参院選の投開票日まであと一カ月ちょっととあって、政治家から政局・政争がらみの発言が相次いでいます。もっとも、そうした話ばかりマスコミが聞きだそうとしている部分があるのも本当ですが。そこで本日は、この3日間で、私が面白いな、興味深いなと思った発言をいくつか拾い集めてみました。新聞やテレビで既報の話もありますが、現在の永田町の雰囲気が伝わるのではないかと考えました。

 まずは安倍晋三首相からです。これはこの前の日曜日(24日)のNHK番組での発言ですが、私はこれを聞いていて「ああ、やっぱりあのときの朝日新聞の記事が、安倍氏には相当、腹に据えかねたのだろうな」と改めて思いました。そりゃ「折れた首相」などと大見出しで、破れ傘か何かのように書かれればなあ…。

 安倍首相 「ある大新聞が、『首相、公務員制度改革断念』とこう一面に大きく出した。なぜ、こんな大きな間違いをこの新聞は犯したか。それは、公務員制度なんて絶対に変えられない、変えるべきでない、と思っている役所の人たちに取材をしているからなんですね。そして私はこの問題、必ず解決をしなければいけないと考えている。この私の強い意志を、全く知らなかったことによって、こういう間違えになった。私はこの国会において、この公務員制度改革を必ずやり遂げなければならない。この勢いを1回失ったら、抵抗が強いですから、もう今後はなかなか難しい状況になってしまう。そういう状況をつくろうと虎視眈々と狙っている勢力がたくさんいますから、われわれは何としてもこの公務員制度改革をやっていきたい」

 この朝日の「誤報」については、私は6月6日のエントリに書いていますが、確かに理解に苦しむものでした。率直に言って、また「弱い首相」という印象操作を試みているのかなとも思ったのですが、安倍氏自身は「抵抗勢力側からの取材に影響された」との解釈を述べていますね。朝日について名指しもしていませんし、抑制的なようにも感じました。

 で、次は同じNHK番組での民主党の小沢一郎代表の発言です。司会者に誘い水を向けられてのことですが、政界再編に言及していたのに関心を覚えました。確かに、民主党が参院選で勝ったとしても、衆院側は与党が圧倒的議席を持ったままですから、何か仕掛けないといたずらに政治が停滞するだけですね。

 

 小沢氏 「衆院は自民党が(議席を)持っているので、総理は自民党ですよね。しかし、現実に参院が過半数ないと政権運営ができませんから、そうすると自民党内でもどうするんだ、こうするんだという議論になるし、我々の方でもどうしよう、こうしようという議論になるので、当然、いろいろな政治のいろんな問題が出てくると思う

 民主党の保守派が割れて新党結成でもし与党と連立を組むようなことになれば、面白いのですけどね。現在の自民党は、たびたび公明党路線に引きずられ、中途半端な政策を強いられていますが、ここに新たなファクターが加わればどうなるか。自民党・新党VS公明党というような構図を何よりいやがる公明党への牽制にもなるでしょうし、そして将来的には…。

 さて、昨日の自民党の中川秀直幹事長の記者会見での発言に移ります。年金問題での逆風をもろに受けている現状への危機感がにじんでいます。また、国民に対し、必死で「安易に野党に投票しないで」と呼びかけているようですね。

 

 中川氏 「総理はいいが社保庁幹部や職員はいやだから、野党に(票を)入れるという気持ちはわからなくはないが、そういうことは結果的に、大局的につながるところは小沢総理を待望することになりかねない。逆にいえば、霞が関や社保庁は抵抗勢力が息を吹き返すことになるんですよ、と。改革のスピードが落ちて停滞の時代、公務員の時代に戻るんですよ、と」

 この人は、もう少し明るい口調で話せばいいのにとよく思います。ぼそぼそとうつむきがちに、小さな声で何か言っても、有権者にいい印象は与えないだろうにと。そして、最近、政権を批判を強めて、自分ひとりが偉いかのような発言を繰り返している舛添要一参院政審会長は同日、CSテレビで以下のように放言していました。自分の発言ぶりに、批判があることは承知しいたようですね。

 

 舛添氏 「私が乱暴な発言ができるのも、全国比例で160万票もらったからだ。自民党の票は一票も入っていない。100万票以下の人は党のいうことを聞かなければならないが。非拘束名簿方式がなければ私は参院選に出ていない。安倍人事のツケが今出ている。自分のために汗流した人しか採用しない、反主流派を入れないから、弱い政権になった。松岡利勝農水相の自殺がなければ、これほど支持率は下がらなかった。挙一致内閣を作るべきだ

 いや、どうして100万票が基準なのか明確ではありませんが、舛添氏は今回は100万票は取れないでしょうから、そしたら初めて党の言うことを聞くということでしょうか。今だって党の参院幹部なんですけどね。それと、私は以前から不思議に思っているのですが、どうして内閣に首相と考え方の違う人を入れたら政権が強くなるのでしょうか。よく、中曽根元首相が田中派の後藤田正晴氏を「女房役」の官房長官に起用した成功例が指摘されますが、あれは田中派がとても強かったからではなかったのかと。

 一方、最近は政界のご意見番的雰囲気を帯びてきた森喜朗元首相は昨日、講演で内閣支持率が低下しても自民党の結束は大丈夫だと語りました。そうあってほしいと思いますが、実際はどうでしょうか。上の舛添氏もそうですが、加藤紘一氏なんかも「今こそリベラル勢力の結集を!」と、昔の夢よもう一度と呼びかけていますし。まあ、森氏はそうした人たちを牽制する目的もあってこう話したのかもしれませんね。

 

 森氏 「(内閣支持率が低下しても自民党の方は泰然自若、不動の心境でいればいい。そんなことで右往左往する必要はない。そういう意味では安倍さんという若い指導者に政権の運営をまかせた。年上連中は残っている。山崎拓、加藤紘一、高村正彦にしたっていっぱいいる。そういうヒトを飛び越えて総理になった。腹の中ではコノヤローと思っているが、表面的に安倍さんを引きずり降ろそうということは絶対に自民党はしない。あえて延長しても、きちんとしたことをやっていこうというのは安倍さんなりの相当の決意だと思う

 「腹の中ではコノヤロー」という部分が笑えるのですが、本当にそうなのでしょうね。会社でも何でもそうでしょうが、若くして年上の部下を持ち、使いこなすというのは難しいことでしょう。そうでなくても政界は嫉妬の海とも言われるのに。でも、ここで安倍氏を下手に政局的に倒そうとすると、自民党自体が崩壊してしまうという危機感を持っているベテランと、そうではない人と両方いそうです。

 ここからは本日の閣議後の記者会見での各大臣の様子です。伊吹文明文部科学相は、教育再生関連3法案の成立についての質問に、いつものように飄々と答えていました。私が注目したのは、文科省の官僚や教育委員会などが、組合(この場合は日教組と全教)とうまくやる人がやり手とされてきたのだということが、伊吹氏の言葉から伝わってくる点です。なるほどね。

 

 伊吹氏 「行政の独断、大臣の独断でものを変えるような独裁国家じゃないので。法整備はしなくちゃいけないけど、法整備だけでうまく動かないですからね。文科省の人達の感性も磨いてもらわないといけないし、学校現場の意識を変えてもらいたい。社保庁の問題もそうだが、組合となれ合って上手く動かしていくというのがやり手で上手い人という意識は、変えないといけない

 次は、国会を延長したものの、審議日程がなかなか決まらない公務員制度改革関連法案に関する、渡辺喜美行政改革担当相の登場です。なんだかカッカしている様子が分かります。この人は、この法案の行方次第では、衆参同日選もありえると述べています。気合が入っています。

 渡辺氏 「もし公務員制度改革関連法案が審議未了、廃案ということになると、現状が固定化されるということだ。仕事をせず、責任をとらないで渡り鳥を繰り返す社保庁長官などに象徴される役人天国が、そのまま温存されるということになる事態だけは回避しなければならない。役人天国が続いて一番喜ぶのは誰か。それは既得権益を持っている人たちだ。野党も天下り根絶を主張しているわけだ。ところが野党がやっていることは、結果的に天下り温存。仕事をせずに給料をもらうだけの役人を放置してしまうということだ。そしてキャリア、ノンキャリアという身分制度に基づく古いシステムがそのまま残ることに手を貸すことになると思う。いずれにしても抵抗勢力、隠れた抵抗勢力が野党と結託をして法案を廃案にしようとしていると疑われかねない状況だと思う」

 この官僚や与党内(?)の抵抗勢力が野党と結託しているという構図の見立ては、安倍首相とも共通しているようですね。公務員制度改革は今回限りの話ではなくて、この法案は第一弾という位置付けなので、最初から躓きたくないという思いがほとばしっていますね。

 最後は、気の早い人が「次はこの人」と言い始めた麻生太郎外相です。参院選の結果に対する安倍首相の責任論を質問した記者を、軽くあしらっています。こういうことをやらせると、この人の独壇場ですね。一種の芸のようにすら感じます。こういう風に答えられると、聞く側も変な質問はしにくいものでしょう。

 麻生氏 まあ、そういう話にして政局を作りたいというのがおたくの会社の意図ですか?大体そういう風に聞けと上から言われているから聞いているだけ、しんどいもんですな。会社どこですか?日本テレビね。誰が言わせているか分かるけどね。○○(※記者名)が考えるレベルの話じゃないな。もっと上の方から考えたんだろうけど。あの選挙というのは、これは基本的には自由民主党という党が選挙しますんで、党の責任、選挙の責任は基本的には幹事長ということになるんだろうと思いますけど、そりゃ最終的には総裁ということになる。ただ、それだからといって、それをすぐ一人減ったから選挙で負けた、一人勝ったから選挙に勝った、だから政局だというようにしたがる日本テレビのレベルの話とは違うと思います

 ただ、麻生氏に関しては、最近著書「とてつもない日本」を出したばかりということもあり、メディア露出が多いことに、党内にも警戒感があるようです。週刊朝日などが麻生氏の特集を組んだことに対し、「ポスト安倍をアピールするために、自分から書かせたのだろう」と見る人もいます。また、最近、某大新聞社の著名なボスは「麻生は今まで安倍ラインで来ているのだから、安倍が倒れたら即、麻生とはならない。福田康夫元官房長官だろう」と話していたと聞きました。

 この大ボスの見立てが正しいとも思えませんが、参院選に向け、外野も含めて自民党内ではさまざまな思惑含みの言論が乱れ飛んでいます。現在の逆境を跳ね返し、自民党が勝つような結果になれば、一瞬にして「シーン」となるでしょうが。最後に、久間文生防衛相が、年金問題をめぐりボーナスを返上した安倍首相について語った言葉を紹介します。

 久間氏 「その総理の決意は決意として大変、立派なものだと思いますけれども。総理に選挙との責任論とかいう話が出たが、そうじゃないんじゃないかという気がしてね。マスコミの論調はいつもその時の責任者にぶつかっていくが、安倍総理は気の毒じゃないかという気がしてならないんですよ。就任したら、今まで伏せていたものが、ばーっと選挙前に出してきてね。さも安倍総理に責任があるかのような論調になってしまっている。おかしいんじゃないかなと思うんですね」

 私は、久間氏の日米同盟に対するスタンスには疑問がありますし、今までのイラクやミサイル防衛をめぐる発言には失言の部類も少なくないと思っています。また、久間氏と同じ津島派に所属するある議員は「あの人はサヨクだから‥」とはっきり言っていました。でも、この人はそれだけ時として率直な物言いをするので、「そうだよなあ」と頷けることもけっこうあります。今回もそうでした。