本日は午前8時から、自民党本部101会議室で、拉致問題対策特命委員会(中川昭一委員長)が開かれたので私も行ってきました。きょうは、訪米して北朝鮮に対する拉致支援国家指定解除をしないよう訴えてきた拉致被害者家族会の飯塚繁雄副代表と増元照明事務局長が訪米報告を行い、先日のエントリでも紹介した北朝鮮帰りのジャーナリスト、田原総一朗氏も北朝鮮でのやりとりについて話すというので、これは注目だなと思ったからです。

 ただ、冒頭の中川委員長と中山恭子首相補佐官のあいさつの「頭撮り」を除いては、会合はクローズだったので、各社の記者たちは会場のドアに耳をつけて漏れ聞こえる音を拾う「壁耳」にいそしんでいました。私はもともと左耳が悪いこともあって壁耳は苦手なので、ときどき所用で外に出てきた議員らにぶらさがったりしながら、会合が終わるのを待ちました。会場の様子はこういう感じです。右端でマイクを握っているのが中川氏です。

   

 そして、正面のアップが、この写真です。少しピントが甘いですが、左端が飯塚副代表で、右端の中山補佐官の隣に座っているのが田原氏ですね。中川氏はあいさつで、「この問題は国家主権の問題だ」と強調していました。当然のことなのですが、この一言を口にできず、人権問題であるとしか言わない政治家が、なんと多いことか。

   

 さて、実はこの日の会合は事前の情報では、拉致被害者家族が北朝鮮に対して非常に融和的な田原氏に対し、激しく批判するのではないかという見方も出ていました。でも実際は、多少のやりとりはあったものの基本的に「大人の対応」だったようです。まず、会合終了後の記者団による田原氏のぶらさがりインタビューを紹介します。

 《■田原氏 

Q きょう田原さんはいろいろ意見を言っていたが、どんなことを?

田原氏 ちょっと本当は僕は場違いなんで、きょうはアメリカに行って拉致問題でアメリカの議員たちにいろいろ意見を、アメリカに要請してこられた人が中心になっているので、僕は場違いの人間から思うことを言った。一番言いたかったことは日本の政府が拉致問題について何を考えているのか、北朝鮮に分かっていない。つまりいろんな拉致にとって熱心な人たちがバラバラの意見になっていると。政府サイドからは決してそういう意見になっていない。北朝鮮は一体誰を相手に交渉すればいいのか分からないと。私にもそう言っていました。私が別に、誰だっていう立場にないんでね。だから、政府が何を考えているのか、あるいは外務省が一体どうしたいと思っている。そこらへんが北朝鮮がよく分かっていない。そこは一番問題だと思います。

 

Q 宋日昊と話して、それ以外の被害者の調査ということが焦点だと思うのか?

田原氏 まだね、はっきり言って僕は今年になって・・・。小泉さんは2度訪朝した。その後の日朝関与は進んでいないと思っています。向こうはむしろ、日朝関与を進めたいと。宋日昊は僕に何度も言いました。会議を進めたい。それが形式的に途中で終わって誠に残念だと言っていましたね。

 

Q 映像でとってきた宋日昊の話以外のところで日本への期待感は?

田原氏 だから、交渉したいと言っているんですよ。できれば非公式の交渉をしたいと。で、誰が一体頼りになるんだろうということを彼が言っていました

 

Q 日本政府の窓口が分からないと?

田原氏 はい。はい、はい。だから、それは僕にはよく分からないから、帰ってからいろんな人に話をしようというふうに言いました。

 

Q そういう話はきょう、自民党の方からは?

田原氏 一部にね。ただきょうのメインはアメリカに行った人たちの話ですから。僕は政府がね、あの、バラバラなんですよ。たぶん外務省は今ここで行われている路線とは違う路線だと思う。福田さんもちょっと違うんだと思う。そのへんがみんな言うと、こういう問題は微妙だから、言わないから余計分からない。だから、官邸、外務省、議員の人たちもバラバラになっているなあと思います。

 

Q 家族会等からは田原氏が北朝鮮の主張を言っているようで反発があるが?

田原氏 そんなことはない。僕はあくまで宋日昊とインタビューして、宋日昊のインタビューを受けたんであって、僕の意見ではないよと、こう言っています。》

 …うーん、北朝鮮にとってだれが一番頼りになるかねぇ。しょっちゅう訪朝したがっている山崎拓氏あたりがまた「オレがオレが」と言って喜びそうな話ですね。福田首相にも熱心に北の情勢や事情について説いているとも言われていますし。あと、この「僕の意見ではない」という田原氏の言い方は、半分はその通りかもしれませんが、これまでの政府や外務省のやり方をポロクソに批判して、北側に立ってきた言動を見ていると怪しい気もしますね。実際、田原氏自身もそう思っているのではないかと。

 出席議員によると、「北は拉致被害者8人は死亡したと言っている」と話す田原氏に対しては、中山補佐官が「北は金総書記が2002年にそう言ったのだから立場をなかなか変えられないのでしょうね。それだけ北にいいルートがあるんだったら、(8人死亡という)北の主張を変えられるようにしてください」と皮肉ったそうです。次は、飯塚、増元両氏の話したことです。


 《■飯塚、増元両氏 
Qきょう訪米についてどのような説明をし、議員からどのような意見が出たか

飯塚氏 訪米報告は、西岡力先生がペーパーで書いて配った。私は今回の感想というか、特に議員の先生方が中心となって訪米団を組んで、議員外交で直接拉致問題を訴えながら、当面のハードルである指定解除については絶対するな、しては困るという強いメッセージをかなり与えていて、今後につながる成果があったのではないかという話だ。

私自身は被害者家族として、苦しい立場を訴えてきたが、素人ながら感じるのは、もし解除されれば、何回も言うが、われわれの家族が永遠に葬られてしまうのではないかという強い思いを持っているということを話した。特にこれからだが、日米両国の国会議員の連携によって、日本人拉致問題は、日本としては一番重要な課題であるということを示しながら、具体的にどう進めていくかということについて考えながら、これからやりますという各議員の話があったし、中には人脈的につながる議員もいるということで、あらゆるつてを探りながら、議員外交をきちんとやっていくということだ。

私たちが日本の国会に望んだのは、衆参両院で拉致特のきちっとした決議文を確定して、向こうに日本の国として全体が取り組んでいるんだという意気込みを示したらいいとお願いした

 

増元氏 とにかく私たちが訪米したのは、テロ支援国指定がいかに拉致被害者を救出するために重要なものかという認識のもとで、アメリカのテロ支援国指定解除に対する流れをいくらかでもとどめていきたいという思いと、あとは超党派の議連の先生方が向こうに行って頂くことによって日本の立場、日本の政府、国民がいかに拉致問題を重要視しているかと言うことを米国議会の方達によく理解して頂いて、米国政府の流れをいかに食い止めていけるかということで行ったと話した。

議員外交の今後の重要性、さらに12月末までにテロ支援国家指定解除を通告するのではないかという流れを止めるには、議員外交を今後も継続してやっていかなければならないとの意見が多々みられたのが大変心強い

 

Qテロ支援国家指定解除の流れが強まる中、政府与党にどのような対応をとってほしいか

増元氏 今要請したのは、衆参両院で拉致問題特別委員会があるので、日本の国会として米国のテロ支援国指定解除に対して非常に反対であるという議決をしていただくことを要請した。我々としては民間としてできることをやっていくと報告した

 

Qその提案に対し、議員の反応は

増元氏 中川委員長が最終的に、そのことも自民党の拉致問題特命委員会の議員に説明され、衆院拉致特委の筆頭理事の高木毅先生にもその旨を伝えていたので、その流れを議連とともにやっていくということをいっていただいた。やっていただけると確信している

 

Q議員外交の継続として再訪米などは言っていたか

増元氏 飯塚副代表がいったように、日本の議員の中に米国議員とチャンネルを持っている人がいるので、それを利用して向こうの議員に働き掛け、さらにテロ支援国指定解除の流れを阻止していくことを強めていくと言っていたし、再訪米の議論はなかったが、拉致議連の中ではそのような話が出ているのは事実だ

 

Qきょう田原氏と同席していたが、直接意見は言ったか

飯塚氏 特に指摘しなかったが、有名なジャーナリストとして影響力が大きい方が、記事や言ったことの影響力が大きいのだから。北がこう言っていますよというのはあるかもしれないが、私が感じたのは、彼自身が本当に日本人拉致被害者を助けたいのかという原点で堅いものを持っているのかと心配したが、逆にああいう有名な方を通じて日本側の有利なメッセージを向こうに伝えるという点では、もっと違う面でお願いしたらいいかなと思った

 

増元氏 田原さんの話の中に事実誤認が多々あるなと思ったが、それに対しては外務省の飯原参事官もある程度は答えていたので、もっとしっかりとした事実関係を把握した上で宋日昊と話をしていただきたかったと私は思う。

 きょう聞いた段階では、あまりにも宋日昊から聞いたという前提で話していたが、北のメッセンジャーになってしまっている部分があまりにも強のかなという印象をちょっと受けてしまった。だからメッセンジャーもいいだろうが、それがミスリードにならないことを心がけていただかないと、日本の世論の中で8人死亡が定着してしまうことが非常に怖いと思う。宋日昊は当然拉致問題というか日朝関係を進展したいという強い意志があるのは当たり前だと思う。彼らの前提は拉致問題を終結させて日朝関係を進展し、補償、経済協力を取り付けるという大前提であるわけで、そのための策略をやっているわけだが、それが目に見えないで、ただ単に拉致問題が終結というミスリードが行われるようだと、私たちの被害者救出運動にとっては非常に大きなマイナスが生じてしまうことをちょっと危惧する感じだった。》

 …テレビのニュース番組に君臨し、大物政治家たちもぺこぺこせざるを得ない田原氏ですが、拉致被害者家族からはあっさり「北のメッセンジャー」と呼ばれていました。まあ田原氏は、そういう指摘を受けるリスク、マイナスも分かった上でああいった言動をとっているのだろうとは思いますが、実際どうなんでしょうね。あくまで自分は賢く、真実を見抜いていると考えているのかどうか。

 この日の拉致問題対策特命委員会では、安倍晋三前首相が委員会の顧問に就任することも報告されました。関係者によると、安倍氏は「これはやらないと。私の義務だから。(首相辞任では)拉致被害者家族たちをがっかりさせたし」と拉致問題への取り組みに強い意欲を示しているそうです。安倍氏の議員活動再開も徐々に本格化していきそうです。