遅い夏休みで東京を離れていたことと、1日だけですが、体調を壊してとてもブログに取り組むような余裕がなかったことなどで、エントリ更新がちょっと滞っていました。その間、このブログのコメント欄の在り方について、さまざまな方が意見を述べあい、また議論を続けておられたのですが、私自身はというと、ブログに物理的に割ける時間もほとんどなく、ネットに接続できる環境にもいなかったため、いよいよ私抜きで事態は進行していったように感じています。

 その件に関しては、前回のコメント欄で何度も記したように、近いうちに結論を提示したいと思いますが、きょうはとにかく頭を冷やしたいので、不定期的にアップしている読書シリーズにします。今月9日の「趣味なので・最近読んだ本について」はわずか17コメントと平穏(寂しい?)な状況でしたしね。

 

 まずは、とうとう読み終えてしまった刑事・鳴沢了シリーズの最終巻です。結末は…ある意味で予想通りでしたが、非常に楽しめるシリーズでした。主人公は巻を重ねるごとに成長し、人間味を増してはいくのですが、やっぱり周囲にあまりいてほしくないタイプであるのは最後まで変わりませんでした。物語のキャラクター造形としては、実に優れていると思いますが。

 

 書店に派手に平積みになっていましたし、「ミステリーランキング1位」(1994年週刊文春ミステリーベスト10)という帯の文句にも引かれて読んでみました。作者は現役の弁護士ということで、検察の内部事情などが詳しく書かれていて、確かに面白くは読めましたし、女性検事と、微妙な男女関係にあるお付きの検察事務官など、キャラクター設定も上手いとは思いましたが、難を言えば登場人物に感情移入しにくいような。趣味の問題でしょうが。

 

 これは、たびたび取り上げている今野敏氏の1991年の作品を、今年改題して出したものだそうですが、原題は「聖王獣拳伝」だったそうです。当時の編集部がつけたそうですが、改題されたものと比較すると、一体何のことやら分かりませんね。時代のノリのようなものが表れている気がします。作品自体は、あとがきで作者本人が「正直に言って、小説になっていないという気がします」と認めているように、そうお勧めできるものではありませんが、バブル期に環境と犯罪の関係に着目した視点は面白いと思います。

 

 その同じ今野氏の最新刊も読んでみました。これも、どちらかというと、この作者の「ST(警視庁科学特捜班)シリーズ」に似た少しライト感覚のある作品なのですが、話の展開はうまくてスマートで、2作品を読み比べて歳月を感じました。そりゃ17年もたっているわけですから、当たり前ですね。さらっと読めて、読後感もいいと思います。

 

 初めて読んだ作者ですが、この本は読み応えがありました。マタギという生き方を通して人間社会と自然の関係、また、安易に語られがちな「共生」という言葉の薄っぺらさ(政治家が使うと余計にそう感じます)、そして生きるとは何なのかなどが、読み手に突きつけられてくる感じがします。なかなかいい作品だなあと感心していたのですが、主要登場人物の一人が先の大戦を論じるところだけが妙に「浅い」ように思えました。社会や生にこれほど深い洞察を示す作者が、なぜ戦争については、これほど表面的な理解を得々と展開してみせるのかと…。

 

 実は山本一力氏の作品は、ここのところ読んでいなかったのですが、読む本に窮してまた手を出してしまいました。好きな方には申し訳ありませんが、私は山本氏の作品はどれも同じメッセージばかり感じて、どれを読んでも同じように思えるので避けていました(浅田次郎氏にもそういう印象があります)。この作品でも、いつものようにやたらと「器量」という言葉が出てくるのには「ああまたか」という気がしたのですが、まあ、読めば読めるな(失礼!)。

 

 次は、私が好きな佐藤雅美氏の最新刊です。これは、「物書同心居眠り紋蔵」シリーズの9作目か何かにあたり、今回も楽しく読んでいたのですが、途中で舞台設定を同じ作者の「縮尻鏡三郎」シリーズと混同していたことに気付きました。山本一力氏の作品をどれも同じようだなどとくさしておいて、これですから、私も本当にろくなものではありません。でもやっぱり佐藤氏の作品は合うなあ。エピソードや話の顛末に「そうだよなあ」と納得がいき、安心して物語世界に没入できます。

 

 今回の最後は、やはりたぶん初めて読んだ山本兼一氏の作品です。で、結論から言うと、もう少し期待したのだが…という感じでした。これはこれでいいアイデアだなあと思うし、面白くないわけではないのですが、せっかく何人も登場させている幕末維新の英雄英傑たちも、どこか表面的になぞった感じだし、主人公夫婦の掛け合いもいまひとつでした。続編があるのかもしれないし、他の作品も読んでみないとまだ確たる評価はできませんが…。

 このほか、新書本の類も何冊か読んだのですが、読書シリーズでの紹介は別エントリを立てるとき以外は、小説を対象としています。私には、煩わしい現実からフィクションの世界へと逃避する時間がとても大切なのです。それだけ弱い人間だということかもしれませんが、実際そうなので仕方ありません。