先日、日本文化チャンネル桜から、制作中の映画「南京の真実」のセットを取材しないかという誘いを受けたので、きょうは朝から東京都調布市にある日活の撮影所におじゃましてきました。「南京の真実」はご承知の通り、南京陥落70周年の今年、計7本の史実に基づかない南京大虐殺映画が中国や米国、カナダなどで制作・公開されたことに憂慮したチャンネル桜の水島総社長らが、南京戦の正確な検証と実態を伝えるためにつくることにしたもので、今月中に撮影を終える予定だそうです。これは3部作を予定しており、第1部「7人の『死刑囚』」は、12月14日に九段会館で完成試写会を行う予定だそうです。そのセットが収められたのが、この第7スタジオです。

   

  外から見ても、中がどうなっているのかさっぱり分かりませんね。私は映画の撮影所もスタジオも初めて訪れたので興味津々でした。で、最初に案内してもらったのが、この場所でした。これが何のセットだか分かりますか?

   

 東条英機元首相ら7人のいわゆる「A級戦犯」が絞首刑にされた巣鴨の処刑場を、できる限り忠実に再現したというセットです。二階部分にぶら下がっているのが、首を絞める縄です。そして、二階床のふたが開き、落下して吊されるという仕組みです。一度に5人同時に処刑できるようになっていますが、実際は4人と3人に分けて処刑は実行されたそうでした。最初はこれはなんだろうと思ったのですが、処刑場だと分かると厳粛な気分になりました。

 この処刑場は幅50尺で、二階の高さは9尺7寸5分、「13段」の階段は1段7寸5分で、日本の大工によって、尺寸法にのっとってつくられていたようだと聞きました。ちなみに1尺は30.3センチ、1寸は3.03センチ、1分は3.03ミリですね。真新しい白木が一見、処刑場らしくないようにも感じましたが、巣鴨につくられた実物も当時は新しいかったのですから、むしろ新しい方がリアルなのだと気付きました。次に見たセットがこれです。

   

 いわゆるA級戦犯たちが暮らした巣鴨プリズン1階の独房が並ぶ廊下です。とてもスタジオ内のセットだと思うえないほど真に迫った雰囲気がありました。ずっと以前にも書きましたが、私は大学時代、絞首刑にされた一人である広田弘毅元首相がつくった学生寮のお世話になり、命日(12月23日、当時の皇太子殿下誕生日)にはお墓参りなどもしていたので感慨はひとしおでした。

   

 これは1階独房の室内を再現したセットです。鉄格子のはまった窓が寒々しく感じます。この映画(第1部)は、主に死刑判決を受けた7人が刑死するまでの24時間を描いたものだそうです。死を目前にして、彼らは何を考え、何を語り、どう振る舞ったのか…。

   

 これは、7人が処刑前の最後の24時間を過ごした3階の独房のセットです。もともとは女囚用の部屋だったものだったとか。出窓の形に特徴がありますね。ここから見えた外の景色はどんなものだったのか。

 チャンネル桜の取材によると、巣鴨プリズンの初代教誨師だった花山信勝氏が、処刑の前に7人にふるまった葡萄酒は米国製で、カリフォルニア・ロスガトスの産だったそうです。金沢の寺院に残された花沢氏の遺品を撮影に行き、初めて気付いたそうですが、このロスガトスとはかの「レイプ・オブ・ナンキン」の著者、アイリス・チャンが暮らし、自殺した場所だそうです。南京事件の責を負わされ処刑された松井石根・中支那方面軍司令官が飲んだであろう葡萄酒が…と考えると、少し因縁話めいた感じもします。最後のセットはこれです。

  

 7人が死刑を通告されたチャンプレンス・オフィスという場所だそうです。正面の壇上には仏像があるそうなのですが、この日は白い布に覆われていて見えませんでした。どこか寒々しさを感じさせるセットでした。

 この映画は完成試写会の後は、まずはカンヌ、ベルリン、ベネチアなどの海外の映画祭に出品する予定だそうです。東京裁判といわゆるA級戦犯にスポットを当てた第1部に続く第2部は、検証ドキュメンタリー風の作品とするとのことで、第3部は「まだ秘密」(ちょっと教えてもらいましたが、まだ書かないでと言われました)なのだそうです。

 いずれも、正面から「大虐殺はなかった!」と声高に主張するよりも、映画を通じて「世間で流布されている大虐殺説(プロパカ゜ンダ)は何かおかしいぞ」と観た人それぞれが受け止めるような作品にしたいとのことでした。試写会は一般にも公開する予定だそうですが、会場スペースには限りがあるので立ち見も出るかもしれませんね。いずれにしろ、話題作となるのは間違いないでしょう。