今朝の産経は政治面で、小さく「中国両首脳 首相と会談 五輪開会式当日」という見出しの記事を載せています。福田首相が8月8日の北京五輪開会式の当日に、中国の温家宝首相、胡錦濤国家主席の両首脳と相次いで会談することが決定した、という話です。この会談は当初は、6日と9日の広島、長崎の両原爆犠牲者慰霊式に出席する福田氏の日程上余裕がなく、見送られるとみられていましたが、中国側の要請があり、日本としても受けることにしたようです。

 今回の五輪開会式には、世界から約90カ国の元首・首相クラスが訪れると言いますから、その当日に中国のナンバー1と2がそれぞれ30~50分も時間をとって福田氏に会うというのは、確かに中国の対日重視の表れだとも言えますし、福田氏にしてみれば破格の厚遇を受けるわけですから、「さすがは私だ」と気分がいいでしょう。まあ、中国にしてみれば、会談風景を全国ネットで中継し、日本の首相が早速祝賀に駆けつけたとばかりに放映するのでしょうから、胡政権にとってもおいしい場面なのでしょうね。

 本来、チベットやウイグルへの弾圧、漢族との同化政策をはじめとする人権問題を抱える中国が主催する五輪開会式に、どうして日本の首相が出席するのかというという大問題がまずあるわけですが、そこはあの「中国命」の福田氏ですから、まあ開会式出席は予想されていたことでした。ですから、せめて中国の両首脳と会う際には、日中間の懸念を一歩でも二歩でも進める努力をしてもらいたいところですが、どうやらその願いも空しいものとなりそうです。

 まず、6月に日中間で一定の合意をみた東シナ海のガス田共同開発問題は、その後、まったく停滞したままなのですが、これも日中首脳会談でも進展しそうにありません。一応、合意したといっても、「白樺」ガス田への具体的な出資率や、合意に至らなかった他の日中中間線付近のガス田の取り扱いなどは継続協議となっていたのですが、中国側はその後、協議の場を持とうともしていません。日本側はいつでもやろうと呼びかけているのですが、中国側は「五輪が終わるまで何もできない」としているようです。どうやら、合意に対する中国国内の「日本に譲りすぎた」という批判に脅え、ここで東シナ海問題で何かアクションを起こすとさらなる批判・反発を招き、五輪に悪い影響を与えかねないと心配しているようです。

 発生から半年がすぎた中国製ギョーザ中毒事件もそうです。これは、そろそろ中国側が何らかの対応を示すのではないかとも見られていましたが、五輪閉会後に先送りされました。中国の役人はいま、五輪運営に何か影響を与えるようなことをしたら直ちにクビだそうですから。また、今月中に研究成果が発表される予定だった日中歴史共同研究に関しても、現時点で日本の意見と中国の意見を両論併記した文書を発表したら、歴史問題に最も敏感な中国国内の寝た子を起こすようなものだとして、最近になって中国側の作業が急に遅くなったといわれます。これも五輪後にやろうというわけです。

 では、福田氏が中国の両首脳とせっかく会っても何を話すというのでしょう。温首相とは40分間以上、胡主席とは30分以上の会談時間がとってあると聞きますが、ガス田もギョーザもその他の懸案も特に話し合わないとしたら、話題の設定にも困るのではないでしょうか。じゃあ、福田氏がチベット・ウイグル問題について触れるかというと、「何もスポーツの祭典でそんなこと言わなくてもいい」というのが、「お友達の嫌がることはしない、言わない」と明言して首相になった福田氏の姿勢だろうと思います。「本当はこういうときこそ、相手の聞きたくないことを言うのが効果的なのだが…」(外務省筋)という嘆息が聞こえてきます。

 なのできっと、日中両首脳の会談は私の予想・推測では「主席は五輪ではどの競技が好きですか」「やっぱり卓球には関心があります」「そう言えば、早稲田での卓球は見事でした。今回は中国がたくさんメダルをとりそうですね」「いやいや。ところでいつ帰国されるのですか」「本当はゆっくりしたいのですが、明日原爆の式典があって」「ああ、それは残念だ。今度はゆっくり中国に来てください」「ええ、そうしたいですね」…などの他愛のない世間話に終始するのではないでしょうか。そして、会談後の記者ブリーフでは「会談は和やかに和気藹々とした雰囲気で行われ…」といういつものフレーズが登場するのかな、と思います。

 本当は、私の予想なんか外れて、日中首脳間で諸懸案をめぐって丁々発止のやりとりや白熱した議論、有意義な話し合いがもたれることを祈りたいのですが、福田氏にそれを望むのはもはや酷というものかもしれません。今回の訪中日程は、8日昼前後に北京入りし、9日未明か早朝にはもう北京を発つという強行軍なので、周囲は福田氏の体調・体力の方を心配しているようですが…。もうなるようにしかなりませんね。