さきほど、首相官邸で行われた麻生太郎首相の最後のお別れ記者会見に出てきました。1年間弱の麻生氏の任期中、この人とあまり縁のなかった私は、一度も記者会見も街頭演説も直に見る機会がなかったので、間近でその模様を見るのはきょうが初めてでした。初めての日が最後の日だというのも皮肉な巡り合わせですが、それはともかく、麻生氏は「日本の未来は明るい」という言葉を「国民の皆さんへのメッセージとしたい」と述べていました。そうであってほしいと心から願うものであります。

 

 さて、鳩山内閣の顔ぶれが出そろいましたね。いろいろと突っ込むべきところ、考察するべきところがたくさんあるのですが、一度には書ききれないし、そんな時間的余裕もないので、本日はとりあえず、「拉致問題」に関して気になることをちょっと触れて置きたいと思います。やはり、この点はどうしても押さえておきたいので。

 

 それは、閣僚の中に、二人も横田めぐみさんら拉致被害者の拉致実行犯で韓国で死刑判決を受けたシン・グァンス工作員の助命・釈放嘆願書に署名した人物がいたことです。二人とは、ご存じの通り菅直人国家戦略局担当相と千葉景子法相のことです。この問題に関しては2006年8月13日のエントリ「極めてまぬけな議員たちを忘れない」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/25194/)でも書いていますが、いやはやこういう日が現実に訪れるとは。民主党出身で、現在の参院議長である江田五月氏もこの署名を行っていますが、彼らはこうした高位・高官の職に就く前に、きちんと拉致被害者と家族にその非を詫びるべきだと素直に思うのです。

 

 拉致問題のかかわりでいうと、昨日は官邸を拉致被害者の有本恵子さんの父、有本明弘さんが訪れました。官邸を離れる中山恭子首相補佐官(拉致問題担当)にあいさつに来たものでした。長年、拉致問題で頑張ってきた中山氏は、現在は自民党参院議員でもあるので官邸を去るのは仕方がありませんが、民主党政権が今後、拉致問題にどう取り組むのかはとても関心があります。

 

 というわけで、本日は中山氏との会った後の有本氏と記者団のやりとりを紹介します。

 

有本氏 中山さんが今日で終わりということで最後のお別れのあいさつをしてきた

 

記者 政権交代に関し拉致問題で中山氏とはどのような話をしたのか

 

有本氏 政権が代わっても長いつきあいで信頼関係は崩れないと思っている。連絡をとりあってやっていこうと思う。(中山氏も)同じような話をしていた

 

記者 民主党政権に拉致問題にどのように対応してもらいたいか

 

有本氏 民主党政権になっても自民党政権でも、拉致されていることに関しては、救済せなあかんというのは日本国民の大多数の一致した認識だから、鳩山さんと言えども、この問題は無視していかれないのではないかと思う

 

記者 鳩山氏や新政権に要望することは

 

有本氏 私たちは新しい政権はマニフェスト通りにやっていくと思うので、そのことにはとやかく言わないが、私はこれ(拉致被害者帰国運動)を20年やっている。自社訪朝団が行った時点からお願いしてきたいきさつがある。だから、「なんちゅうことをやってくれたんやろな」という印象は、今でも鮮明に覚えている。

分かりやすく言うと、(自社訪朝団に参加した)石井(一民主党副代表)さんが行って北朝鮮外交をやって金丸さんが行ったが、拉致の話は向こうに全然言っていなかった。私は当事者だった。訪朝する人は、向こうが要求している過去の償いの話を持っていった。そのとき拉致という声はなかったが、(恵子さんら)3人が暮らしているという手紙が来ていた。それすら向こうに提示をしなかった。石井さんはそれを「言った」というが、(北朝鮮側に)「何の証拠があるんだ」と言われて引っ込めたというようなことを取材では言っているようだが。引っ込めるなら、訪朝団も引っ込めるべきだった。行って話して帰ってきた。

 今なら大きく取り上げられるかもだが、20年前は週刊誌が土下座外交だと書いただけで終わった。だれも批判していない。そういう経験を踏んできて、20年間辛抱してきて、いままで運動をやってきた。それでも自民党では解決できなくて、今度政権が代わって民主党になった。

自民党よりも民主党のほうが、もうちょっとこの問題に関してはしっかりしてもらいたい。訪朝した金丸さんの子分や、小沢一郎さんは。そういう人が政権を担うんだから、責任を持って解決してほしいと私は思っている。(中略)

小沢さん、石井さんが民主党の上位(の地位に)いるなら、責任を持って解決してもらいたい。こういうことを言うのは家族会の中で私1人だ。私は外務省にも言ってきた。問題を避けると大変なことになると。金日成がいるときに、この話をしていたら、もっといい方向に進んでいたと思うわ。過去の償いせよの話をしてんだから。

小沢さんは金丸さんが行ったときの(自民党)幹事長で、外務省との会合の場にも小沢さんが出て行ったんやで。自社訪朝団のとき。死ぬまでこんな事続くのかなと思う。真実はやっぱり伝えてくれるのがメディアの仕事やで。そういうことを国民の方に知っていただきたいので、よろしくお願いします。》

 

 …民主党には、この有本さんの「期待」にぜひ、応えてほしいものだと思います。それにしても千葉氏が法相とはなあ。弁護士だから、というのはあるでしょうが、今回の法相ポストは、西松建設の違法献金事件での小沢氏公設秘書の捜査や、鳩山氏の故人・匿名献金捜査のあり方、行方に目を光らせることが期待されているところでしょうが…。それだけ、旧社会党系議員は小沢氏の信用を得ているということでしょうか。赤松広隆氏を閣僚に推薦したのも小沢氏だと聞いていますし。

 

 このほか、亀井静香氏の郵政問題・金融相、福島瑞穂氏の少子化・男女共同参画担当相など、ウオッチしなければならない、何が飛び出すか分からない範囲があまりに広く、正直、手が回りそうにありません。弱りました。