さて、今回は昨夜読んで「うーむ」とうならされた漫画について紹介(宣伝)します。ホテルを舞台にした「コンシェルジュ」という漫画の第12巻がそれで、実はこの作品は昨年8月26日のエントリ「最近読んでみた漫画の認識の真っ当さについて」でも取り上げています。ただ、この巻に収録されている第73話「総裁選の裏側」が、あくまでエンターテインメントながら私にとって、とても得心がいく内容だったので、もう一度書いてみようかと思い立ちました。

     
   (c)藤栄道彦 いしぜきひでゆき/新潮社 COAMIX

 で、きょうは出版元の新潮社に電話して、中身の絵の部分をブログに掲載する許可もとりました。著作権の関係で難しいのではないかと思ったのですが、快く了承していただきありがとうございます。何事も引っ込み思案をしていないで、試しに言ってみるものですね。

 さて、下手な接写ですいませんが、題名の通り、これは昨年9月の自民党総裁選をテーマにした架空のお話です。まずは、麻生太郎氏をモデルにしたとみられる不破議員(顔は全然違うタイプですね)が、報道陣に囲まれているシーンからどうぞ。

   

 ここに出てくる任期半ばで退陣した「田辺首相」とは、安倍前首相のことですね。そして、記者が不破議員に「何もかも途中で放り出すことを『タナベする』なんて流行語まで生まれてるようで…」と話しかけています。これは、朝日新聞がコラムで流行らせようとした「アベする」という言葉(私が最も嫌いな言葉です)をもとにしたものでしょう。「アベする」は、朝日や東京新聞の後押しにもかかわらず当時も今も全く聞いたことがありませんし、逆にこの一件をきっかけに生まれた「アサヒる」という言葉は今も流通していますね。皮肉な話というか、正義は勝つというか。

   

 この記者の問いかけに対し、不破議員は「どこで流行ってるの。聞いたことないけど…」とつっけんどんに答え、焦りながら「あちこちで聞きます」と返答した記者をさらに「なんて雑誌?」と追及します。記者が返事に窮する姿が、私も記者の一人でありながらとても気持ちいいのはどうしてでしょうか。実際には、安倍氏の盟友である麻生氏に対し、記者がこういう会話をしかける場面はなかったろうと思いますが。

   

 「あんな下品な流行語でっちあげて個人を中傷しようなんて連中」…。いいセリフです。あの悪夢の参院選とその後の自民党総裁選前後にあったいろんな出来事、醜悪なメディアの現実が、こうして実名は登場しないまでも、漫画作品として記録にとどめられるというのは面白いなあと思います。この「コンシェルジュ」がどの程度人気のある作品なのかは知りませんが、まだまだ続き、たくさんの人が読めば、その人の記憶にはなにがしかの印象が残るでしょうし。

 次のシーンは、総裁選目前の帝都新聞が行った世論調査で、福田首相をモデルにしている添谷議員が、不破議員を大きく引き離して国民の期待を集めているという場面です。登場人物(主人公)が、この結果に疑問を示します。何か当時を思い出しますね。この帝都新聞とは、どう読んでも読売新聞をモデルにしているとしか思えません。

   

 調査結果に驚く女性に対し、ホテルの同僚が裏事情を説明します。ここに出てくる「上層部」とは、ずばりナベツネ氏のことでしょうね。世論調査で、そこまで極端な操作ができるとは私は思っていませんが、あくまでフィクションですからそこはさておき。総裁選前、確かに各種世論調査では福田氏に期待するという声が多かったのですが、そういう人たちは福田政権の現状についてどう考えているのでしょうか。裏切られたと思っているのか、それとも自らの不明に思いを致しているのか。

   

 この作品は、このほか例の「クーデター説」などについても言及していますが、まあ、これだけ宣伝すれば十分だと思うのでここらでやめます。本日、道を歩きながら「あとでこの作品についてブログでアップしよう。朝日と読売、ひいてはマスコミ全般に対する批判にもなっているな…」と考えていたところ、ばったり宮内庁担当時代に一緒だった読売の記者と数年ぶりに出会い、「ブログ読んでいるよ」と言われました。悪いこと(?)はできないなあと、観念した次第です。

 さて、ホテルつながりで思い出したので、ちょっと以前のことを書きます。2月22日に、赤坂プリンスホテル(グランドプリンスホテル赤坂)で安倍前首相と中国の唐国務委員の会談があったのですが、そのときの会場のテーブル写真がこれです。日本と中国の国旗が並んで飾られていますね。

   

 実はこのとき、最初は日の丸はカメラ側を向いておらず、反対側にしぼんだ形で垂れ下がっており、中国国旗ばかりが目立つ形になっていました。中国の報道陣も多数来ていましたし、そこで私がおせっかいとは知りつつ、ホテルマンに「きちんとこっちを向けて整えたらどうか」とお願いしたところ、ホテル側はだれとも分からない記者のいきなりの要請に嫌な顔一つせず協力してくれました。ありがとうございます。

 事後ブリーフによると、この会談で安倍氏は唐氏に対し、中国製ギョーザ中毒事件について「政府よりも、消費者がきちんと納得することが大事だ」と述べ、日中両政府間で政治決着を図ることは解決にならず、徹底的な真相解明を行うことが必要だとの考えを伝えました。今のところ、消費者が納得できるような状況には全然なっていませんが、日本のリーダーである福田首相はどう思っているのでしょうね。案外、何も考えていなかったりして。