本日は昨日の続きです。私はこれまでのエントリの中で、自民党内になぜこれだけ反発の強い人権擁護法案を推進しようとする人たちがいるのかという疑問に対する一つの答えとして、部落解放同盟からの要請という要因を指摘しています。それは、保守系議員会合での平沼赳夫氏の証言でも明らかですし、私自身が自民党の有力議員から直接聞いた体験談からも明確にそれを確認できました。

 それでは、解放同盟自体は人権擁護法案について、どのような考えを持っているのか。ちょっと古い資料ですが、部落解放・人権政策確立要求中央実行委員会と部落解放同盟中央本部が連名で昨年10月、衆参の全議員に送った「『人権侵害救済法』の早期制定にむけた要請書」の中から、気になった部分を紹介します。全文はけっこう長いので、勘弁してください。

 まず、要請書は、自民党人権問題調査会の太田誠一会長が繰り返し述べていることと同様(そっくり!)の論理で、人権擁護法の必要を主張しています。それは、この法律がないと諸外国に恥ずかしいという理屈です。

 《「人権擁護法案」提出先送りという事態は、国連や諸外国から指摘され続けている国内人権機関の創設をまたも引き延ばすこととなり、人権の面における後進国といわざるを得ません

 この理屈に対しては、党調査会でも「そんなことはない」という反論が相次いでいしまたね。日本が人権の後進国だとしたら、中国や北朝鮮は一体どうなるのか。また、欧米諸国が慰安婦問題などで日本を批判することに対しては、太田氏自身も相手の誤解ないし偏見であることは認めているようですし。また、国連や諸外国からの指摘という事実も、これは日本国内のサヨク勢力や人権団体が働きかけてそう仕向けているという部分も指摘されていますね。

 次に、人権擁護法案が特別調査のため「人権侵害が現に行われ、又は行われた疑いがあると認める場所に立ち入り、文書その他の物件を検査し、又は関係者に質問すること」「事件の関係者に出頭を求め、質問すること」「文書その他の提出を求め、文書その他の物件を留め置くこと」など強大な権限を与える人権委員会については、こう求めています。

 《人権委員会委員の定数を最低でも7人以上とし、常勤体制の強化を図るとともに、委員の多元性・多様性の確保、ジェンダーバランス現実の差別・人権侵害問題に精通した人材起用に配慮されたい》

 《「政府機関からの独立性」や「人権の総合性・発展性」という観点から、各省庁への総合的な総括・調整機能を有する内閣府の外局である「3条委員会」として設置されたい》

 男女双方から委員を起用しろという点について、わざわざ「ジェンダー」という言葉を遣っているのが私の趣味には合いません。それはともかく、現実の差別問題に精通した人材とは、解放同盟の関係者や協力関係にある学者などからの起用に暗に求めているのでしょうか。また、反対派の議員たちが問題視している「3条委員会」についても要望していますね。3条委員会とは、自らの名において行政府の意思を決定して外部に発することができる権限を持つ協力な組織で、国家公安委員会や公正取引委員会、中央労働委員会などがそれに当たります。どうして8条委員会(証券取引等監視委員会、中央教育審議会など)ではダメなのか。

 さて、では現場で働く人権擁護委員については何を希望しているか。要請書にはこうあります。多くの人が強く懸念している国籍条項の欠落に関しては、それでいい、いらないと言い切っています。これはなぜなのか…。

 《人権擁護委員の選出基準に関しては、「人権の保障に精通している者」で十分であり、国籍条項の挿入は不要としていただきたい

 また、《地方における人権委員会機能の実効性を確保するために、地方自治体や民間の人権NGOとの積極的な連携活動を行うように工夫と配慮をされたい》ともあります。この民間NGOが何を指すかというと、明示されていないだけでどうも解放同盟やその関連団体のことではないかと思えます。それは、次の要望からもうかがえます。

 《差別に対する糾弾など人権NGOが行う正当な人権活動に対する公権力からの不当な干渉を排除されたい

 《当事者団体の人権NGOが行う自主的且つ正当な活動に対して、公権力が不当に介入したり、妨害することは憲法違反に相当する不当行為であり絶対に許されないことに留意されたい》

 最近は、法務省や人権擁護法案推進派の議員らは、反対派議員を説得しようとして「解放同盟による糾弾会などをやめさせるためにも法案が必要だ」と説明していることは、前回のエントリでも触れました。でも、解放同盟側は法案ができても、「正当な人権活動」には介入させないと宣言しているわけですね。何のことやら。

 一方、要請書は《報道の自由や表現の自由に対する公権力からの不当な干渉につながる危険性があるため、メディア規制条項を削除されたい》《メディア関係の過剰取材や差別・人権侵犯報道などは、重要な問題であるが、メディア関係の自主的な取り組みと社会的な相互批判に委ねることが至当であることに特段の配慮をされたい》としています。メディアに随分と気を遣っている印象ですが、マスコミは味方につけておきたい、ということでしょうか。分かりませんが。

 部落解放同盟は、各国会議員にこういう要望をしているというお話でした。この問題を考える上で、何かの参考になれば幸いです。