本日、午後4時から衆院第一議員会館で開かれた「国籍法改正案」緊急対策会合に行ってきました。会合の中身については、別の記者が記事にすることになったので、私は興味深く感じた部分について記そうと思います。それは、出席した14人の議員の多くが、口々にネットを通じた反応について言及したことと、国会議員たちが閣議決定に加わった閣僚を含め、本当にこの改正案の中身について知らなかったという事実などです。間抜けな話ですが、これが現実でしょう。

 

 会合では、まず無所属の平沼赳夫氏が「今はインターネットの時代で、毎日全国から大変な量のこの法案に関するご意見が寄せられている。無茶苦茶な歯止めのない法案だ」とあいさつし、赤池誠章氏がこれまでの経緯を説明し、米ニューヨーク州弁護士の資格を持つ牧原ひでき氏が世界各国での移民の家族呼び寄せ時に実施されているDNA鑑定について簡単に説明しました。

 

 牧原氏は、「調べてみると、スイスは従来の日本の法律(国籍法)と全く同じだ。ドイツは今回の日本と同じような改正を行ったところ、偽装認知などの事例がみられた。日本はドイツと同じ失敗を繰り返すことになる。DNA鑑定は有効であり、世界的にも事例があることだ」と語っていました。会合で配布された各国の移民の家族に対するDNA鑑定の様態は以下のようでした。

 

 ・イギリス…1990年代から実施されている。法的根拠はないが、移民行政によって行われている。口腔組織を採取し、政府により権限が与えられている機関で分析する。費用は、国が負担する。

 

 ・イタリア…2005年3月から実施されている。移民に関する統一法典を改正する2004年10月18日のデクレに法的根拠がある。血液または唾液を採取し、政府により権限が与えられている機関で分析する。費用は、申請者が負担する。

 

 ・オーストリア…2006年から実施されている。法的根拠及び詳細は不明。

 

 ・オランダ…2000年2月1日から実施されている。1999年6月23日に、国会でDNA鑑定が認められ、2000年1月27日に関係法が公布された。口腔組織を採取し、政府が権限を与える3つの機関で分析が行われる。費用は申請者が支払うが、親子関係が証明されれば、払い戻しを受けることができる。

 

 ・スウェーデン…開始時期については不明。現在、法的根拠はない。血液を採取し、国立法医学研究所にて分析する。費用は、申請者が負担する。なお、DNA鑑定に関する法制度を現在策定中である。

 

 ・ドイツ…開始時期については不明。現在、法的根拠はないが、ドイツへの外国人の入国及び滞在に関する2004年8月5日の法律に拠って行われている。唾液を採取し、政府により権限が与えられている機関で分析する。費用は、申請者が負担する。なお、DNA鑑定に関する法制度を現在策定中である。

 

 ・デンマーク…1994年から実施されている。1996年からさらに強化されて実施されている。外国人法第40条Cが法的根拠である。血液を採取し、コペンハーゲン大学で分析する。費用は、政府が負担する。

 

 ・ノルウェー…1999年から実施されている。法的根拠は不明だが、DNA鑑定の態様については、2002年の通達に従って行われている。唾液を採取し、イギリスの政府認定機関に送付され、分析される。費用は、国が負担する。

 

 ・フィンランド…2000年6月から実施されている。法的根拠は、2000年3月1日に改正された外国人法である。血液または口腔組織を採取し、ヘルシンキ大学または政府が認定する医学研究所で分析する。費用は、国が負担するが、分析の結果、血縁関係が認められない場合には、費用は申請者が支払う。

 

 ・ベルギー…2003年6月から実施されている。法的根拠はない。血液を採取し、ブリュッセルにあるエラスムス病院で分析する。費用は、申請者が負担する。

 

 ・リトアニア…詳細は不明。

 

 これは移民の話なので、日本の場合と単純比較はできないかもしれませんが、それにしても割と最近になってDNA鑑定を導入したり、制度の整備に取り組んだりしているところが多いようですね。さて、その後、自由討議に入ったのですが、こんな意見が出ていました。

 

 中川義男氏 この法案に関するメールはすごく多いですよ。選挙民から非常に抗議が多い。それを見て私も「この法案はなんだ」と気が付いた。地元でいろいろ問題になって初めて分かった。選挙、選挙でほとんど国会に来ていなかったときの話だ。

 

 戸井田とおる氏 今までは法案に問題があると、必ず(党内手続きなどの)どこかで引っかかって、総務会でもめて部会に差し戻されたり、常識ある人が止めていたが、今回はそうならなかった。

 一般の人はこの法案について知らない。人権擁護法案のときの反応とも今回はケタが違う。きのう午後6時半にアップしたブログにさっき見たら300件の書き込みがあった。この法案が通ったら、国会は何やってるんだということになる。

 

 稲葉大和氏 私は総務会の一員だが、総務会での法案説明の中で、この法案はそれぞれの先生の意識の中にほとんどなかった。私はうちの息子から「お父さん、この法案はおかしいよ。ちゃんと発言してよ」と言われて発言したが、私の発言に意識を持ってくれたのは中山太郎先生だけだった。

 その後、どんどんホームページなりブログなりにヒットしてくるようになった。それだけ国民のみなさん、特に若い人の方が理解している。

 

 中川氏 メールを見ると、書き込む人は間違いなく自民党を支持するような人たちだ。そういう人たちがあれだけ反応していることに全く応えないとなると、選挙にも影響する。間違いなくそう思う。

 

 木挽司氏 自民党の手続きの在り方にすごく不満だ。今、自民党が存在意義を問われている。こんな自民党を何とかしたい。

 

 土屋正忠氏 自民党も政局に振り回されている。この問題もちょうど、選挙で気もそぞろのときにちょこちょこっとやって、いつのまにかこうなった。

 

 平沼氏 解散総選挙という状況で、みなさん関心がなかった。私のところにも、閣僚から連絡があった。「あんた、閣議で花押を押したんじゃないの?」と言ったら、「流れ作業で分からなかった」と言っていた。麻生太郎だって知っているわけないよ!

 

    

 

 会合終了後、議員会館の受け付けでは、この日、国籍法改正の動きを何とかストップさせたいと集った20数人の若者が待ちかまえていて、赤池氏や戸井田氏と話していました。みな真剣な面持ちで議員らの話に耳を傾け、自ら意見を述べていました。

 

 残念ながら、今のところ明日の衆院法務委員会、衆院本会議での法案採決、衆院通過の流れは変わっていません。ただ、きょう集まった議員たちは明日の朝まで、法務委員長や法務委員会筆頭理事、各委員らに申し入れを行い、働きかけを続けるということです。明日の委員会では稲田朋美氏が質問に立つとのことで、私も審議を見ようと考えています。