さて、民主党の小沢一郎代表は昨日の参院議員総会と代議士会で、公設第1秘書の起訴と自身の代表続投意向について説明し、「当面の」続投を「了承」されました。まあ、この二つの会は機関決定を行う場ではないので、正式には了承も何もあったものではありませんが、一応、衆参両院議員にも直接話すという手続きを踏んだ形です。

 

 もうメディアが報じている通り、代議士会では小宮山洋子、近藤洋介の両氏が小沢氏続投に疑問を表明しました。党内では小沢辞任論が渦巻いているのに、なぜ意見を述べたのが二人だけだったかは、本日の産経「民主党解剖⑤」で詳しく書いているのでここでは触れませんが、その近藤氏の小沢氏に対する質問が興味深かったので紹介します。関連部分は以下の通りです。

 

近藤氏 そこで小沢代表、せっかくの機会なので、国民を代表する代議士として、また政権交代を命がけで実現しようとしている民主党の国会議員として二つ、おうかがいしたいと思います。

 一つ。素性のなかなか分かりにくい団体から、なぜ長期間にわたって数千万円を越える献金をもらい続けたのか。何ら見返りを求めない、こういう巨額のお金について、代表ご自身は本当に心の底から違和感をお感じにならなかったのか。国民はこの点を疑問に思っていると思います。

 二つ目。さまざまな企業やまた個人の方から、代表が寄付をされた政治献金。具体的に何を使われてこられたのか。私自身、企業献金を、団体献金をいただいております。企業・団体献金がなければ、5年間の浪人生活、活動することはできませんでした。だから、だからです。小沢代表は誰よりもまっとうな形でその資金を使われていると信じております。だからこそご自身の事務所の資金の流れについて、この国民の素朴な疑問について、ご自身の言葉で説明をされていただきたい。それが代表の責務であろうかと思います。信なくば立たずでありますので、どうぞお答えいただければとお願い申しあげます。以上でございます。》

 

 …もっともな疑問であり、小沢氏が何度も記者会見で「私の政治資金は透明だ」と強調しながらまともに答えていない部分でもあります。2番目の質問については、不動産を買うのに使っていたのでしょうが、まあ民主党所属議員だけでなく、国民も当然知りたいところだと思います。ところが、代議士会は衆院本会議前に行われるものなので時間制限があり、この質問に対する小沢氏の回答はありませんでした。やれやれ…。

 

 ところが、弊紙記者の独自取材で、代議士会後に小沢氏から近藤氏の携帯に直接電話があり、「さっきは時間がなかった。今度、来てほしい。いつでも(質問に)答える」という話があったという情報が入ってきました。この時点では私は、へえ、やはり小沢氏も今回は気を遣っているんだなあ、記事の中にエピソードとして盛り込もうと思いました。ちょっといい話ではないかと。

 

 でもことはそう簡単には運びません。夕方になって民主党側から報道各社に、①小沢が近藤に電話をかけた②現在、近藤の質問への回答を作成中で、でき次第、衆参両院議員にファクスかメールを送る③その文書は野党記者クラブにも提供する――との連絡が入りました。なんだ、各社の共通情報になるなら、記事に盛り込むまでもないかなどと考えていたところ、そう時間をおかずに小沢一郎名でその回答文書が配布されました。関連部分は次のようなものでした。

 

 《同志各位からいただいておりますご意見、そして声なきご意見、お励まし、身を引き締めて受け止めさせていただきますとともに、もっと丁寧にご説明し、ご質問にもお答えすべきところ、時間の関係もあり、十分なお話ができなかったことを申し訳なく存じます。

 しかし、各位のお気持ちをしっかりと踏まえ、今後の私の活動を通じて体現させていくことをお約束いたします。

  私の政治資金につきましては、申し上げましたとおり、多くの企業、団体、それにも増す個人の方から応援いただいており、その全てを法令にもとづき厳密に収支報告書に記載させていただいております。また支出につきましても、既に記者会見でも述べさせていただきましたが、収支報告書に正確に漏らさず記載させていただいております。収支報告書は総務省のホームページでご覧いただけますので見ていただければと存じます。また、私の政治活動に対しますご意見はいつでも、引き続き賜りますようお願いいたします。》

 

 …いや、だから、その、何ですかこれは。質問には全然、何も答えていません。小沢氏は現在、公設秘書が起訴されたばかりとあって、これからの裁判対策上もあまり手の内を明かしたくないのかもしれませんが、それにしてもわざわざ近藤氏に直接電話をかけ、わざわざ報道各社に事前に文書提供まで通知しておいてこれですか。と、がっくりくると同時に、やはり小沢氏らしいなあとも感じた次第です。小沢氏はやたらとオープンだとかディスクロージャーだとか言いたがりますが、巧言令色なんとやらを地で行っているような。

 

 というわけで、約2週間にわたった野党担当記者の応援業務をひとまず終わり、来週からはまた外務省に戻ります。北朝鮮が4月4日にテポドン2号の改良型を発射するのはほぼ間違いないと見られていますし、まだまだ忙しい日々が続きそうです。