このところ、北朝鮮との実務者協議と制裁措置の一部緩和、東シナ海のガス田問題の日中合意など外交案件が多いので、外務省担当の私はバタバタしていて、ここで報告したいことがいくつかたまり、消化不良を起こしています。ブログ書きに充てる時間が十分にとれないので、本日は、短いエントリでご勘弁ください。

 ちょっと前の話になりますが、17日の産経政治面のミニ・ニュース欄に、「安倍氏、世界ウイグル会議副総裁と会談」という本当に小さな記事が載ったのにお気づきでしょうか。《安倍晋三前首相は16日、都内のホテルで、来日中の世界ウイグル会議副総裁、セイト・トムチュルク氏と会談した。同会議は中国・新彊ウイグル自治区から世界各国に亡命したウイグル人とその子孫らでつくる国際組織。トムチュルク氏は、トルコやカザフスタンなど中央アジア諸国にいるウイグル人の若者の日本への留学受け入れを要請、安倍氏は「今は政府にいないので約束はできないが協力したい」と応じた》というものです。下の写真がトムチュルク氏(44)です。

     

 私の書いた元記事には、後段として《また、トムチュルク氏は東京大に留学中の平成10年に、中国に一時帰国して逮捕されたウイグル人のトフティ・テュニアズさんについて、安倍前首相が5月の胡錦濤・中国国家主席との朝食会で言及したことに感謝を表明した。安倍氏は朝食会で、「彼の家族は日本にいる。無事釈放されることを希望する」と指摘し、胡主席から「しっかりした法執行が行われているかどうか調べる」との答えを引き出していた。》とあったのですが、この部分はスペースの関係で削られました。本当に新聞紙面は狭いのです。

 トムチュルク氏自身は、アフガニスタンに生まれ、現在はトルコで医者をしているそうですが、中国・新彊ウイグル自治区には「会ったことのない兄弟がいる」そうです。トルコ政府、国民にも、ウイグル人のおかれた状況を訴えているということでした。

 それで、この短い記事を少し補足すると、トムチュルク氏は日本に、留学生受け入れのほか亡命申請についても受け入れてほしいと要請していました。これに対し、安倍氏は「政治亡命は日本政府は受け入れていないので、根本的に検討しないといけない。大きなハードルがあるが、私は基本的に政治亡命は受け入れるべきだと考えている。ただ、大きな政策変更となるので時間はかかるだろう」と答えていました。

 あと、トフティ・テュニアズ氏に関しては、安倍氏が「きちんとフォローするよう外務省にも指示してある。胡錦濤主席も『調査する』と答えたし、向こうもいずれ(回答を)言ってくると思う」との見通しを示していました。

 また、安倍氏が新彊ウイグル自治区において実際、「自治」はどの程度認められているかと問うと、トムチュルク氏は「ただの形にすぎない。いずれウイグル人を抹消していくための形にしかすぎない。かつて人口の2%しかいなかった漢民族が、いまや(地域によっては)人口の70%を占めている。ウイグル人には何の権利もない」と話していました。

 安倍氏が、米国でのウイグル問題への関心はどうかと聞くと、トムチュルク氏は「たくさんの議員が関心を持ってくれている。米国の新聞、雑誌も連日のように取り上げている。5月22日には、ウイグルの人権状況について中国に改善を求める決議案も出た」と説明していました。この決議案とは、米上院外交委員会に提出されたもので、中国当局がウイグルの民族文化や言語、宗教の自由などを抑圧し、漢民族移住政策によってウイグルの民族アイデンティティーの維持が困難になっていることなどを非難するものです。

 米国はおせっかいでもあるし、日本の歴史問題に関しては勘違いと偏見に基づきとんでもないことも言ってきますが、こういう決議案を見ると、日本の国会とは随分違うなあと素直に感じますね。拉致という自国民に対する人権侵害に対してすら、長年にわたって知らない顔を続けてきたのが日本であり、日本の国会なのですから。これまでの経緯はともかく、せめてこれからは、国会議員が拉致被害者と家族を見捨てるようなことが決してないよう、監視していきたいと思います。それは国家としても、一人の人間としても、決して許されることではありませんね。

     

 国会近くの道路の中央分離帯に、ねじ花が咲いていました。とても可憐で、でもたくましく、私が好きな花の一つです。それでは、今回はあっさりとした内容となりましたがここまでで。