本日は予告通り、保守系の民間シンクタンク、国家基本問題研究所の「外国人参政権」シンポジウムを取材してきました。下の写真の右から、研究所理事長でジャーナリストの桜井よしこ氏、東京基督教大の西岡力教授、首都大学東京の鄭大均教授(元在日韓国人で日本に帰化)、ジャーナリストのサム・ジェームソン氏です。衆院第2議員会館の狭い会議室は、約160人の参加者で満席となり、立ち見の人もいました。

   

 国会議員も、私が気付いた範囲で無所属の平沼赳夫氏、自民党の島村宜伸氏、古屋圭司氏、下村博文氏、山谷えり子氏、萩生田光一氏、西川京子氏、岩屋毅氏、衛藤晟一氏、江藤拓氏、中川義雄氏、民主党の笠浩史氏、渡辺周氏、松原仁氏、蓮舫氏、河村たかし氏、松野頼久氏…と約40人ほど来ていました。ただ、その割にあまり報道関係者の姿は目立ちませんでした。

 シンポジウムでは、写真の4人がそれぞれの考えを述べたわけですが、その概要は国家基本問題研究所の「参政権行使は国籍取得が条件-特別永住者には特例帰化制度導入を」という提言にまとめられているので、まずはその提言を紹介します。以下の通りです。

 【提言】
 1.国政選挙、地方選挙を問わず、参政権行使は日本国籍者に限定されるべきである。
 2.昭和20年以前より引き続き日本に在留する者とその子孫である特別永住者への配慮は、外国人参政権を認めることではなく、特例帰化制度導入でなされるべきである。

 【基本的視点】
 ・地方選挙の争点には米軍基地問題など国家の将来に大きな影響を及ぼすものが含まれる。北朝鮮金正日政権や中国共産党の介入は許されない。
 ・最高裁も「地方公共団体が日本の統治機構の不可分の要素をなす」とし外国人参政権を否定している。
 ・韓国、EU諸国などの永住者への参政権付与は、日本と状況が大きく異なり、同一基準で議論できない。
 ・歴史的経緯を踏まえ、昭和20年以前から在留する在日コリアンに対して特別な法的地位(特別永住)が与えられている。社会保障の内外人平等も実現している。
 ・地方参政権要求の背景には、在日コリアンの外国人意識の希薄化がある。
 ・帰化をしてコリア系日本人として参政権を行使する道が自然であり、日本社会の多様化を進展させることにもつながる。
 ・現行の帰化制度は、特別永住者に一般外国人と同じ煩雑な手続きを求めている。

 …ここで言う「特例帰化制度」とは、日本において特別永住を認められている外国人が、帰化により日本国民としての権利を獲得し、義務と責任を果たそうと決断した場合、現行の煩雑な手続きを廃し、①本人確認(「本国戸籍謄本」等と「外国人登録済み証明書」提出)②帰化意思確認(「帰化許可申請書」と、法律を守り善良な国民となることを誓う「宣誓書」提出)-の2点をもって日本国籍取得を認める制度のことです。

 また、シンポジウムで語られたことの中から、気になったことと、重要だと思う点についていくつか抜き書きしたいと思います。とても全部は書ききれないので、あちこち端折ることをお許しください。まずは、鄭氏の率直な意見からどうぞ。私は十年ほど前に鄭氏の著書「日本(イルボン)のイメージ-韓国人の日本観」を読んで以来、鄭氏の指摘に関心を持っており、産経にコメントをしてもらったこともあります。

 鄭氏 朝日新聞に在日韓国人の中には参政権待望論があるという記事が載ったが、それは非常に大きな誤りであり、ミスリーディングだ。在日コリアンに待望論があるとしたら、それは参政権というより、品位ある形で日本国籍を取得する機会だと思う。ニューカマーではない、以前からいる在日は、1930年代に日本に来た。今はその孫の世代が中心であり、日本語を母語にして世界を眺めている。実は本国に対する帰属意識は極めて薄い。日本との関係で、自分が本物の外国人だと考える在日コリアンはほとんどいないと思う。ペーパー外国人的存在になっている。いわばアイデンティティーと国籍の間にずれがある。外国人参政権は、そういう不透明さを永続させることにつながる。そういうことを本気で望んでいる在日コリアンはほとんどいない。
 韓国民団が昨年11月7日に参政権を求める決起集会をやって、5000人が集まったと言っているが、実際は3000人ぐらいだろう。決死の動員をかけて集めたものだ。しかし、現在、一年間に帰化する在日コリアンは一万人になる。在日コリアンの期待、待望が参政権というのはかなり嘘っぱちの議論だ。民団は、自分たちが在日コリアンを代弁して語っているふうを装っているが、実際はほとんど代表しているとは思わない。在日コリアンと民団は、ほとんど何の関係もない。大部分は形式的に登録されているだけだ。それはいろいろな付き合いがあるから、動員されれば参加することはあっても、それ以上ではない。

 …これに対し、会場からは、「帰化した人が日本に対する忠誠心を持つとは限らないという見方がある」「日本社会を壊す目的で帰化を望む人もいる」「日本人となって政治家その他の要職について反日活動をしている例も実際にある」といった趣旨の懸念が示されました。これまで私のブログのコメント欄でも、同様に帰化要件の緩和は望ましくないのではないすという意見がたくさん表明されてきました。そのたびに私はだいたい、在日韓国人の三世、四世のアイデンティティーは日本人そのものと言ってよいのではないか、また、日本人自身にも反日活動を使命とし、外国勢力と内通しているような人はたくさんいるから、今更あまり気にしても仕方ないのではないかといった返事を書いてきました。きょうのシンポではどうだったかというと、次のようでした。

 桜井氏 確かに帰化したからと言って、日本に忠誠心を持ち、日本を愛する人ばかりではないだろう。しかし、日本人の中も、日本を愛している人ばかりではないと思う。それはしょうがないことだ。(日本人となって内部から日本を壊すなど)そんなことを怖れてはいけない。どうぞどうぞおやりください、私たちは論破してみせますよ、いつでも来いという気持ちを持たなければいけない。日本で生まれた日本人で、立派なメディアに務めている人が、反日の論説を実際に書いているということはいくらでもある。そういう人は日本人でも石を投げればあたるぐらいいる。

 鄭氏  今の在日コリアンは、与党系よりも野党系が多いというか、そういう傾向にあると思う。ただ、日本国籍を与えられた場合、どういう日本人として生きていくか。いろんな可能性があると思うが、今ここにいる日本人より高い比率で「はりきり型」の日本人が出てくると思う。少数は、日本批判を使命とするような人もいると思うが。

 西岡氏 在日の人たちの反日傾向が強いというのは、反日日本人に同化しているのではないか。日本社会が抱えてしまっている問題の反映として、そうなっているのではないか。在日の人たちを帰化させていけば、国内に反日勢力ができるという議論があるが、今でも、特別永住者は日本に住み続けている。特別永住者のままでも反日活動はできる。

 …3氏ともだいたい、私が素人考えで日頃思っていたことに近いことを言ってくれたので、私の意見もそんなに間違ってはいなかったのかなと、少しほっとしました。あと、衛藤参院議員から、今までの帰化要件の緩和でだいぶ帰化しやすくなったのに、なぜこれ以上の特例帰化制度が必要なのかという疑問が示されたのですが、これに対する回答も興味深いものでした。

 この3氏が異口同音で話したことは、「対外メッセージになる」ということでした。在日韓国・朝鮮人の存在とそれを反日活動に結びつける勢力とによって、日本で意識されている以上に、諸外国では「在日」が差別社会・日本のイメージをつくっているといい、そうではないということを発信するには、今までのなし崩し的な帰化手続きの運用改善・条件緩和ではなく、きちんと「こうだ」というメッセージを一度発すべきだというのです。これまでそういう視点でこの問題を見ていなかったのですが、国際情報戦に勝ち抜くためにも、確かにそうかもしれないと考えました。

 以上、メモができた範囲、時間が許す範囲で急ぎ書き留めました。この問題については、異論も含めていろいろな意見があることと思いますが、このエントリが少しでも何かを考える際のヒント、情報源となれば幸いです。今後も、この問題について何か動きがあればウオッチして報告するつもりです。