注目の大阪府知事選は、与党系の無所属新人の橋下氏が、民主、社民、国民新党が推薦した熊谷氏をダブルスコアで下し、当選しました。自民党側は「大阪府民の良識が示された」(町村官房長官)と喜んでいますが、まあ実際は、自民党の候補が勝利したというより、橋本氏個人が勝ったという部分が大きい気もします。自民も公明も党本部推薦は出さなかったわけだし。

 とはいえ、ここで勝って今年中に予想される衆院選への弾みをつけたかった民主党にとり、この負け方が痛いのも事実でしょうね。特に、新テロ対策特別措置法の衆院本会議採決という重要な場面を、「大阪で選挙演説があるから」と欠席した小沢氏は、また批判される材料をつくったことになります。しかしまあ、この人は他人に何を言われようと反省することはないでしょうが。そこで、新聞各紙はどう報じているかと見てみました。

 まずは産経から。2面に「自民ひと息 民主『失策』響く」という見出しが出ています。ここでいう「失策」とは、「知名度の高い候補を与党に持っていかれたこと」だとし、やはり《小沢氏が新テロ対策特別措置法の衆院再決議の本会議を途中退席して選挙応援に出向き批判されたことについて、「中央のドタバタした印象が影響を与えた」(与党幹部)との指摘も出ている》とおとなしめに書いています。

 次に読売はとみると、3面に「民主、衆院選戦略に狂い」という見出しがありました。記事のトーンはよりストレートで、《小沢代表が「次期衆院選に直結する戦い」と公言していただけに、党内からは「ガソリンの暫定税率廃止を掲げて福田政権を解散・総選挙に追い込もうと意気込んでいたのに、出はなをくじかれた」(幹部)との声も出ている》《党内では、小沢氏が11日に行われた新テロ対策特別措置法の再議決を棄権したことについて「(敗因の)様々な理由のうちの一つと言えるかもしれない」(鳩山氏)との指摘がある》などと報じています。様々な理由のうちの一つ、ねえ。鳩山幹事長は最近、やんわりとながら小沢氏を批判する場面が多いように感じています。

 毎日はどうでしょうか。やはり2面に「挙党 民主に打撃」という見出しが躍っていました。毎日も詳しく書いています。《「勢いがそがれた。都市部をどうするか、真剣に考えないといけなくなった」民主党幹部は選挙戦を振り返り、まずは反省を口にした》《告示後、小沢氏は2回大阪入り。11日には新テロ対策特別措置法の採決を棄権してまで、新党日本の田中康夫代表と大阪市の商店街を練り歩き、無党派層へのアピールを狙った》《鳩山氏は27日夜、記者団に「(小沢氏の棄権が)全く影響がなかったかと言えば、(敗北の)理由の一つに挙げられるかもしれない」と語っており、ちぐはぐさも隠せない》…毎日は、「与党も勝利感薄く」とも書いていました。

 さて、朝日の扱いはというと、こちらは2、3面ではなく、34面(社会面)に「小沢民主、痛い敗北 総力戦 応援3度も実らず」という記事を掲載しています。記事は、自民党の二階総務会長が24日、「今日も国会は開会中。私どもは、重要な審議はすべてこなしてきた。会議をほったらかして応援に来る人とは違う」と小沢氏を皮肉ったエピソードを紹介しています。また、《総力戦での敗北に、本会議の途中退席が「知事選にもマイナスに作用した」(中堅議員)との不満もくすぶる。(中略)今後の小沢氏の求心力低下につながる芽を残した形だ》と小沢氏の求心力低下に言及しています。ただでねえ、今までにも小沢氏の求心力を低下させるような小沢氏自身の言動や選挙の敗北はたくさんありましたが、民主党はそれでもこの人に頼っているのですよねえ。

 また、細かいようですが、この記事には《(小沢氏の)告示後の大阪入りも3度を数える熱の入れようだった》とありました。毎日は2回と書いていましたが、どちらかが間違っているのか、数え方の違いなのかは分かりません。それだけ小沢氏がいつも隠密行動をとりたがり、担当記者もなかなか行動を把握できないということかもしれません。

 東京2面の「総力戦の民主に痛手 小沢氏の採決棄権影響?」という記事は、この求心力問題に関して《党内では、直ちに小沢氏の求心力が弱まったり、今後の国会対応を悲観する空気はないが、後味の悪さは否めない》と書き、求心力がこれで低下することはないとの観測を示しています。まあね…。

 一方、日経は見出しに求心力低下をとってきました。2面の「民主、国会攻防前に冷水 小沢氏 求心力低下も」 という記事です。リードから《執行部は「国会運営に影響はない」と強弁するが、党首批判が出ている小沢一郎代表の求心力にも影響しそうだ》と一歩踏み込んでいます。また、《今年に入ってからの小沢氏の行動には側近も首をかしげる場面が多かった。前国会の争点だったインド洋給油法の採決を棄権。与党から「本当は賛成なんじゃないのか」とやゆする声が出た》《小沢氏は選挙通を自任するが、そこまで入れ込んだ挙げ句の敗北》などとかなり厳しいトーンで書いています。このあたり、書き手である記者の個性が反映しているのかな、と感じました。

 …と、ここまで大阪府知事選の各紙の記事を読んでいて、ふと産経5面のフジテレビ報道2001の世論調査に目をやると、福田内閣の支持率は33.2%(不支持率56.4%、1月24日調査)とあるのに気付きました。報道2001の調査は、首都圏対象なので全国調査とはいつも微妙に数字が異なるのですが、正直なところ「随分下がったなあ。ついに来るべきときが来たかな」と感じました。

 世論調査と言っても、サンプル数は500人と少ないし、あまりあてにできないことは承知していますが、それでもずっと見ていると参考にはなると思っています。私の机の前には、昨年12月6日調査の同じ報道2001の切り抜きが張ってあり(なんでこんなに支持率が高いのだろうと不思議だったのでとってありました)、それを見ると内閣支持率は50.2%(不支持率42.4%)でした。7週間でちょうど17ポイント下がっています。

 気になったので1月に入ってからの報道2001の調査を確かめると、4日調査は38%、10日調査は36.8%、17日調査は39.6%でした。ずっと3割台ですが、この1週間で6.4ポイントと低下し、過去最低を記録していますね。誤差の大きい調査であることを織り込んでも、低下傾向は本物だろうと思います。福田政権に何かいい材料があるわけでもなく、低支持率の悩みを急に解決する秘策もないでしょうから、支持率2割台も見えてきたかなあと。

 各種調査で2割台がいくつも出てくるようになれば、今年は衆院選が予想されるだけに、自民、公明両党内は浮き足立ち、福田首相では選挙を戦えないという声が高まっていくでしょう。そうなると、もともと「絶対に福田氏じゃなきゃだめだ」という議員など自民党内にもいませんし、本気で福田政権を支えようという人もいないでしょうから、内閣総辞職、自民党総裁選開催、新首相選出…という流れも現実味を帯びてくるなあと、ふとそんなことを思った次第です。でも、ガソリン税の問題も株価急落も、電気・ガス料金値上げも年金問題も、みんな政権への重しになって、支持率の低下要因になっていくでしょうから、いろいろな動きが本当に顕在化してくるかもしれませんね。