本日夕、都内の慶応大学病院で行われた安倍首相の記者会見に行ってきました。私は一番前の列に陣取りましたが、きょうは質問はしませんでした。多くの人がテレビで会見の様子をごらんになったでしょうから、あえて付け加えることはありませんが、安倍首相がまだ十分病気から回復していないのは現場で見ても明らかでした。一人の理想に燃え、溌剌とした志ある政治家を、たった一年の間にこれほど心身ともに傷つけダメージを与える政治とは、何と残酷なものなのかと、改めて感じた次第です。

 

 現場で、何枚か写真を撮りました。その中で、比較的写りの良かったものを掲載します。安倍首相は、正式に退陣する前に、とにかく国民に一言、今日の事態についておわびを述べたかったようです。また、自民党の麻生前幹事長らによる「クーデター説」を明確に否定していました。ここに安倍首相の会見全文を載せて、記録に残したいと思います(※ご指摘がありましたので追記します。記者の質問の方は大意を伝えたもので、正確にテープ起こししたものではありません)。
 

【冒頭発言】

安倍首相 13日以降入院して治療に専念してまいりましたが、思うように体調が回復せず、今まで国民の皆様にご説明をする機会を持てずにおりました。内閣総理大臣の職を辞する前にどうしても一言国民の皆様にお詫びを述べさせて頂きたいと考え、不完全ではありますが本日このような機会を設けさせていただきました。まずお詫びを申し上げたいのは私の辞意表明が国会冒頭の非常に重要な時期、特に所信表明の直後という最悪のタイミングになってしまったことです。このため国会は停滞し、国政に支障を来し、閣僚をはじめとする政府関係者の皆様、与野党関係者の皆様、何より国民の皆様に多大なご迷惑をおかけしたことを改めて深くお詫び申し上げます。

 私は内閣改造後最重要課題として、テロ特措法の延長を掲げ、APECまでの各国首脳との議論を通じて我が国の国際貢献に対する期待の高さを痛感し、シドニーでもその決意を申し上げました。しかしこの1ヶ月間体調は悪化し続け、ついに自らの意志を貫いていくための基礎となる体力に限界を感じるに至りました。もはやこのままでは総理としての責任を全うし続けることはできないと決断し、辞任表明に至りました。

 私は内閣総理大臣は在職中に自らの体調について述べるべきでないと考えておりましたので、あの日の会見ではここ1ヶ月の体調の変化にはあえて言及しませんでしたが、しかし辞任を決意した最大の要因について触れなかったことで、結果として国民の皆様に私の真意が正確に伝わらず非常に申し訳なく思っております。総理大臣在職中、多くの国民の方々に暖かく力強く応援していただいたことに感謝申し上げます。皆様の期待に十分お応えできず申し訳なく残念に思っております。

 先日自民党両院議員総会において選出された福田康夫新総裁に対し、心よりお祝いを申し上げます。私は明日で内閣総理大臣の職を辞することになりますが、新たな総理のもとで国民のための政策が力強く進められるものと信じております。麻生幹事長、与謝野官房長官の2人をはじめとする政府・与党の皆様には最後の最後まで、私を力強く支えていただいたことに対し、深く感謝しております。私も1人の国会議員として引き続き、今後力を尽くしていきたいと考えております。

 

【質疑】


記者
 一国の首相として首相辞任の最大要因について、辞任会見で話さなかった責任をどう考えるか。もし党首会談が実現してインド洋給油継続にメドがつく見通しなら続投したのか。臨時代理をおかなくて執務に問題はないのか。

 

安倍首相 初めの質問でありますが、やはり辞任の会見においては最大の要因である健康問題について、率直にお話しすべきだったと、このように思います。もちろんあの時申し上げましたようにテロとの戦いを続けるために全力を上げていきたいし、その状況が大変困難な状況になったと。自分がいることによって困難な状況を打開をしていくことは難しいと、いう中に私の健康の状況を込めたわけでありますが、そこはやはりはっきり申し上げるべきであったと思います。

 また、小沢党首との会談でありますが、衆院は自民党が与党で過半数を制している。他方参議院は野党が過半数を制していて民主党が第一党であるという状況の中で、国政を進めていく上においては、両党党首が適宜会談を行いながら、国政を進めていくことが大切でないかと考えておりました。特にテロとの戦いのような外交安全保障については、基本的に同じ基盤を共有することも必要でないか。その観点から共通点を互いにみつける意味においても、新しい信頼関係を構築しながらそういう関係を作っていくことによって打開できないかという思いで党首会談を申し入れたわけでございますが、その段階では健康上の理由もあり、私は辞任するという決意を固めておりましたが、その上に立って両党でそういうこの問題については特に関係をつくってもらえないか。というつもりでお願いするつもりでした。

 
 臨時代理については法律にのっとって職務にどの程度支障をきたすかどうかという判断の上に今回は臨時代理をおかなかったということになりました。

 

記者 総裁選について。麻生が辞意を知っていながら結果的に退陣に追い込んだというクーデター説が流れた。事実関係と受け止め。総裁選の投票先は。福田新総裁、自民党執行部に対しどういう政権運営を臨むか。

安倍首相
 麻生幹事長には総裁と幹事長という関係ですから、辞意ということでなく「最近少し体調が思わしくない」という話をしたことはございます。そして巷間言われているようなクーデター説というような、そういうことはまったく違います。そもそもそんな事実は存在しないとはっきり申し上げていいという風に思います。

 むしろ、幹事長としてこの困難な状況の収拾に汗を流して頂いたと感謝しております。総裁選につきましては、新たに福田新総裁が誕生したわけでありまして、福田総裁は官房長官として長いキャリアを積んだ方でありまして、安定感のある政策に通じた方でありまして新総裁を中心に党が一丸となって、政府・与党で政策を協力に実行してまいりたいと考えております。

何か言おうとする司会を遮って一票についてのお話でございますが、昨日総裁選は終わったわけでありまして、福田総裁のもとに一致結束していくことが大切であろうと思います。去っていく前総裁が誰にと申し上げるべきでないだろうとこのように思います。麻生幹事長にも本当に、幹事長としてよく補佐をしていただいたと感謝申し上げたいと思います。

 

記者 退院後はどう福田総裁を支えるか。次期総選挙には出馬するのか。

 

安倍首相 健康を1日も早く回復したいと。段々食事もできるようになってまいりましたので、一日も早く退院できるようにと思っておりますし、明日かな。首相指名選挙には行きたいと思っております。一国会議員として今後は活動していくことになるわけですが、新しい総裁のもと困難な国会状況でありますが、一因として力を尽くしていきたいと考えております。またもちろん選挙についても地元の皆様の理解をいただき、私もまだ政治家を続けていきたいとこのように考えております。

 

(※医師補足…8月のインドなど外遊中に急性腸炎を患っていたこと、全身衰弱、食欲がなかなか戻らず、5キロ減った体重が全く戻っていないことなど)

記者 総理が麻生幹事長に騙されたとか、与謝野官房長官に主導権を奪われたと述べたと、一部の国会議員が総裁選の最中に流布したようだが、本当に話したのか。

 

安倍首相 そういう事実はまったくございません。特に今回突然の辞意表明になったわけでありますが、その後の事態の収拾に対し大変麻生幹事長も与謝野官房長官も本当によくやっていただいたと感謝しております。そういう事実はまったくございません。(了)