先日、国会議員会館をうろうろしていたところ、自民党の某有力議員から、米国防総省が今年3月に米議会に報告した「中国の軍事力」の日本語訳版(日本国際問題研究所刊、今月発行)を「参考にどうぞ」と手渡されました。この報告書に関しては、古森記者が3月に記事にしていましたが、私は英語の原本は入手していませんでしたし、第一、入手しても読みこなす英語力はありませんから、ありがたく頂戴し、この連休中に「斜め読み」した次第です。

 きょうは時間がないので、その中から面白いと感じた記述を抜粋し、お茶を濁そうと思います。すいません、安易なエントリで…。でも、この程度の報告書でも日本がまとめようとすると、「日中友好に反する」とか言って問題視する親中派議員・政府高官・マスコミがよってたかってつぶすのだろうなあと考えたら、紹介したくなったのです。この報告書をくれた議員は、実際に対中交渉に当たった経験から、「中国の外交が上手いとは思わないが、外交工作は上手いからなあ」と意味深なことを述べていました。



 ・サイバー戦能力:過去1年の間、米国政府が所有するものも含めた世界のおびただしい数のコンピューター・ネットワークが、中国国内を発信源とするとみられる不正侵入にさらされていた。これらの不正侵入は、コンピューター・ネットワーク攻撃のためにも必要とされる多くのスキルと能力を必要とするものである。これらの侵入が人民解放軍、ないしは中国政府の構成分子によって、もしくはその支持を得て実行されたのかどうかは明らかではないが、サイバー戦のための能力の開発は、この問題に関する権威ある人民解放軍の文書と整合する



 ・「冷静に観察せよ、我が方の立場を固めよ、冷静に事態に対処せよ、我が方の能力を隠し好機を待て、控えめな姿勢をとることに長けよ、決して指導的地位を求むるなかれ」(鄧小平)…中国においては、折に触れて行われる戦略的宣言と実際の政策決定の連関も明らかではなく、とりわけ、危機や不安定の時期についてはそうである。こうした曖昧さは、上記の鄧小平の「24字方針」に暗示されるように、意図と能力を隠そうとする故意の努力を反映しているのかもしれないが、長期的な目標と目的についての選好をめぐって中国の指導者間に本当に存在している不確実性、意見の相違、および論争を反映しているのかもしれない。



 ・攻めをもって守りとなす…権威ある著作である「軍事戦略学」は、敵の攻撃の定義が、在来型の運動力学的な軍事作戦に限定されないことを明らかにしている。むしろ、敵の「攻撃」は、政治的見地からも定義されているのかもしれない。

 《敵が攻撃してきた後にのみ攻撃を行うということは、敵の攻撃を受動的に待つということを意味するのではない…それは、作戦あるいは戦術行動における「有利な機会」を放棄することを意味しない。なぜなら、政治の次元における「初弾」は、戦術の次元での「初弾」とは区別されなければならないからである

 

 ・2003年、中国共産党委員会と中央軍事委員会は、「三種戦法」の概念を承認した。この概念は、以下のように、現代戦における非運動力学的オプションの重要性を強調するものである。
 一、心理戦:敵の理解力、および意思決定能力に影響を与えるため、プロパカ゜ンダ、欺瞞、脅迫、および強制を用いること。
 一、メディア戦:世論に影響を与え、中国の軍事行動に目を向けている国内外の人々からの支持を獲得するため、情報を流布させること
 一、法律戦:国際的な支持を獲得し、中国の軍事行動に対して起こり得る政治的反動に対処するため、国際法と国内法を用いること。

 …このほか、「中国の軍事力」には、具体的数字の入った中国のミサイル戦力の表や、ミサイルの到達範囲の図などもあり、一家に一冊常備しておくと便利ですね。もちろん冗談ですが、何%かは本気でそう思います。私は中国を過大評価したり、いたずらに持ち上げたりする必要はないと考えていますが、まあ、面倒な国ではあります。写真は、この連休中の思い出を撮ったものでした。さあて、仕事にかからないと…。

  ※追記 前エントリでは、自民党の加藤紘一氏の「拉致被害者5人は北朝鮮に戻すべきだった」発言に対する安倍前首相の「北朝鮮の主張そのものだ」という批判を紹介しました。その際のコメント欄で、安倍氏以外の政治家から、この問題に関する発言が出てこないことに不満を表明していたのですが、その後、18日発行の夕刊フジで、中川昭一氏が強く加藤氏を批判していたことを知ったので、改めて一部引用して掲載します。さすが中川氏です。それは、以下のようなものでした。

 「加藤氏の『(北の金正日総書記は)あの国では天皇陛下のようなポジションの人物ですね』という発言に至っては、怒りを通り越してコメントのしようがない。(中略)一連の発言はまるで朝鮮中央通信の解説を聴いているようだ

 「これほど残酷な国家的犯罪に遭われた被害者が二十数年ぶりにやっと帰国できたのに、それを再び犯罪者のもとに返せと言うなど、一体どういう感覚をしているのか」

 「拉致被害者の家族らが『貴殿はそれでも日本人なのか』『一体、どこの国の国会議員なのか』といった抗議文書を加藤事務所に送ったそうだが、まったく同感だ」