本日の新聞各紙は、政治とカネの問題をめぐり、松岡利勝農水相の自殺で弱みがなくなった(減った?)自民党側が、民主党の小沢一郎代表の資金管理団体による10億円余の不動産購入問題に対する追及を強めていると書いています。もちろん、松岡氏が死去したとしても、疑惑そのものがなくなるわけではありませんが、死者に説明責任を説いたところでどうにもなりませんし。私も、本当のところどうなのかは知りたいところですが…。

 民主党側は一応、「政治とカネの問題は議論していく」(高木義明国対委員長)としています。ただ、すでに伊吹文明文部科学相の事務所費問題に関しては伊吹氏の説明に納得(※2月17日の私のエントリ「事務所費・民主党は伊吹氏の説明に納得!?」を参照)しているようですし、あと残っているのは、小沢不動産問題や、朝鮮総連傘下団体から裏献金を受けていたとされる角田義一前参院副議長の件など、自民党ではなくて民主党側の問題が主ですね。

 で、自民党はきょう、党の最高意思決定機関である総務会を開き、今国会に提出する政治資金規正法改正案を了承しました。資金管理団体による新たな不動産取得を禁止し、現に保有している不動産については、政治資金収支報告書に、これまで必要とされた地番や面積だけでなく、利用状況や使用者も詳細に記載するというものです。ひらたく言えば、政治資金で買ったものの利用していない土地・建物などを持つ小沢氏一人を狙い撃ちした改正案ですね。

 さて、それでここからが本題です。丹羽雄哉総務会長のブリーフによると、本日の総務会で井上喜一衆院議員から、とても興味深い提案がありました。それは次のようなものです。私は、とうとう公の席でこの話をする人が出てきたか、と驚きのようなものを感じました。

 《井上さんから、「この問題と言うよりも、自由党が(保守党と)分かれたときの政治資金の使い道、これが(小沢氏の)不動産のほうに利用されているのではないか。党のほうで調べてほしい」ということなので、執行部で対応してほしいと言った。》

 井上氏は現在は自民党ですが、以前は自由党に所属していたベテラン議員です。2000年4月に、自由党が保守党とに分裂した際に保守党側に入り、保守新党を経て自民党に復党しています。私はこの分裂時の自由党・保守党を担当していました。そしてこのとき、保守党に行った政治家たちが異口同音に悔しがっていたのが、「自由党から政党助成金の分与がない。人数に応じて分けるべきだ。なのに小沢氏は一銭も渡さない」というものでした。自由党に残った側は、「勝手に出ていく者に金を分ける義理はない」という姿勢でした。

 その後、紆余曲折を経て自由党は2003年7月に民主党と合併しましたが、永田町では、「そのときに自由党が持っていた13億円とも言われるお金(預貯金)はどこへ行ったのか?」とずっとささやかれていたのです。こういう噂話は、なかなか裏がとれるものではないので、私も関心を覚えつつも手が出せないでいたのですが、井上氏の指摘は、まさにこの点を突いたものではないかと。これは数週間前のことですが、ある自民党幹部は「小沢氏の政治団体の収入と購入した不動産の金額が符合しない」とも話していました。

 まあ、私は国会議員会館をうろうろしながらこうした話を仕入れては、「そうは言ってもこういう点はなかなか難しいし、追及はできないだろうな」と思っていたのです。本日も、井上氏が総務会で話したというだけで、これで即、党として取り上げるというものでもないでしょうが、こういう話が非公式な情報交換の場ではなく、表の席で出てきたのが意外でした。そして、自民党はもしかすると「本丸」に攻め込むつもりなのか、と感じた次第です。松岡氏の自殺と、社会保険庁の年金記録紛失問題で、かえって開き直ったのかと。ただの妄想かもしれませんし、これ以上、伝聞で憶測を重ねるのは控えますが…。

 きょうはこれから安倍首相と小沢氏の党首討論が行われます。本日、熊本で執り行われる松岡氏の密葬に出たいという安倍氏の要請に対し、民主党側が「党首討論が先約だ」と蹴って実現したわけですが、これまで小沢氏は地方回りだなんだと党首討論に応じようとしなかったのですから、この姿勢はどうかと思います。昨夜、深夜帰宅で乗った車の運転手さんも「どんな人であれ、葬儀は人の生き死にの問題だから、何より大事なはずだ」と民主党を批判していました。

 関連して、おまけに最近のボツ原稿(執筆者は後輩記者)の一つを紹介します。前回5月16日の党首討論で小沢氏が安倍氏に「こんな問題がある」と指摘し、対応の必要を主張した問題について、安倍氏が反論したもので、5月23日に出稿したものの、紙面からはみ出てしまったものです。

 《無駄遣い補助金は小沢氏の指導? 首相が責任指摘

 「小沢さんが出した例は、海部内閣のときに交付措置をしたもので、当時は小沢さんが(自民党)幹事長を務めていた」

 安倍晋三首相は23日、日本経団連の定時総会であいさつし、16日の党首討論で民主党の小沢一郎代表から「無駄遣い」と批判された補助金制度創設の経緯を説明、小沢氏を痛烈に皮肉った。


 小沢氏は党首討論で、国の補助金で建設されながら12年間利用されずに閉鎖された福井市内のスキー場を紹介。融雪装置の設置とスキー場建設のセットでなければ政府の補助金を受けられなかったため、地元負担との合計で1億円以上の公費が無駄になったと批判していた。

 首相は「(当時の小沢氏は)党の指導者。私は議員にすらなっていなかった」と述べ、暗に小沢氏の責任を指摘。さらに「私の内閣では絶対にしない」と強調した。》

 ついでに、そのときの小沢氏の主張も掲載します。これも、軽いジャブ級のブーメランと言えるでしょうか。

 《小沢氏 福井県の美山町というところ、今、合併して福井市になっております。これはテレビやメディアでも報道されましたけれども、雪国なものですから冬場に道路の通行が非常に困難になる。この雪を除去する、融雪っちゅーんですか、その装置をつけたいと国に対してお願いをした。そしたら、たまたま国土省に雪国快適環境整備事業とかいうのがあり、そこにその道路の雪を溶かす、除去する補助金の項目があると。
 それをお願いしたところ、役所からそれだけじゃ補助金出せない、スキー場も一緒につくれ。こういうことがあって、そこで地元は、何もスキー場欲しいと言っているわけじゃないんですと、冬場の道路の雪を除去できればいいんですと、こう言ったんですけれども、両方つくんなきゃだめだ、ということで泣く泣くその事業を受け入れて町で事業として行った。
 その補助金の額は本来の道路の雪を消す事業に、3800万か3900万の補助金が国から出ました。スキー場設備の方には、4000万円ちょっと。合計8000万円ほどの、補助金出たんですけれども、そのスキー場は本来、要らないと言っているやつですから、12年間、今日まで1人も使用しないで、そのまんま野ざらしになっております。福井市でも、スキー場はもうやめちゃおうという決定をしたんですけれども、そうすると補助金を返せと言われるんじゃないかと今、頭を悩ましているという事例があります。
 本来の住民の必要となるもの、それだけでならば半分以下の補助金、国の補助金でよかったわけですよ。それからさらに裏負担、地方の負担ちゅうのは、スキー場に1億円、それはほとんど借金ですね、それをかけて誰もずっと使わないスキー場を造らせられちゃった事例がある。私はそういった類のことはですね、ほかのいろいろな事業、ハードの面もソフトの面も含め、あると思うんです。
 まずは総理が、こういうような無駄遣いがたくさんあると、まず洗いざらい調査してそしてその仕組みを変えるなり、なんなりするのが、まずは政府としてとるべき役目ではないでしょうか。》

 小沢氏の言っていること自体はよく分かるのですが、何だか今回の社会保険庁の問題と構図が重なって感じられて…。これも気のせいかもしれませんが。