外務省の記者クラブで国会中継(参院予算委)を見ていたら、自民党の山本一太氏によるチベット問題と胡錦濤国家主席訪日に関する質問に対し、福田首相が答弁する場面がありました。さて、親中派というよりも、頼る相手が中国しかいないと言われている福田氏がどう答えるかと注目してみたのですが、やはり、というか何というか、福田氏の言葉は中国様に気を遣い、慮るあまりに意味不明なものでした。山本氏と福田氏とのやりとりは以下の通りですが、何ですかね、これは。

 《山本氏 首相に聞くが、胡錦濤主席が来日し日本で日中首脳会談をやることは大変意義深いことであり、日中関係を進化させていくことにも必要なプロセスだ。ただ、首相が5月に胡錦濤国家主席を日本に迎えたときに、もしチベット情勢がなかなか沈静化しないということであれば、総理からも胡錦濤主席に対して、この問題について例えば当事者間の対話を促すとか、そういうことを主席に申し入れるというか、アドバイスする考えをもっているか

 

 福田首相 日中関係を先程来申し上げているように、どうやってこれから良い面をお互いに見つけて、そしてそれを伸ばしていくかの観点でおつきあいしていくということができるかどうかということが非常に大事だ。だから、そういう観点から、(※1)互いを非難するとかそういう関係ではない、もう少し前向きなかたちでこの関係を続けていくにはどうするかということは、お互いの首脳同士がよく考えているところだと思う。
 どんなにうまくいっていても問題はある。仲のいい、そしてまた非常に、例えば、夫婦だって仲良くなければいかんのだけどね、しかし、いろいろ問題ありますよね。朝から晩までというときもあるかもしれないが(福田氏ここで自分で笑う)、そういうような一体でなきゃいかんという関係だって、そんな問題があるんだから、だから国が違えば意見が食い違うのはあって当然だ。
 そして(※2)相手が、もし日本が間違っていることをしているというときには、例えば中国は日本ちょっと間違っているよと言ってくれるぐらいの関係、逆に日本が中国に対して、中国はこうしたらいいんじゃないのというようなことが言えるぐらいな関係ができれば最高だ。
 夫婦関係もなかなかそこまで言えなくて苦労しているところだが(会場笑)、そういう関係をつくるために、私は(※3)チベットの問題についても、率直な意見交換がもし必要ならばの話だが、必要ならば、そういうことを率直に言い合えるような関係にするべく努力をしてまいりたい。》

 …山本氏のごく当たり前の質問に対し、福田氏は話をこねくり回し、婉曲表現とたとえ話を重ねてはぐらかし、そして一体何を言っているか。読み取るのに苦労しますが、まず、(※1)の部分ではチベット問題でも何でも、中国を非難したくないと言いたいのでしょうね。さすがお友達の嫌がることはしないと宣言している人だけのことがあります。

 そして、この夫婦のたとえ話がまた分かりにくいのですが、(※2)の部分も常軌を逸しているように感じました。だって、中国は日本に対し「間違っている」と指摘する一方、日本は「こうしたらいい」と提案するような関係ができれば最高だと言っているわけですよね、これは。あくまで相手に注文をつけたり、文句をつけたりするのは中国側であり、日本ではないと福田氏は主張するのか。

 また、(※3)の部分では、チベット問題に関して率直な意見交換が必要であるかどうかについてまず留保をつけた上で、あくまで中国側にチベットの話をするとの言質は与えず、率直に言い合える関係をつくる努力をすると述べるだけで逃げています。これは中国側にとっては、福田氏はこれ以上はないほど楽な交渉相手と言えるでしょうね。いや、ただのお友達であって、交渉相手ですらないのでしたね。何せ東シナ海のガス田問題でも、交渉は事務方に任せて、自らは交渉しないという姿勢を貫いているそうですから。

 たとえお友達相手でも、ときには相手に耳の痛い忠告もするのが本当の友情でしょうが、福田氏にはそういう感覚はないようです。先日、某政府関係者から聞いた話では、福田氏は首相就任後も、中国要人らとの会談・会合などで旧知の駐日中国大使館員らを見つけると、いわゆる下っ端の一等書記官、二等書記官クラスの相手にまで「やあ、元気だった?」とにこやかに話しかけるそうです。中国相手だと、日本国を背負った首相という意識が抜け落ちてしまい、みんなお友達モードにスイッチが入ってしまうのでしょうか。

 この福田氏と、日銀総裁の「空席」が決定した19日夜に会食した側近の衛藤征士郎氏は、会食後、記者団に「首相は『俺に任せておけ』ということだ。自信満々に見える」と語りました。次期官房長官候補とも言われ、内閣改造があれば間違いなく入閣するとされる衛藤氏のセリフだけに、福田氏への追従も感じられますが、それにしても…。現在の政治は、もう笑うしかありません。

 ※追記(午後10時50分) 24日夜の福田首相ぶらさがりインタビューで、内閣支持率の下落に関するやりとりがありましたので、紹介します。以下の短いやりとりですが、福田氏も投げやりな感じです。まあ、そうでしょうね、触れられたくないのも分かります。でも私は、官房長官時代の相手の質問に真摯に回答しない、いい加減な調子が戻ってきたなとも思いました。当時の官邸担当記者は、こういう何を聞いてもまともに答えない、人をバカにしたような答弁を何百回と聞かされたものでした。

 記者 政権発足半年を目前に、総理の支持率が大幅に下落している。原因としては物事が何も進まない今の状況が考えられるが、総理はこの支持率をどう見ているか。

 福田氏
 まあ、これはあのー、そのデータとしてね、あるんですから、それはそれでいいんじゃないでしょうか。それだけ。