さて、前エントリに続き、本日の「国籍法改正案を検証する会合に賛同する議員の会」のもようを報告します。きょうは法務省かに担当官僚を招いての質疑・意見交換があったので、なかなか興味深いやりとりがありました。その中から、いくつかピックアップしてここに掲載します(録音はしておらず、私の手書きメモなので、言い回しなどは微妙に異なる部分もあるでしょうが、大意はこの通りだということでご理解ください)。

 

 まず法案を作成した法務官僚側から説明がありました。彼の主張をまとめると、

 

    虚偽の届け出への罰則は「1年以下の懲役または20万円以下の罰金」で軽いという批判があるが、このほか認知届の際などの公正証書原本不実記載の罪(5年以下の懲役または50万円以下の罰金)なども加算され、最高刑で懲役7年6月までできる。

    DNA鑑定を取り入れると、家族法への悪影響が出るおそれがあり、親子関係や家族をそれで決めていいのかという大問題になる。

    DNA鑑定は、持参された検体が正しいかどうか、どうやって市町村役場や法務局で確保するのか。さらに、DNA鑑定には10万円以上かかるが、だれがどう負担するのか。

    外国人の子を認知する場合のみDNA鑑定をすることで、憲法が禁じる不当な差別という問題が起きないか

 

…といった内容でした。衆院法務委員会での質疑でも、法務省はおおよそ似たような答弁をしていましたね。で、これに対し、議員たちからは次のような意見が出ました。

 

馬渡龍治氏 国籍というものを、そんなにハードルを低くしていいのか。市町村役場が鑑定の判断ができないというなら、政府が信用できる機関でやるぐらいハードルを高くしてもいいんじゃないか。偽装認知が疑われている中で、DNA鑑定をしないことによってかえって「あの子は偽装じゃないか?」という差別がいっぱい出てくるかもしれない。何のための法改正なのか。中心は子供のはずだ。正確な父子関係がしっかり示された方が、その子のためにもいいじゃないか。

 

 秋元司氏 みなさんのところにもたくさんのファクスが来ていると思うが、そこに書かれていることには、国籍取得の重さをどう考えているのかという怒りがある。国籍を得た後に偽装と分かったら、子供にとっても大変なショックを与える。

 

 戸井田とおる氏 民放722条と国籍の問題を一緒くたにする理由はどこにあるのか。法務省の話を聞いていると、DNA鑑定を入れないようにするにはどうすればいいのかと、そればかり一生懸命考えているとしか思えない(中川義雄氏から「全くその通りだ!」の声)。

 

 西田昌司氏 もし改正案が通ったら、この時代の国会議員は後の世代に不作為の責任、とめられなかったという責任を負うことになる。

 

 有村治子氏 DNA鑑定は万能ではないが、現在持ちうるタマの中では一つの有力な選択肢だ。外国人の子だけDNA鑑定をするのはいかがかというが、ビザ発給の仕方をみても、どこの国とも対等とするというのは、世界常識でもありえない。差異化は当然だ。偽装に対しては厳しい制裁を科すべきだ。参院(の審議)で、改正案の見直し期間を条文に入れるというのも一つの手段だと思う。

 法務省に尋ねるが、国籍取得後に偽装と判明した場合、国籍剥奪、国外追放となるのか。

 

 法務官僚 偽装が発覚した場合は、戸籍は職権で消す。国民でないということなので、国外退去に移ることになる。

 

 佐藤正久氏 市町村や法務局の窓口でどうやって偽装認知を見破るのか。(日本人男性と外国人女性が)口裏を合わせてやると、非常に難しいのではないか。振り込め詐欺のようなこともある。それと、DNA鑑定については、法務省はひたすらできない理由を並べているようにしか聞こえない。私も自衛官だったから分かるが、役人にとって、できない理由を見つけるのは簡単(会場・笑)だが、それを何とか実現しようという発想が必要だ。

 

 法務官僚 偽装を見破るのはなかなか難しいが、私どもが考えているのは、まず母親には必ず窓口に来ていただく。日本人男性の方には、来ていただくようお願いする。強制というわけにはいかないので任意で。来られた場合には、いろいろと聞く。知り合った経緯、同居の有無、扶養しているか、子の出生の経緯、どこで生まれたとか。また認知の経緯、なぜ結婚しないのか…などを聴取して、疑問点がないか慎重に判断する(法務官僚は、なぜか佐藤氏の質問に対してだけポケットに手を突っ込んで答える)。

 

 赤池誠章氏 世界各国では日本と同様のケースの場合、DNA鑑定を実施している例はあるのか。法務省は把握しているか。

 

 法務官僚 網羅的には調べていないが、認知の際にDNA鑑定を要求している例は英国などがある。詳しいことは分からない。

 

 …概略、このようなやりとりがあったわけですが、これではやはり、偽装認知のチェックがきちんとできるとは思いにくいですね。法務官僚は、届け出の際に父親は来なくてもいいが、「来ないと、これは怪しいという方向にいく」と述べ、怪しければ調べるのだということを強調していましたが…。また、法務省は国会答弁などでもDNA鑑定の導入に否定的なコメントを繰り返してきたのに、諸外国ではどう運営されているかもろくに調べていないことが分かりました。やれやれです。

 

 国籍法改正案に対する国民の厳しい批判を受け、まだ表の場にはあまり表れていません(記者ブリーフなどでは広報されていないので)が、自民党内では執行部を含めて「これはヤバイな」という意識が生まれつつあります。少なくとも、参院では、衆院のように「3時間だけ」の審議で通すようなことはできない、確かに犯罪ビジネスに利用されかねない問題があるなという認識が、だんだん広まってきました。参院では自民党は少数派で民主党の天下なので、自民党に危機意識が芽生えても、それだけではいかんともし難い部分はありますが。

 

実は、このあたりの水面下のやりとりを、明日の産経紙面に書けないかと思ってデスクに売り込んだのですが、残念ながらきょうは紙面スペースがとれないとのことで、本日は諦めました。また機会を見つけて報じることができればと思います。この議連の会合は今後も開かれる予定なので、その際にはまた報告します。

 

   

 

きょうの東京地方はとても気持ちのよい晴れでした。こういう日ばかりだといいのですが…。