大分県の教員採用汚職問題が連日、報道されています。この問題では、採用時における金銭のやりとりのほか、不正な昇任についても注目されていますね。この件について産経は10日付朝刊の社会面で「教委と教組 長年の癒着」という記事を掲載していて、それには「地元議員によると、数年前、組合が教員の異動先を事前に把握していたこともあった」と書いてありました。ここまで読んでいただければ、私が何について書きたいかもう分かってもらえることでしょう。そう、県教組の組織率65%の大分よりはるかに組合支配が徹底している県教組の組織率95%の山梨県の事例についてです。

 

 山梨県の小中学校の教員人事の場合は、教職員組合がかかわっているなんてものではありません。組合が事実上、人事の決定権を握っているのです。平成16年の冬、私のインタビューに実名で応じてくれた山梨県の小学校教員、高村基貴さんは当時、その実態を赤裸々に語ってくれました。本日は、その証言を紹介しようと思います。

 

 高村氏によると、教員が校長を通じて県教委に提出する「異動希望調書」には計6校の異動希望先を記入する欄があり、そのうち3校は「自発」と呼ばれ、本人が自分の意思で配属を希望する学校を書きます。残りの3校は「組織上」と呼ばれ、希望が実現しない代替候補として、あえて希望していない学校を記入するという仕組みです。さて、ここからが問題です。山梨県では、この異動希望調書は県教委だけではなく、山梨県教職員組合にも同時に提出しなければならないのです。調書の原本は校長に、そのコピーは各学校内に組織されている「分会」の長に提出するのが長年の慣習であり、事実上の義務だと言います。

 

 校長は、調書を市町村教委、県教委に送り、分会長はコピーを山教組地域支部の書記長に提出します。そして、県教委の人事担当の管理主事と、山教組支部書記長が異動先をどこにするか話し合うというのです。その際、支部書記長は通常の組合活動のほか、選挙資金集めなど選挙活動に熱心かどうかを査定し、熱心な組合員の希望を優先するよう県教委側と交渉し、働きかけることが続けられてきそうです。高村氏は次のように指摘しました。

 

 「希望しない『組織上』の3校は、自宅から遠い勤務先などを書かざるを得ない。そこに異動させられて、県人事委員会に(不利益処分の取り消しを)訴えても、調書に記入したことを理由に、不当人事にならない仕組みになっている。逆らうと、『転出』とだけ辞令が出て、受け入れ先がないという嫌がらせが行わせれたこともあった」

 

 「一般教員の人事は山教組支部書記長の采配で決まる。組合が推薦しない限り、教頭にはなれない。このことは山梨では暗黙の了解になっている。山教組役員が県教委の幹部になったり、教頭、校長に優先的に登用される。下手に批判すると県教委に筒抜けになるから、だれも大きな声ではいえない。支部書記長も誰かの指示を受けているはずで、もっと大きな力が働いていると思う」

 

 …さて、いかがでしょうか。もう呆れるしかありませんね。高村氏はこの人事の件のほかにも、選挙活動については「山教組の各支部書記長が指示して教員が電話作戦に動員された。山教組の各支部から学校のファクスに集会への動員指示などが入る。学校運営にも支障が出ている。選挙活動は民主党の輿石東氏のときだけではなく、(同じく日教組出身で民主党の)那谷屋正義参院議員のための活動も行った。選挙が終わると、関係書類は全部廃棄する。毎年末、輿石氏の顔写真入りポスターを学校に送ってくるので職員室に張り出す学校もある」と証言してくれました。

 

 それで、高村氏がかつて甲府市内の小学校に勤務していたときには、輿石氏が授業に中に学校訪問を行い、授業を中断させて教員を集め、「私の選挙をよろしく」とあいさつしたこともあったと言います。ウソのような本当の話ですが、これが事実である証拠に、少し古いのですが、平成元年6月の甲府市議会の議事録をここに掲載し、多くの人に読んでもらいたいと思います。こんな人が今や民主党参院議員会長として参院のドンとなり、自分で「私の政治信条は、ぶれない、逃げない、ウソつかないだ」などと言っているのですから、世も末です。

 

 《加藤裕議員 (前略)次に、去る5月19日に「山梨の教育を憂うる退職教師の会」、父母が県教育委員会に対して申し入れた教育現場で行われている違法な選挙の事前運動について質問をいたします。

 この申し入れは、山梨県教職員組合を中心として、校長会、教頭会などのいわゆる教育三者なるものが、衆議院候補に輿石東山教組委員長を組織内候補として機関決定して以来、教育現場を利用してさまざまな事前運動が進められており、これらについて退職教師や父母から強い批判の声が上がっているというものであります。

 その内容は、教員の勤務中に輿石東氏が労組役員を同行して学校を回り、授業を中断させて、子供たちに自習をさせ、教員を職員室に集め、教頭、分会長に「選挙を頑張ろう」と言わせること、候補者自身もあいさつをすること、在住者会という名目で選挙対策の会議を学校で行うということ、公共施設である職員室や校舎内に候補の選挙ポスターを掲示することなどです。特に授業を15分から20分も中断させて、教員を職員室に集めることについては、父兄から子供や教育を犠牲にするものとして強い怒りの声が上がっています。

 甲府市内の小中学校においても、私の調査によりますと、ある学校では朝の会で教頭が「きょうは輿石東氏がお見えになるので、たくさん集まってください」と述べ、3校時目の終了15分前ごろにチャイム3回の合図で教員を職員室に集め、20分休みの半分まで食い込んだ。来ない人には教室へ電話をかけた。

 また、ある学校では、1時間目の授業中、元県議も同行し、全員と握手し、「頑張ってください」という教員の名前入りの色紙を手渡した。この学校で来ない人は組合の役員が教室まで呼びに行っているありさまです。このようなことが堂々と行われているわけです。

 教職員とその関係団体の役割は、憲法、教育基本法に基づいて教育を行うものであり、教育基本法の第8条は、良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならないとしながらも、法律に定める学校は、特定の政党を支持し、またこれに反対するための政治教育、その他政治活動をしてはならないと述べています。このようなことが公然とやられていることは、法律に違反していることはもちろんのこと、民主的な教育にとっても大きな障害になることは言うまでもありません。

 そこで質問をいたしますが、こうしたことが行われる前の去る4月7日、県教育委員会は、市町村教育委員会に対して「教職員の綱紀の保持について」という通知を出し、その中で参議院選挙について違法な事前運動がないように指示をしていますが、この通知に対して教育委員会はどのように対処したのか、明らかにしていただきたいと考えます。

 

 浅川紫朗教育長 (前略)今回の選挙に関連して、県教育委員会からの教職員の綱紀の保持についての通知に対する教育委員会の対応についてのお尋ねでございますが、先ほどのご指摘にもございましたように、教職員の綱紀保持につきましては、4月7日付によりまして、県教育委員会から通知がございました。直ちに文書をもって各学校に通知をいたしました。さらに校長会等の機会を通して教育職員としての関係法令でございます地方公務員法、教育公務員特例法、公職選挙法、関係法令がございますが、その中の制限事項、禁止事項に違反することのないよう指導しているところでございます。

 さらに、県教育委員会を通じて文部省から6月3日付をもって教職員の選挙運動の禁止等についての通知がございました。教育の政治的中立性や信頼を損なうことのないよう、服務規律の確保について各学校にその周知徹底を図るとともに、今後も適切な指導を行ってまいりたいと思っておりますので、御理解を賜りたいと思います。

 次に、市内の小中学校での一連の選挙運動の事実について把握をしているかというお尋ねでございますが、このことにつきましては、訪問いたしましたのは、現職の教職員組合の委員長でございまして、日ごろの学校教育に対する組合員の労苦に対して激励、それから運動方針などの説明をしたと聞いております。このことにつきましては、今後こうした誤解を招かないように十分留意して指導してまいりたいと存じますので、御理解を賜りたいと思います。》

 …甲府市教委側はもとより山教組と癒着していますから、答弁は木で鼻をくくったようないいかげんなものですね。ちなみに、この質問者の加藤議員は今は引退していまが、所属は共産党です。私は共産党と思想・信条は相容れるものではありませんが、ある意味では、社民党よりはるかに評価していることを一言添えておきます。