昨日、安倍内閣の総辞職と福田康夫氏の首班指名に基づき、福田内閣が発足しました。まあ、急場しのぎでもあるし、安倍改造内閣を大きく変えることはないと思ってはいたのですが、それどころかほとんど居抜きでしたね。福田首相自身、「必要最少限にとどめた」と言っていますが、確かに伊吹前文部科学相の自民党幹事長就任と、町村前外相の官房長官就任による玉突き人事があった程度で、安倍改造内閣とほとんど変わっていません。正直なところ、やはりという気持ちと、よくここまで割り切って徹底したものだなという印象と、両方の感想を抱きました。

 ただ、ここまで安倍改造内閣と違わない形にしたということは、福田首相は事情が許せば、この臨時国会閉会後に改造を行い、そこで「福田色」を出してくるつもりなのでしょう。その前提で、私なりに福田首相の組閣の狙いというか、事情について〝憶測〟を述べることにします。

 まず、この内閣は各方面からの批判を封じ込めることに主眼を置いたのだな、ということです。私もたびたび書いてきたことですが、福田首相は歴史観や特定アジアへの視線、拉致問題の優先順位などで安倍前首相(この表記は寂しいですね)とはかなり異なります。それが、昨日の記者会見では福田氏は「基本的には前内閣を踏襲する」と語りました。安倍氏が苦心惨憺して考えた布陣をそのまま引き継げば、当面は福田首相を警戒してきた人(私もそう)たちも、文句がつけにくいだろうと考えたのだと思います。何かあったら「前首相が起用した人物だ」と言い逃れることも可能ですし。

 この点では、閣僚もさることながら、中山拉致問題担当首相補佐官、山谷教育再生担当首相補佐官の二人を留任させたことも大きいですね。福田首相はこれまで拉致問題に冷淡だと言われてきましたし、教育問題について何か系統立ったことをしゃべるのを聞いたこともありません。昨日の就任記者会見でも、安倍氏と違って教育問題には触れませんでした。それなのに、この二人を使うというのは、とりあえず、そんなに急に路線を変えるわけではないですよ、というメッセージになっています。

 逆に中山氏や山谷氏にすれば、これまでの安倍路線を続けるためには、自分たちが踏みとどまらないといけないという思いもあったかと推察します。中山氏は安倍氏が官邸を去るときには自分も辞めることになるだろうと言っていましたし、山谷氏は教育再生への取組で、安倍氏に高く評価されていましたし。中山氏の留任で、拉致被害者家族会と官邸とのパイプは当面維持され、家族会の福田首相批判も表面的には抑えられるという計算もあったのだと考えます。

 総裁選で麻生前幹事長を支持した甘利経済産業相、鳩山法相を留任させたのは、入閣を固辞した麻生氏からとった人質とも言えます。公務員制度改革の旗振り役である渡辺行政改革担当相の留任で、「官僚大好き」という自分のイメージが中和されるのであれば、と福田氏は考えたのかもしれません。単に時間がなくて党内に人脈も少ないので、開き直ってそのままにしたのかもしれませんが。

 また、居抜き内閣とすることのメリットとして、「政治とカネ」の問題をある程度クリアできるということもありますね。安倍改造内閣発足時に、鴨下環境相や若林農水相の問題が指摘されましたが、一応クリアした形なので、福田内閣がこの問題で追及されることはあまりないだろうと。新たな閣僚をたくさん入れると、問題・疑惑をつくろうとすればいかようにもできるメディアの標的にされる可能性がありますからね。それにしても再任13人というのはすごいというか、何というか。

 山崎派から渡海文部科学相を初入閣させたのは、総裁選で真っ先に福田氏擁立に動いた山崎拓元副総裁への配慮でしょう。福田政権成立は、森元首相らがとりまとめ役になりましたが、山崎氏の貢献も大でした。そこで、永田町では「山崎氏を処遇しないわけにはいかないのでは。軽量閣僚は難しいし、まさか外相にするわけにもいくまい。また副総裁か?」などと、面白半分にささやかれていました。しかし、福田氏としても、かつて裁判で「変態」であるかどうかが争われた人物を直接登用することははばかられたようです。山崎氏自身は面白くないかもしれませんが、まあ常識的な判断です。

 臨時国会では、インド洋などでテロ対策の補給活動を継続するための新法が最大の焦点です。私は今回の組閣を見て、福田首相はとりあえず、臨時国会ではそれ以外のことはあまりする気がないのだな、と少しだけ安心しました。もちろん、油断はしませんが。

 ただ、臨時国会で何とか新法が通り(通るかどうか分かりませんが)、無事に国会を閉じることができれば、今度は福田氏自身がやりたいことをやるための改造を実施するかもしれません。そのときの布陣は要注意だと思います。すでに党4役の中には、人権擁護法案に熱心な二階総務会長、古賀選対委員長らがいますし、谷垣政調会長は女系天皇容認派です。現閣僚の中にも、公明党の中で最も外国人参政権付与に情熱を燃やす冬柴国土交通相が残っています。

 先のことは分かりませんが、一つ予想すれば、福田氏はもし内閣を改造することになったら、板東真理子・元内閣府男女共同参画局長を登用するかな、という気もしています。この人は埼玉県知事選に出て落選するぐらい政治志向があるし、最近は「女性の品格」という本が売れているようだし。実は、中山首相補佐官が小泉政権時代に拉致問題担当の内閣官房参与に起用される際、福田氏の初めの意中の人はこの板東氏だったと当時、政府関係者から聞いていました。そうなっていたら、中山氏ほど家族会と心が通っていたかどうかは分かりません。

 組閣翌日ということで、とりあえず感じたことを記しました。また具体的な動きが出てきたら、そのときどきに見聞きし、思ったことを報告したいと考えています。淡々と冷静に福田内閣を見つめていこうと思っているのです。