国会では今月3日に、麻生太郎首相が国家公務員の「天下り」や「渡り」に関する各府省による斡旋について、「今年いっぱいで廃止するための政令を作りたい」とようやく表明しましたね。国民世論を背景にした与野党双方からの圧力・批判に背中を押された形であり、また、政権自体が「今年いっぱい」までもつのかという問題もあってちょっと遅きに失した感もありますが、まあ、その方向自体はいいことだろうと思います。

 

 で、何でこの「旧聞」について触れたかというと、例によって山梨県の教員からあるファクスが届き、「これは教職員組合幹部(地方公務員)による一種の天下りではないか」と連想させられたからです。そのファクスとは、山梨県の各学校の校長、厚生担当者、教職員あてに、県内の某総合商社(業務内容は日曜雑貨・オフィス製品販売、メンテナンス・空調工事などもろもろ)から送りつけられた「特別企画」についての案内でした。これでは何のことやら分からないでしょうが、要はこの商社が代理店を務めている二つの企業の商品「おひな様・五月人形」と「ソーラー発電システムセット」を買いませんか、という誘いでした。

 

 ふーん、でもなんでこんなものが学校や教員に…と思って案内文をよく読むと、「弊社は、山梨県教職員互助組合の指定業者としてご指定を頂き、皆様のご要望にお応えできる良質商品を幅広く取り扱っております」とありました。なるほど、この団体は山梨県教組とその傘下の校長会、教頭会がかかわって運営しているところなので、そういう関係か、指定業者というのはきっと「おいしい」のだろうなといったん納得したのですが、最後に社長の名前を見て驚きました。

 

 代表取締役 曽根修一

 

 これまた多くの人に、それがどうしたのかと言われそうですが、私にはなじみ深い名前でした。この人は、山梨県教組の支部書記長、県教委義務教育課長、小中学校校長を経て2002年7月から県の教育委員となり、産経が山教組による違法な政治活動問題のキャンペーンを始めたときには県教委委員長職務代理でした。

 

 山教組出身の教育委員長職務代理ですから、当然、この問題の解明や処分には非常に消極的で非協力的でした。文科省が繰り返し、県による「激甘の処分」を改め、処分のやり直しをするよう文書で指導するなどしてもずっと無視を続けたほどです。それが、問題が何も解決していない05年12月にはとうとう教育委員長にまで上りつめたのです。委員長就任の記者会見では、記者から「あなた自身がかつて政治資金カンパに関与したことはあるのか」との質問が飛びましたが、「個人的なことはお答えを控えたい」と言葉を濁しています。

 

 山教組の財政部長と、山教組の政治団体、県民主教育政治連盟の会長が政治資金規正法違反(虚偽記載)で書類送検された後も、「捜査中なのでコメントできない」「新たな事実関係が判明したら検討する」などとして、カンパ集めの違法性への言及や再発防止策については触れようともしませんでした。翌06年1月にこの二人が略式起訴され、罰金刑を受けた後も煮え切らず、初めて「県民の皆様に心からお詫び申し上げます」と謝罪し、小中学校校長など24人の再処分に踏み切ったのは、3月下旬になってからでした。その際ですら、歴代山教組幹部をかばう発言をしています。

 

 私は、その後、曽根氏が何をしているのか知らなかったのですが、06年7月に任期満了で教育委員長を退任し、同年8月に冒頭の某総合商社の社長に就任していました。どういう経緯と目的で曽根氏を社長として迎え入れたのか、この会社に電話して聞いてみましたが、「取締役会で決まったことで私たちには分かりません。分かる者はみんな外に出ています」ということでした。ホームページをみると、曽根氏は、この商社の関連会社である人材派遣会社の社長も兼任しているのですが…。

 

 まあ、民間会社がだれを社長に迎えようと自由ですし、おそらくこれまでの教育現場とのコネクションを生かしてもらおうと考えたのでしょうが、山教組の幹部になると、こういう道も開けるのだなと得心した次第です。これは必ずしも「天下り」とは言えないのかもしれませんし、これには、私ごときには到底思いが及ばぬ必然の道理があるのかもしれません。でも、60代半ばになって新たな要職に就くということに、少なくともこれまで職歴が関係していないはずがありませんしね。曽根氏は民主党の輿石東参院議員会長とも近い関係にあるらしいですし。

 

私自身、以前のエントリで何度も、山教組の役員を務めることが山梨県の教員の出世コースであり、逆に組合にさからうと校長にもなれず僻地に飛ばされると書いてきました。で、こうして山教組支部書記長→学校長→県教育委員→県教育委員長→山梨県教職員互助組合指定業者の社長…という見事な実例をみると、地域で山教組が権勢をほしいままにしているのも無理はないのだろうなあ、長いものには巻かれろというしなあと改めて思った次第です。でもやっぱり変ですね。