載」とストレートに書いていますね。それはともかく小川氏は、中井氏が記者会見を開いた程度ではだめだいう考えのようですね。中井氏がもっとけじめをつけないと、松岡氏を追及できないということでしょうか。民主党の衆院側には威光をとどろかしている小沢氏ですが、参院側には抑えが効かないようです。民主党の参院のドン、輿石東議員会長は、参院自民党とつながっているとされ、青木幹雄参院議員会長ともパイプがあると言います。

 それだけでなく、この日の朝日は「中井氏光熱水費」「すべて公表を」「鳩山幹事長」という記事も載せていました。ほう、衆院側からも小沢氏の結論に異論が出たのかな。中身はこうです。

 《民主党の鳩山由紀夫幹事長は20日、CS放送・朝日ニュースターの収録で、同党の中井ひろし・元法相が光熱水費に別の経費を付け替えていた問題で「05年に関しては公表したが、その前に数年間同じようなことをしていた、と言っている。これをさらに公表してもらう」と述べた。その上で「全部公表した時に党としてどうするかは私の責任で考える」と語り、中井氏の処分を一任されたことを明らかにした。
 中井氏は03年と04年分の光熱水費についても付け替えを認めている。》

 さて、小沢氏の言葉との食い違いも興味を引きますが、果たして中井氏が鳩山氏の言うように以前の分まで改めて公表するかは疑わしいと思います。ただのカンですから、外れるかもしれませんが、これまでのいろんな問題に対する民主党の対応を見ていると、このままうやむやになりそうな気がします。そして本日の産経には、「松岡氏追及チーム設置見合わせ」というミニニュースが出ていました。

 《民主党は22日、松岡利勝農水相の光熱水費問題に対する社民、国民新両党との疑惑解明チーム設置を当面、見合わせることを決めた。社民党の又市征治幹事長が同日、調査対象に民主党の中井ひろし衆院議員の光熱水費問題を含めるべきだとの考えを示したことに反発した。》

 野党間でも歩調がそろわず、腰砕けになりつつあるということでしょうか。民主党執行部としては、ここで無理して松岡氏の件をつつけば、せっかく世間が忘れてくれるかも知れない角田義一・前参院副議長の朝鮮総連傘下団体からの献金疑惑や、小沢不動産問題が再燃することを警戒しているのかもしれません。

 私は以前のエントリで、小沢氏の資金管理団体「陸山会」が計13カ所に総額10億円以上の不動産を持ちながら、毎年約2400万円もの借料損料(地代・家賃等)を支払っていることに疑問を呈しておきましたが、これについても理由が判明してきました。まあ、本当によくやるというか…。

 政治とカネの問題の追及は、国民の政治不信を増大させただけで下火になってきているようですが、何かが解決したり、終わったりしたわけではありません。自民、公明両党は今月中にも政治資金の透明化に関する合同チームを立ち上げるといいます。また、きょう昼には、公明党の太田昭宏代表が首相官邸で安倍首相と会い、事務所費問題について法改正を含めてしっかりやろうということで一致したそうです。一刻も早く、もう少し透明で分かりやすい制度に改めてほしいものだと望んでいます。