今朝の産経は、朝鮮総連中央本部の土地・建物をめぐる仮装売買事件で、東京地検特捜部が総連ナンバー2(実質トップ)の許宗萬責任副議長から任意で事情聴取したようだと報じています。いいですね。戦後日本社会のタブーにいよいよメスが入っていくのかと期待しています。まだ捜査の行方がどうなるのか、私には分かりませんが、許氏は政界にも顔が広いとされます。さて、何らかの波及があるかどうか。

 私は本日は夕刊当番なのですが、今のところ、ばたばたしなければならないような動きも特になく、平穏です。そこで、ふと思い立ち、この問題でにわかに注目を集めている朝鮮総連の代理人、土屋公献元日弁連会長に関する弊紙の過去記事を産経のデータベースで検索してみることにしました。すると…。

 まず、1994年2月の、土屋氏の日弁連会長就任時の人物紹介記事には、土屋氏のこんな過去の業績が紹介されていました。いきなりヒット、という感じです。さすが人権派弁護士ですね、総連との付き合いは昨日、今日に始まったものではないようです。

 「朝鮮高級学校生徒の高校体育連盟加盟問題で日弁連に人権救済を申し立て、高校総合体育大会参加への道を開いた」

 ただ、この日弁連会長就任時の他紙のスクラップをみると、毎日新聞には、「中曽根氏(康弘元首相)がTBSを名誉毀損で訴えた訴訟で代理人を引き受けたが、『単にうわさだけで政治家をやり玉にあげるのは軽率では』と報道のあり方にも注文をつけた」とありましたから、そっち系一色の人というわけでもなさそうです。中曽根氏の訴訟って、何の件でしたっけ。私は覚えていないのですが。

 次に同じ年の5月には、当時の永野茂門法相による南京事件「でっち上げ」発言をめぐり、永野氏の辞職を求める会長声明を発表していました。なるほど。歴史問題に対するスタンスがうかがえます。

 95年12月には、オウム真理教に対する破防法の団体規制適用について「まことに遺憾であり、将来に禍根を残すものと言わざるをえない」との談話を発表しています。それに先立つ10月にも、同じ件で「我が国の民主主義、国民の人権にとって由々しき事態を招く」と反対声明を出していました。ある意味、一貫した人だなあとも思いますが、何で禍根を残すのかは私には分かりません。

 99年12月には、東京で開催された「戦争犯罪と戦後補償を考える国際市民フォーラム」の実行委員長を務め、「日本帝国主義が行った侵略と捕虜虐待」を糾弾したそうです。フォーラム開催に当たっての記者会見では「戦後、日本は事実を隠し、責任を果たさなかった」と発言しています。はあ、なるほど。

 で、2002年5月に北朝鮮・平壌で行われた「日本の過去の清算を求めるアジア地域連帯討論会」では、常設協議会日本委員会代表もやっていますね。小泉前首相の初訪朝前という時期と、開催地が微妙です。また、この協議会は04年12月に、日本の国連安全保障理事会常任理事国入り問題をめぐり、「日本は、日本が犯した戦争犯罪に対する責任を果たしていない」とする反対声明を出した23団体の筆頭でした。

 …確かに、この人物の傾向性や確信犯であることはうかがえます。でも、土屋氏に関する新聞情報は、意外と少ないなという印象です。本当は、元日弁連会長ということで、もっといろいろ出てくるかなと思っていたのですが、過去記事自体が予想より少なくて。一方、ネットでは、土屋氏がもっといろんなサヨク・反日団体やその主張とかかわっていることが指摘されていますが、そのあたりはあまり新聞は書いてこなかったようです。ちょっと、自社のデータペースで過去記事を引いてみただけなので、決めつけることはできませんが。

 ここから話は微妙にずれていきますが、新聞は、相手が公的立場にあるときには、失言や問題発言、あるいは特異な言動について詳細に報じますが、その立場を降りたら途端に関心を失い、同じ人がもっと変なことを言っても記事にはしません(記者個々人のメモには残っても)。また、重要な問題であっても、そのときの話題になっていないことは、小さく扱われがちです。紙面は有限ですし、ニュース価値の問題もあるので、それが悪いとは必ずしも言えないとは思いますが、新聞情報とネットで得られる情報について、改めて考えてしまいました。やはりネットが優位な点が多いなと。

 現在、新聞各社はみんなニュースサイトを持って、ニュースを流しています。ウェッブに配信されない記事もありますが、大きな話は基本的にネットで閲覧できますね。そして、それに関連する情報を集めたいときは、またどんどんググっていけばいいと。となると、紙媒体の価値は、ニュースの一覧性、紙ゆえの読みやすさ以外に何があるかと考えてしまいます。まあ、地道に一次情報を発掘して、独自ダネとして載せることか、深い解説記事を重視することしかないとも思うのですけどね。

 以前、民主党の小沢一郎代表の不動産問題を調べている際に、私たちが、ある程度情報がたまってから記事にしようと思っていたような情報が、ネット上で、次々と先行して提示され、議論されているのを見て、1日刻みで発行され、なかなか取材の途中経過を書きにくい新聞はどうしたらいいのかと危機感を覚えたのを思い出しました。

 現在、新聞は多くのニュースを整理し、取捨選択して載せています。上に述べていたような問題の解決策には全然なりませんが、毎日、政治、経済、社会、外信、運動、文化、特集の各部から出稿されたものの、紙面の関係上、こぼれ落ちて掲載されなかった雑多な記事を、片っ端から収容するような面があったらなあ、と思っています。テーマもバラバラで統一性がなく、読みにくいかもしれませんが、そういう記事の方がかえって面白く読んでもらえるんじゃないかという気がするのです。