一昨日のエントリで、10年ほど前に慰安婦の「強制連行の話などなかった」と自らの見聞について話しただけで、自宅や友人宅が家宅捜索を受けたある韓国人の話を書きました。慰安婦の強制連行に疑義をはさむことは、韓国では決して犯してはならないタブーとなっているようですね。でも、ずっと前からそうだったかというと、必ずしもそうではなかったのだと思います。

 というのは、慰安婦問題で韓国・済州島に現地調査をした現代史家の秦郁彦氏らが紹介していることですが、以前の韓国紙は結果的に強制連行を否定することになるような記事も掲載しているからです。東京基督教大の西岡力教授の15年前の著書「日韓誤解の深淵」(亜紀書房)から、ちょっと引用させてもらいます。

 今日の慰安婦問題の発端となったのが、職業的詐話師といわれる吉田清治氏が書いた「朝鮮人慰安婦と日本人」「私の戦争犯罪 朝鮮人強制連行」の2冊の著書ですね。この中で、吉田氏は軍の命令で済州島で慰安婦狩りをしたと「告白」し、朝日新聞などがウラもとらずに真実であるとして報道し、話を大きくしていきました。

 で、「日韓誤解の深淵」には、この吉田氏の本の韓国語訳が出版された際の地元紙、「済州新聞」(1989年8月14日付)の記事が西岡氏によって日本語訳されたものが載っています。それは次のような内容でした。

 《解放44周年を迎え、日帝時代に済州島の女性を慰安婦として205名徴用していたとの記録が刊行され、大きな衝撃を与えている。(略)しかし、この本に記述されている城山浦の貝ボタン工場で15~16人を強制徴用したり、法環里などあちこちの村で行われた慰安婦狩りの話を裏づけ証言する人はほとんどいない。島民たちは「でたらめだ」と一蹴し、この著述の信ぴょう性に対して強い疑問を投げかけている
 城山里の住民のちょん・たんさん(85歳の女性)は「そんなことはなかった。250余の家しかないこの村で、15人も徴用したすれば大事件であるが、当時そんな事実はなかった」と語った。
 郷土史学者の金奉玉氏は「(略)83年に原本(私の戦争犯罪…)が出た時何年かの間追跡調査した結果、事実無根の部分もあった。むしろ日本人の悪徳ぶりを示す道徳性の欠けた本で、軽薄な商魂が加味されている思われる」と憤慨した。》

 少なくとも、この記事が出た当時は、韓国でも「なかったことはなかった」とごく当たり前に言えたわけですね。この済州新聞は日本軍による強制連行全体を否定するものではありませんが、少なくとも、吉田氏が慰安婦狩りの舞台として描いた済州島においては、それを否定していると言えます。

 そもそも、日本軍・官憲による慰安婦狩りが実際にあったとすれぱ、「実は、この吉田氏のようなことは私もやった」「私も目撃した」という証言が必ずどこかからか出てくるものだと思いますが、これまでこんな証言をしているのは吉田氏だけです。中国戦線で捕虜を殺しただとか、他の残虐行為については自責の念にかられて告白する人が後を絶たないのに、どうして強制連行に限って誰もほかに名乗り出ないのか。この一点をもってしても、強制連行説はいかにも不自然に思えます。

 …ともあれ、この吉田という人の書いた虚構が、1996年に国連人権委員会に提出された慰安婦を軍事的性奴隷と位置づけたクマラスワミ報告のベースとなり、現在審議中の米下院の対日非難決議案へとつながっているわけです。信じられない思いに頭がくらくらしますが、これが現実なのです。

 この吉田証言に基づいて、旧社会党は国会質問で取り上げて政府を追及し、朝日新聞は論説委員のコラムなどでまるっきり事実であるかのように書き、「勇気ある告白」として持ち上げました。そして、吉田氏の本がフィクションであることが明らかになってからも、訂正も謝罪もしようとはしません。最近は、慰安婦問題とはつまるところ朝日問題ではないのかと指摘される方も多いようですが、全く同感です。

 となると、本来、批判すべきは韓国のあり方よりも、韓国まで巻き込んでひたすら日本の立場を悪くしようと長年努めてきた国内の反日勢力なのでしょう。なんとも消耗させられる現実だなあと、嘆息するばかりです。