今朝の産経の1面トップの記事は、例の揮発油税の暫定税率などを担保する歳入法関連法の成立と、その余波をシミュレーションした記事でしたが、その中で、次のような部分が目を引きます。極論すれば、政治家の動きで政局にからまないものはないとも言えるので、記事は「福田首相への牽制」という部分に着目していますね。ただ、それも当然あるにしろ、この会合自体、非常に価値があるものだったと思います。チベットの件に関しては一連の騒ぎで国民の関心も高まってきたと思いますが、このシンポで語られたウイグルに関してはまだまだ知られていないと思うので、何かの参考になればと思います。まずは記事の関連部分を再掲します。

 《民主党若手が「ガソリン値上げ阻止」と書いたプラカードを手に続々と国会に集結した30日午前。国会横の憲政記念館では、自民党の中川昭一元政調会長が主宰する「真・保守政策研究会」が中国の人権状況を考えるシンポジウムを開いていた。
 テンジン・テトン・チベット亡命政府元主席相「中国によるチベット弾圧は日増しに強まり、ラサの火葬場には毎日のようにトラックでチベット人の遺体が運び込まれている」
 チベット関係者らが次々に窮状を訴える中、突如どよめきが起きた。麻生太郎前幹事長が姿を現したからだった。少し遅れて再びどよめいた。今度は安倍晋三前首相だった。
  5月6日に中国の胡錦濤国家主席の来日を控えて、2人がそろい踏みでシンポジウムに出席したことは、中国との融和路線を続ける福田康夫首相への強烈な牽制(けんせい)だといえる。》

 …私の昨日のエントリの内容とも無関係ではなく、政界でのいろいろな動きが隠しようもなく水面下から水面上に飛び出てきたことの表れでもあると思います。私も当然、関係者から取材に来るように誘われていたのですが、昨日は夕刊デスク当番で午後二時までは会社から離れられず、現場には行けませんでした。そこで例によって、この手の会合取材で指名されることの多い後輩の原川記者の取材メモをもとに、出席者の発言要旨を紹介したいと思います。会合は午前
10時から約2時間で、国会議員30人、全体で300人ほどが参加したそうです。

 

 中川昭一氏こういう状況では本当にきちっとしたオリンピックが、本当にスポーツの祭典として明るく楽しくできるか、世界が危惧しているし、私どももまったく同じ認識だ。今日は、世界からお集まりいただいた専門家のお話をきき、皆さんと理解し、統一的な認識を持ってやっていきたい。なお、公平を期すために中華人民共和国在日本大使館にも是非ご出席をとお願いしたが、欠席するということで大変残念だ

 

 テンジン・テトン氏(元チベット亡命政府主席大臣兼外務大臣):国内外の人にチベット人の勇気と、チベット人が苦境に立っていることについて知ってもらいたい。チベット人は平和裡に自分たちの自治権を取り戻したいと思っている。チベットの現場のさまざまな状況は今や携帯電話で入手できる。中国側が15人の犠牲者が出たと発表しているところで、実際には150人ぐらいが殺された。また、捕まった人に拷問がなされていると聞いている。サンフランシスコからこちらに向かう際に、ニューヨークの友人から電話があった。その友人が得た情報だと、「ラサの火葬場に中国側がトラックでチベット人を毎日のように運んでいる、どうしたらいいか」ということだった。

 

 ドルクン・エイサ氏(世界ウイグル会議事務局長):中国は新彊ウイグル自治区と言っているが、本当は東トルキスタン。1949年に中国になってから、侵略された。平和的手段で訴えているウイグル人は、中国に暴力的手段で鎮圧されてきた。特に最近中国は、ウイグルの民族、文化そのものを抹殺しようと、いろいろな政策を打ち出している。ウイグルで自治の権利を何一つ実感したことはない。中国側は、いろいろなレッテルを貼って、弾圧をしてきたが、9・11以降はテロのレッテルを貼って弾圧を強めている。それまでは分裂主義者などのレッテルだったが、9・11以降はウイグルの人はイスラム教だというだけで、テロというレッテルを貼られている。中国は五輪開催を申請したときに、人権の改善を約束したが、オリンピックがウイグルにこれまでに例のない悲劇をもたらしている。チベットの事件の後に、中国はウイグルでも軍事管制を敷いている。

 3月23、24日、東トルキスタンで女性たちが平和的なデモを行い、政治犯の釈放などを求めたが、それも暴力的に鎮圧され、700人以上の女性が拘束されている。加えて各地で軍事管制が敷かれ、(当局者が)一軒一軒自宅にやってきて、「この人が何か起こすんじゃないか」という疑いだけで、拘束する。何一つ証拠もない人たちを勝手に自ら疑いをつくって若い人を中心に拘束している。

 1997年に民主化を求める平和的デモが行われた際、現地で300人以上の若者が銃殺された今年もその追悼集会が開かれたが、そこに警察がやってきて、18人を現場で銃殺した。中国は、オリンピック開催に合わせてテロが起こってほしくて仕方がない(それを口実に民族弾圧を強めるため)。そのため、自ら情報を出して、その情報を自ら否定したりしている(でっち上げの類をやっているの意)。われわれ世界ウイグル会議のラビア・カーディルが、代表に就任した次の日、中国は彼女の二人の息子をそれぞれ9年、7年の実刑にした。中国は(ウイグル活動家らを)テロに見せかけようとしているが、国際社会では受け入れられない。

 ウイグルでは幼稚園からウイグルの言葉を使ってはいけない。ウイグルの大学教授も、中国語で教えないといけない。ウイグルの町並みも破壊され、中国化している。ウイグルの本は見つかったら燃やされてしまうウイグルの人たちは自分たちの歴史を読むことができない。独りっ子政策も徹底され、もし二番目、三番目の子供を妊娠していることがばれると、出産一、二か月前でも強制的に堕胎させられる。それで子供も母親も両方死んだ例はたくさんある。ウイグル自治区の代表は、「独りっ子政策により(本来生まれていた)300万人の子供が生まれなかった。独りっ子政策は成功した」と発言した。最近は、1525歳の女性が強制的に内陸部に移住させられている。東トルキスタンでは46回原爆実験が行われ、死亡したのは20万人に上る。

 

 ペマ・ギャルポ氏:世界でも先進国の中でいまだにダライラマ法王と会っていないのは日本の首相ぐらい。オリンピックが終わってもチベット問題は終わらない。できれば有識者や国会議員で100人委員会をつくっているが、日本でもつくってもらいたい。胡錦涛はダライラマと一応対話をすると発表しているが、残念ながらこれは一時的なごまかしに過ぎない。今回の話し合いは根本的な問題は話さないそうだ。話し合いのための話で終わる。8000万人を殺した毛沢東の肖像画の前で、世界の指導者が真面目な顔をしてならんで、健全な世界の選手たちが行進したら、次の子孫に対する恥だ。

 中華人民共和国にはパンチェン・ラマをはじめとする人たちの釈放を求めたい。また、中国人の政治犯を釈放することがオリンピック開催を相応しいことを証明するために必要だ。自由のない真の自治はありえない。中華人民共和国の名のもとで、今この瞬間にも弾圧され、拷問されている。

 

 水谷尚子・中央大講師:ウイグルの情報は中国当局が発表するものか、亡命政府が発表するものに限られているが、日本のマスコミは、中国当局の発表をそのまま流すことが多い。亡命者にも取材をしてもらいたい。中国は(日本人らの)イスラムに対する無知を利用して、情報を吹き込んでいる。国会議員の先生にお願いしたいのは、日本は仲介的な役割を果たしてほしい。政治的弾圧を受けた人を受け入れてもらいたい。

 

 寺中誠氏(アムネスティ・インターナショナル日本事務局長):中国はオリンピック開催に向け人権状況の改善を約束したが、一切守られておらず、オリンピックを利用して、人権弾圧を強めている。中国が発信を止めようとして情報は、国家機密ではない。そうした国家機密でない情報までも発信させないこと自体、近代国家としてあるまじき行為であるだけでなく、世界の平和にとっても脅威となる。

 

 櫻井よしこ氏(ジャーナリスト):オリンピック開催国として人権状況を改善すると言ったのに、(この状態は)国際社会に対する背信であり、五輪に対する侮辱だ。チベット、ウイグルの文明の否定、戦後アメリカによって日本文明を否定されたわれわれだからこそ見過ごすことは許されない。
 中国はスポーツと政治は切り離すべきだと言っているが、歴史を振り返ると中国こそが五輪を政治に利用してきた。中国はメルボルンやモスクワオリンピックをボイコットした。日本が本当に大国としてアジアの尊敬を集め、世界に範を示したいと望むのなら、私たちの持てる最大の武器を活用してほしい。日本の持てる武器は武力ではない。日本の持てる武器は価値観を大事にすることだ。まさに価値観外交を今こそ展開していただきたい。民主主義と自由と人権と法の支配、それを全面に押し出すことによって、チベットを助け、ウイグルの人々を助け、そして世界の多くの苦しんでいる人々を助けることによって日本が世界のリーダーたるべき道を切り開いていかなければならないと思う。それこそが日本の力である。
 従って、5月6日に来日する中国国家主席の胡錦涛さんを心から歓迎するためにも、北京五輪に対して我が国政府は一言言わなければならないと思います。開会式は政治のセレモニーそのものです。スポーツとは関係のない政治そのものでありますから、私は福田総理は開会式に出席なさるべきではないと申しあげたい(拍手)。出席なさるにしても、チベット問題、ウイグル問題、人権問題に著しい改善を示していただきたいということを断固として申しあげていただきたい。それが実施された段階でなら、北京五輪も開会式も喜んで前向きに検討します、とおっしゃっていただきたい。

 

 水間政憲氏(ジャーナリスト):(聖火リレーの際に)地方議員の会のメンバーとして私も長野に行った。善光寺の山門からチベットのトーチを持って整然と行進していた。整然と歩道の脇を二列で歩いていたら、突然、大きい旗で、進行方向を隠され、先頭の人がよけようとしたら、アルミの竿でガツン(と殴られ)と頭から血流して、これは警察がちゃんと被害届けを受けている。一人は眼鏡を割られた。私もトーチを持っていたんで、奪い取られそうになって、そうしたら警察が3人ぐらい間に入って中国人を抑えつけたんですね。そうしたら警察三人に対して旗竿で殴る蹴る。もうぼこぼこにしてましたよ、警察に対して。私は花壇の上に避難していた。少し落ち着いて降りたら、中国の若い女の子に背中ドツンと蹴られて、同行取材していた北海道新聞の記者もいるんですけど、全然関係ないところで、3回ぐらいどつかれたと、かんかんになって怒っていた。
 フリーチベットと叫んでいた日本人がたくさんいましたが、あと十年、これがこのままの形で、紅衛兵の打ち壊しみないなのが、あれが厳然と日本の日本の法治国家の中で行われた現状を見るにつけ、後10年経ったらわれわれは「フリー・ジャパン」と叫ぶような状況になるというのが、明らかに原体験として経験してまいりました。非道い状態です。大きい旗で隠してマスコミが見えないように、通路も見えないようにして、その10メートルぐらいの中で暴行を働くんですよ。もうめちゃめちゃでしたよ。それの一部状況が月曜日のとくダネ!で流していたが、あれがわれわれが殴られている状況です。フジテレビはその証拠になるような映像を持っているのでね、前後の状況も含めて。(後略)フリー・ジャパンの状態にならないように政治家の先生よろしくお願いします。

 

 戸井田徹衆院議員:自分たちで現場で何が起こったのを見るのは大事。国会議員も本を読んで分かった気になるのはだめで、市民の人の声を直接聞くべきだ。チベットウイグル勉強する常設の会をこの会でつくってほしい

 

 ペマ氏:長野で捕まったチベット人は、フランスでも抗議活動をしたということで、30万円の罰金を受けたらしい。日本の法律を破るのはだめだが、フランスのことまで加算されるのは主権国家としておかしい。事実関係を調べていただきたい。

 

 稲田朋美衆院議員:自民党の外交部会でチベット問題を取り上げてもらったが、人権問題は国際法上の問題だが、チベットの地位については内政干渉になるので、コメントしないのが政府の立場。しかし、私は人権問題の根本にチベットの地位の問題があると思う。何も理由がなくて、今の人権侵害が起きているはずがない。日本が常任理事国入りを求めている国であるならば、チベットの人が民族自決に基づいて真の自治を求めていることについてもきちんと日本国政府として発言して欲しいと思う。

 

 平沼赳夫衆院議員:(長野市の聖火リレーの件は)私のところもブログが入った。(ホームページに情報が書き込まれているの意味)。「日本人が警官の前で中国人に殴られている。現行犯で逮捕してくれと頼んでも日本の警官は見て見ぬふりをして、とにかく騒動を起こしたくないのだということで、逃げを打っている。櫻井さんが出した「異形の大国中国」という本を読むと、中川昭一さんが経産大臣のときに東シナ海のガス田に対して日本もしっかりしなきゃいかんということで、いろいろ手を打たれた。しかし、中国は顔では微笑しているが、実際は4つのガス田に手を打って既成事実化している。先ほどのお話しの中にも、「フリー・チベット」じゃなくて、「フリー・ジャパン」を10年以内にわれわれは言わざるを得ないという話があったが、本を読むとまさにそういう気持ちがしている。今日のお話を聞いて、われわれも日本人しっかりしろということで、対処していかなければいけないと思っている。今日は国会議員の皆様方も沢山ご参画いたしました。気を一つにしばって頑張っていかねばならないと思っているのでよろしくお願いをいたします。》

 
 …非常に生々しい報告の数々です。新聞では、ウイグルでの弾圧の実態など、なかなか検証が難しいことはそのまま載せにくいのですが、その点、ブログは便利ですね。日本は中国の隣から引っ越しようがないし、ただ正面から敵対したり、非難したりするだけではなく、戦略的に対峙していかないといけないと考えますが、それにしても相手の正体を知り、その弱点・問題点を正確に把握した上での話ですね。現在、世界が注目しているのはチベットですが、それにウイグルの問題が加われば、今度は今までは静観してきたイスラム圏もより中国に対して厳しい視線を向けてくるかもしれません。

 日本一国で、人口が10倍もあり、世界がその市場を大切にし(幻想も含めてですが)、多数の核ミサイルを保有する専制国家、中国をどうこうするのは困難ですが、潜在的な日本の仲間、友邦はたくさんあるのだろうと思います。問題は、そうした相手を日本が大事にし、きちんと向き合えるかですが…。