今朝から始まった産経の連載記事「民主党解剖」(第一部は5回を予定)の中で、小沢一郎代表が2月上旬の会合で「拉致問題は北朝鮮に何を言っても解決しない。カネをいっぱい持っていき、『何人かください』って言うしかないだろ」と発言したことが紹介されています。私はこれがどんな場で、だれに向かって述べた言葉か全く知りませんが、私の2008年4月20日のエントリ「民主党・小沢代表の『拉致問題は解決しっこない』発言について」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/548899/)で記した言葉とも、どこか投げやりでぞんざいな言い回しが共通していますね。

 

今朝のこの記事には、「会場は一瞬凍り付いた」「小沢発言には、当然のごとく、箝口令が敷かれた」とありましたが、「米国の極東でのプレゼンス(存在)は、米海軍第7艦隊で十分」との小沢氏の軍事が何も分かっていないことがバレバレとなった発言に対し、民主党幹部らが党の公式見解ではないとして〝火消し〟に躍起であることを見ても、今後も小沢氏の諸発言をめぐり、振り回される場面がたくさん出てくるのだろうなあと思っています。

 

小沢氏は最近もまた、中国の王家瑞対外連絡部長との会談で日米中3カ国の関係は三角形(トライアングル)であるべきだという日米同盟軽視そのものの発言を繰り返し、「中国に特別な親近感を持っている」と表明していましたが、これについても私はかつて2006年7月14日のエントリ「小沢一郎氏の日米中関係『正三角形論』」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/14211/)で触れているので参考までに。

 

 あと、念のために付け加えると、新聞社の政治部では、オン、オフを含めて記者同士が相互に取材メモをメールなどを通じて送り合い、情報を共有します。そうしないと、自分が日常的に取材する担当の政治家・分野だけでは、とても日々の政治全体の動きをフォローすることができないからです。とはいえ、少人数取材や一対一取材での「完オフ」メモはその限りではなく、直属のキャップぐらいにしか見せないことや、あるいは他の記者には全く伝えないこともあります。言うまでもなく、情報はどこからどこに漏洩するか分からないからで、それは社内であっても部内であっても同じことだという理屈からです。私の場合、あくまで自分で取材したことについては、一対一の話でも、このブログでぼかしつつも多少、書いちゃったりもしていますが。

 

 で、本日はこういう連載が始まったことと、私の個人的事情と要請もあって、小沢語録シリーズを再開することにします。前ふりが長くなりましたが、それでは、今回は平成15年7月からスタートします。主に民主・自由両党の合併のあたりです。

 

    平成15年7月18日、夕刊フジ「剛腕コラム」、自由党党首、小泉首相の初の日朝首脳会談を批判して

「あれから10カ月、共同宣言(日朝平壌宣言)の大半が踏みにじられていることを恥ずかしいと思わないのだろうか。首相や政府として、対北朝鮮政策の基本方針や原則を持たないから、このような失態を演じる」

 

 =いや、基本方針はいいのですが、それってもしかしてカネをいっぱい持っていき、何人かくださいと頼み込むことでしょうか?

 

    平成15年7月24日、産経、自由党党首、民主党の菅直人代表との間で民主、自由両党の合併を合意した後、記者団に話す

「自民党政権を倒し、政権交代を実現するための手段だ。われわれはポストを求めていない。他の党派にも呼びかけていく」

 

 =なるほど、ポストは求めていないと。で、自由党は15年9月26日の解党の2日前、合併相手の民主党からなぜか2億9540万円もの寄付を受けたことの説明は?そのお金は小沢氏の関係政治団体へと渡っていますが。

 

    平成15年7月31日、読売、自由党党首、インタビューで民主・自由両党合併への社民党の参加を促して

「社民党の支持母体でも『この際まとまっていこう』という意見が多いのではないか。伝統や感慨はわかるが、国民のためなら決断しないといけない」

 

 =この人はぶれていません。一貫して社民勢力を取り込もうと画策しています。

 

    平成15年8月1日、日経、自由党党首、インタビューで将来の政界再編について

「将来は政界再編に決まっている。自民党が一回ぶっ壊れ、次の若い世代がいい政党をつくるというなら、それでいい。その党が成長して、また政権交代すればいい」

 

 =この予想が5年半を経て現実味を帯びてきました。しかし、政権交代はともかく、政界再編への道筋は残念ながら遠そうな気もします。さてどうなるか。

 

    平成15年8月2日、毎日、自由党党首、インタビューで菅直人民主党代表の「総理の器」について

「小泉(純一郎首相)さんにできるんだから、菅さんで十分だ。国民に分かりやすく語りかける能力は抜群。『市民派』でやってきたから、国民とじかに接するのも得意だし、政策論も小泉さんより上だ」

 

 =それって、ほめたことになるんでしょうか?単に言葉遣いの問題で済むのかこれは。

 

    平成15年8月12日、産経、自由党党首、インタビューで社民党との合併について

「これをマイナスとみる人も多いだろうが、僕は絶対にプラス要因だと思う。(中略)社民党票は創価学会より固い。創価学会は他人の選挙だとやらないが、社民党は野党全体でやろうとなったら票がこぼれない。しかも自民党と同じで地方ほど強い」

 

 =納得しました。結局ポイントはそこかい!と突っ込みを入れたくなるぐらいですが、時折、この人は妙に正直ですねえ。一昨年の参院選でも、もともと社民党の票田だった自治労、日教組の票は確かに固かったですが。

 

    平成15年9月25日、産経、自由党党首、民主党の菅直人代表と合併協議書に調印した後の記者会見で

「戦後初の健全な、自民党に代わって政権を担当しうる野党が誕生した。この挑戦に失敗すれば日本の議会制民主主義が失敗して八方ふさがりの自民党政治が継続し、日本が崩壊しかねない」

 

 =本当に、健全であってほしいと心から願うものです。だがしかし…。

 

    平成15年9月26日、夕刊フジ「剛腕コラム」、小泉構造改革とマスコミを批判して

「抵抗勢力や官僚を敵対する大悪人のように仕立て上げ、構造改革が進まない理由付けにしながら、裏では旧体制・旧権力と談合している。そうした実態を知りながら、大きなメディアはこれを無視している。苦言を呈する評論家やジャーナリストは発言の場をどんどん奪われている。恐ろしいまでの自民党とマスコミとの癒着が進んでいる」

 

 =そんな癒着が果たして本当にあったのかどうか疑問も残りますが、近い将来実現するかもしれない民主党政権では、発言の場を奪うようなことは是非やめてほしいと願います。どうなるかなあ。

 

    平成15年9月27日、朝日、民主党衆院議員、同党衆院議員のパーティーであいさつし、自民党総裁選に触れた中で

「日本人は(外国から)特殊学級、特殊人間扱いされている。ばかじゃないか」

 

 =朝日の記事は、「障害児らが通う特殊学級を差別視した発言とも受け取れ、論議を呼びそうだ」と書いていますが、私はこの発言は記憶していませんでした。論議を呼んだかなあ。まあ、当時は「一兵卒」だったから、あまり騒がれなかったのか。まあ、いろんな発言をしている人ではあります。

 

 きょう、例によって国会議員会館をうろうろしていて、たまたま自室に居合わせた議員と小沢氏の話題になりました。彼が「小沢氏の第7艦隊発言は相当ひどいね。今朝の産経の記事に載っていた拉致発言もとんでもない。昔からああだったかなあ。以前はもう少しまともな人だったような…」というので、私は「いや、昔からああいう人だったと思いますよ。以前から『大物』という虚像ばかりが独り歩きしていた人ですから」ととりあえず反論しておきました。少なくとも、私にはそうとしか思えないのです。