本日は、週刊現代2008/10/4号に掲載されたジャーナリストの松田賢弥氏の記事をちょっと「後追い」してみます。記事は、「小沢一郎の金脈を撃つ 夫人を利用した3億円〝隠れ資産〟を暴く」と題されたものです。どうやら連載のようで、次号に続きが載ると予告されていました。

 

 記事の内容はというと、ものすごく簡単に言うと、小沢氏の世田谷区深沢の豪邸近くに、小沢氏の和子夫人の名義の土地・建物(2棟)があり、そこに小沢氏の秘書たちが暮らしているというものです。それのどこがどう問題なのかは、詳しくは、現代を読んでもらうのがいいと思いますが、私は「この前聞いた話はこのことだったのか」と思い当たることがありました。

 

 先日、小沢氏の元側近と話をしていた際、小沢氏の資金管理団体「陸山会」が、同じく深沢に事務所費3億6500万円余を使って土地・建物を購入し、「秘書の寮」(小沢氏)を建設したことが話題になったときのことです。元側近はあっさりこう述べました。

 

 「秘書の寮なんて必要なはずがない。だって、陸山会の政治資金収支報告書には載っていないが、小沢邸から歩いていけるところに、すでに秘書が住む一軒家が複数あるんだから」

 

 これまで私は、産経紙面やこのブログで、支持者の浄財である政治資金(政党助成金も入っているようですが)で秘書の寮を建てるぐらいなら、秘書の給与を上げて好きなところに住めるようにすればいいじゃないかという疑問を記してきました。でも、近くにそんな家があるのなら、いよいよ何のために巨額の資金を投じて新たな寮なんて立てる必要があったのか。

 

 私が、なぜその建物は収支報告書に記載されていないのかと聞くと、元側近ははっきりしたことは述べませんでしたが、一言「和子夫人の存在もある」とだけ語りました。そのときは、それ以上のことは分からなかったのですが、今回、現代の松田氏の記事を読んで得心がいったという次第です。そこで私も、現地に行ってこの「秘書宅」を探し、自分の目で確かめてみることにしました(記事には住居表示、地番が書いてありませんでした)。

 

 まず、高級住宅街にあってもその広大さで一際目立つ、小沢氏の邸宅が下の写真です。表通り側の外観がこれですが、塀には自分のポスターが張ってありました。写真を撮っていたところ、ポリスボックスの警官に「記者さんですか?」と誰何されました。さすがに警戒厳重です。

 

 

 

 次の写真は、小沢邸を裏側から見た外観です。樹木が鬱そうと茂っていますね。写真では分かりにくいでしょうが、こちら側は、ぐるぐる巻きになった有刺鉄線が張り巡らされていて、剣呑な雰囲気でした。近寄り難い、怖い感じがしました。

 

 

 

 さて、現代の記事は、この小沢邸と秘書宅の位置関係について、こう書いていました。

 

 《その豪邸からゆるやかな坂道を登り、樹齢を重ねたケヤキが立ち並ぶ閑静な住宅街を2分も歩くと、小沢邸と同じ薄茶色の壁で覆われた邸宅がある。2階建てでバルコニーのついた瀟洒な建物が二棟、同じ敷地にある。》

 

 この描写を頼りに、秘書宅を探したのですが…。はっきり言って、方向感覚が悪い上に土地勘のない私は、探すのに相当、手間取りました。「ゆるやかな坂道を登り」とあるので、小沢邸の表通りの坂のことかと考え、見当違いの場所をうろうろしたせいもあります。けっこう時間をかけてやっと見つけたのですが、結局、小沢邸からは「3~4分」の距離にありました。

 

 

 

 上の写真がそれですが、「樋高」「木戸口」「玉置」と表札がかかっていました。あと、佐藤、川辺、加集の名前も書かれています。住宅地図を確かめると、さらに池田、今井、吉良という名前も記載されていました。松田氏は記事でこう書いています。

 

 《「樋高」は樋高剛元衆院議員、「木戸口」は木戸口英司元岩手県議のことで、彼らは小沢の元秘書だ。そのほかの住人も小沢の秘書。つまり、この豪邸は小沢の「秘書宅」なのである》 

 

 樋高氏というと、平成18年の政治資金収支報告書で、小沢氏の関係政治団体「改革国民会議」(元自由党の政治団体)と「改革フォーラム21」(元新生党の政治団体)の会計責任者として名前が書かれ、訂正印が押されて会計責任者はともに小沢氏側近の平野貞夫元参院議員に変更されていたという人ですね。ちなみに、平成19年の報告書によると、この2団体の資産は計18億円を超えています。

 

 

 

 この秘書宅を違う角度から見たものです。なかなか立派ですね。記事によると、小沢事務所はこの土地・建物について「(和子)夫人が個人で購入しその代金も夫人が支払っております」「事務所兼宿舎としても秘書が使用しており、したがって秘書からの家賃徴収もしておりません」と説明したそうです。ふむふむ。

 

 陸山会の収支報告書によると、この秘書宅と深沢に新築した「秘書の寮」のほかにも、保有不動産のうち、港区赤坂6丁目の部屋と港区赤坂2丁目の部屋、港区南青山2丁目の部屋がそれぞれ秘書の「事務所兼宿舎」として利用されているとあります。小沢氏の秘書数については、先日のエントリでも報告したように「公設秘書、私設秘書、書生、研修生、ボランティアなど多くの人間がかかわっているので一概に言えないが、20人前後」(小沢事務所)とのことでしたから、全員の住居の面倒を見ようと思えば、それはたくさんの物件が必要なのかもしれません。でも、繰り返しますが、何で給与を上げて賃貸でも何でも、好きなところに住まわせようとしないのか不思議です。

 

 さて、和子夫人名義の秘書宅については、法務局に行って不動産登記簿でも確かめてみました。それによると、この秘書宅は平成7年5月に和子夫人が銀行から2億3500万円借りて購入していました。このときの年利は2.675%とありますから、年に628万6250円もの利息がつくことになります。でも、和子氏は4年もたたない11年5月には弁済を終えたことが、抵当権が抹消されたことから分かります。きっと、庶民には想像がつかない資金力を持っているのでしょうね。いやはや。

 

  それにしても、たとえ夫の大事な秘書さんの住まい確保のためとはいえ、個人で多額の借金をし、高い利息を引き受けてまで借金して土地・建物を購入するという意図や気持ちがさっぱり分かりません。いや、購入の目的は別で、たまたま買ってから13年ばかり、秘書を住まわせているだけかもしれませんが。小沢氏も「秘書の寮」を建てるにあたって陸山会に数億円もの貸し付けを行い、利息をとっていましたが、何でそんなにしてまで不動産を買わなければいけないのか。

 

 秘書宅の広さがどれくらいかというと、2世帯住宅風のつくりの1棟は1階、2階とも99.30平方メートル。もう1棟は1階と2階が49.27平方メートルで、地下1階が52.07平方メートルとありました。地下は駐車場の分でしょうか。まあ、確かに住宅地図にある9人ぐらいは十分住めそうな広さです。

 

 これを「無償」としていることについて、松田氏は「事務所として使用する以上、和子が家を貸すことは政治団体に対する財政的な支援になり、事務諸費を徴収していなければ、政治資金規正法で禁止されている無償提供にあたる。事務諸費を徴収していない場合、和子による寄付が政治資金収支報告書に記載されていなければ、虚偽記載だ」などの疑問を指摘しています。非常に興味深く読みました。きょうのところは、ひたすら記事の「後追い」をするしかできませんでしたが、私も関心を持って引き続き見ていこうと思います。

 

 ともあれ、衆院議長に提出された資産等報告書によると、小沢氏はこの深沢の邸宅と岩手県水沢市の自宅のほか、静岡県の東伊豆や沖縄県の宜野座にも広い土地を持っているようだし、本当に不動産が好きなのだなあと改めて感じた次第です。実際どうなんでしょうね…。