いよいよ政局の動きが本格化してきたなと感じる記事が、昨日の新聞各紙に載っていました。読売新聞は「平沼氏に連携呼びかけ」、日経新聞は「小沢氏、平沼氏に秋波」という見出しでミニ・ニュースの扱いでしたが、産経は3段見出しで「連携、新党構想も 小沢・平沼氏が会談」と踏み込んでいます。いずれも、郵政民営化法案に反対して自民党を離党し、無所属となった平沼元経済産業相が民主党の小沢代表と都内の日本料理屋と会談したという内容です。読売の記事にはこうありました。

 《同席した民主党の川上義博参院議員によると、(小沢氏が)平沼氏に新党結成を勧め、「民主党と手を取り合っていこう」と連携を呼び掛けたのに対し、平沼氏は明確には答えなかった。》

 また、日経は次のように書いています。これもおそらく、川上氏に取材したものと思われます。読売と微妙に言葉遣いが異なっていますが、意味はほぼ同じですね。

 《出席者によると、小沢氏は平沼氏に「一緒に手をつないでやろう」などと、次期衆院選での協力を呼び掛けたという。(中略)自民、民主両党に対抗する保守の第三極を目指す「平沼新党」の構想も話題に上った。》

 産経も川上氏に取材した内容をもとに記事にしていますが、ちょっとニュアンスが異なり、平沼氏が民主党との連携に前向きであるようにも読めます。果たして実際はどうなのでしょうか。下に引用した記事にある平沼氏の「やろう」が、単に新党結成だけを指すのか、民主党との連携まで含むのかというと、私は前者のにように思うのですが分かりません。川上氏が本来は秘密性が高いはずの会合内容について、記者にこれだけしゃべっているということは、そうやって宣伝した方が民主党にとって得だと考えたのでしょうが、それだけにどこまで正確なものであるかも分かりませんし。ともあれ、産経はこう伝えています。

 《川上氏が「『平沼新党』をつくり民主党と新しい政治、新しい日本をつくろう」と呼びかけたところ、平沼氏は「やろう」と応じ、小沢氏も「ぜひそうしてもらいたい」と語ったという。》

 さて、では小沢氏は平沼氏と手を携えて何をやりたいというのでしょうか。まさか小沢氏が主張している外国人参政権の実現を一緒にやろうというわけではあるまいし、政策的には、郵政民営化に反対するぐらいしか共通点が咄嗟には思いつきません。まあ、選挙のためには共産党とも手を結ぶ小沢氏ですから、とにかく「数」を集めたいのかもしれませんし、日教組や自治労と密接になりすぎてすっかり定着してきた「小沢氏=サヨク」というイメージ、立ち位置を微妙に修正したいのかもしれません。

 平沼氏は小沢氏の呼びかけに言質は与えなかったようですが、平沼氏としても、将来に明確な展望はなく、いろいろな可能性を模索しているのでしょう。でもまあ、会談の同席者が北朝鮮に近いとされる川上氏だというのも、なんだかなあ。話がとたんにしょぼく感じられるわけですが、それも無理がないぐらい政界には本当に人材がいません。ゆめゆめ、どこからか万能のヒーローのような政治家が現れて国を救ってくれるなんて甘いことを考えてはいけないと思います。

 ただ、いずれにしろ、福田政権はもう長くはない一方、このまま座視していては国会の停滞はいつまでもどこまでも続くという状況の中で、次期衆院選をにらんだいろいろな動きがここにきて顕在化しつつあるように感じます。こういう動きは今までも水面下ではずっとあったわけですが、隠しようもなく表に出てきたというか、そろそろ各自が発信し始めたというか。小沢氏だけでなく、自民党側からも今後は平沼氏にいろいろと働きかけがあるだろうと思います。で、私も、今朝のフジサンケイビジネスアイに、こんなコラムを書いています。

 《小泉純一郎元首相による平成17年の郵政解散に反対して離党、無所属となった平沼赳夫元経済産業相による新党結成が、ここにきて現実味を増している。周囲がじれったくなるほど慎重な一面もある平沼氏だが、自民、民主両党による「バカとアホの絡み合い」(国民新党の亀井静香代表代行)とさえ呼ばれる国会のありさまに、とうとう決起する腹を決めたようだ。
 「平沼君は、衆院解散前に新党をつくるよ。今回は間違いない」
 こう語るのは、かつて参院のドンとして平沼氏も所属した自民党村上派を率いた村上正邦元労相だ。村上氏は、KSD事件で受託収賄罪に問われ、最高裁で実刑判決が確定、近く収監されるが、つい最近も平沼氏と新党結成について話し合っている。
 村上氏はこれまでもたびたび、平沼氏に保守勢力を糾合する新党結成を呼びかけてきた。その際、平沼氏はいつも聞き役に回っていたが、今回初めて「分かりました。やります」と答えたのだという。
 具体的には、郵政選挙で落選した元国会議員や地方議員、国政に志を持つ各界の有為な人物を集め、新党を結成した上で次期衆院選に臨む考えだ。
 平沼氏は自民党の安倍晋三前首相、麻生太郎前幹事長、中川昭一元政調会長らに近く、拉致議連会長としての活動を通じ民主党や無所属の保守系議員にも影響力を持つだけに、新党は今後の政局の「台風の目」となる可能性もある。現在、福田康夫首相(自民党総裁)、民主党の小沢一郎代表ともに党内のリベラル・左派勢力を重用し、保守派が求める政策に背を向けているだけになおさらだ。
 村上氏は平沼氏に「国民新党のようにキャスティング・ボートを握ろうなんて小さなことは考えず、自分が主役となるつもりでがむしゃらにやれ」とアドバイスしたという。これに呼応するように、平沼氏は雑誌「月刊日本」5月号のインタビューで、次のように意気込みを語っている。
 「拙速は避けなければならないが、解散が近づき、新党を求める声が大きくなれば、私は解散前に新党を結党する心積もりだ」(喜雀)》

 …この原稿は25日に書いたものですが、コラムは事前出稿なので、ニュース原稿とは違って掲載までには少し時間がかかり、きょうとなりました。このコラムはおそらくネットでは配信されないので、ここで紹介させてもらったというわけです。

 記事やコラムは、趣旨を簡潔に絞らないと何が言いたいのか分からなくなってしまうので、このコラムは話を少し単純化していますが、まあ決断が早い方ではない平沼氏も、ようやく腹を固めてきており、それを取り込もうという動きもまた出ているということでしょう。ただ、簡単にこれで保守理念に基づく清新な政党が生まれ、自民、民主以外の投票の受け皿ができると喜ぶにはまだ早いと思います。

 新党構想に対しては、小沢氏が早速こなをかけたように、自民、民主両党からも、またそれぞれさまざまな思惑と選挙区事情を持つ個々の議員(候補)からも、いろいろな接触、働きかけ、恫喝、哀願、排斥…などが次々に押し寄せるでしょうから、新党はできたものの、結局、よく方向性が分からない自民か民主の補完勢力が誕生しただけ、ということもありえます。また、何度も書いてきたように、保守勢力はある程度結集したものの、発言力も影響力も乏しい小数政党ができただけに終わり、帰って保守派が減った自民、民主両党の左傾化が強まったただけということだってあり得ますね。

 すべてはこれからなので、あまり期待もせず、かといって最初から冷たく突き放すこともせず、今後の展開を注視していきたいと思います。いずれにしても、今後の政局で福田氏がメインプレーヤーになることはないでしょう。ただでさえ薄い存在感が、ますます希薄になっていくのかなと見ています。