いくら政策決定に直接関与することのできない野党になったからと言って、長年政権の座にあった自民党の総裁選の扱いがあまりにも小さい(少ない)のではないか、とのご指摘を受けました。実は、政権交代が夢幻と思われていたころの民主党代表選に比べれば、むしろ人を割いて取材にあてているぐらいなのですが、「だからと言ってこのままでいいのか」とちょっと考えてみました。

 

 個人的、社内的な事情を述べると、本日弊紙の官邸担当チームは鳩山政権の諸課題に関するある程度ボリュームのある記事を3本出稿し、うち1本だけ採用されて紙面化されたという状況です。なので、そうそう現在の自民党を大きく取り上げる紙面スペースもなければ、現場の私たちにも余裕がないのは本当です。でも、私はこうして個人ブログを持っているのだから、もう少し情報提供に務めるべきだったかと反省した次第です。

 

 というわけで本日、熊本市のホテルで開かれた3候補討論会の中から、いま注目を集めているダム問題に関する部分を抜き出して紹介します。その他の問題も議論というか質疑がありましたが、前々々回のエントリで報告した内容と大きくは変わらないと判断したことと、イザ記者ブログの1万字制限もあって割愛します。他意はありません。

 

 記者 今日、前原国交相が熊本に入り、川辺川ダムについて地元と意見交換をしている。新しい民主党政権が川辺川ダム、八ツ場ダムを公共事業の象徴と位置付け中止を打ち出しているが、新しい自民党として個別の川辺川ダム問題と公共事業のあり方、地方の産業構造のあり方について。

 

 ■河野太郎氏

 自民党の無駄遣い撲滅プロジェクトで私のチームは沖縄の公共事業のことをずいぶん、調査を致しました。沖縄は政府が一本化して公共事業を沖縄に出していて、相当な金額を毎年投入しているが、実は県民所得の本土と沖縄の格差、失業率の本土と沖縄の格差はほとんど変わっておりません。つまり、あれだけ公共事業を政府が一括して予算計上してやったにも関わらず、沖縄の経済のために本当になっているのかというのは非常に疑問でした。

 むしろ、もっと違うやり方があるんではないかと我々は提言をしました。ですから、国が何か大型の公共事業を決めてそれを地方に出すというのではなくて、むしろ地域にきちんと財源をお渡しをして、それで何がよいのかというのをむしろ地域に考えていただくようなやり方にしないと駄目なんだと思います。

 国からお金が振ってくるものならやる。だけど、自分のお金ならそれは考えるというのが色々な県でありました。ですから国が公共事業の予算を計上してこれは大型事業として国がやりますというやり方は私は改めていかなければいけないと思います。

 川辺川のダムについては、色々なご意見があるのは知っておりますけれども、残念ながら私はそこまで詳しくありませんので、ここでどうこうというのは残念ながら差し控えざるを得ない。申し訳ありません。

 

 ■谷垣禎一氏

 私も確かに今までの公共事業では、国からカネが降りてくるならやってもいいというようなことがなかった訳ではないと思います。ですから、地方の意見といいますか、主体性というものをもう少し活かした仕組みというものはないかな、私自身もそういう方向を模索すべきではないかと思います。

ただ、今度の、実は川辺川、熊本県が止めるという決断をされました時には私、国土交通大臣でした。それから今度の八ツ場ダムのああいう経過を見てますとね、やっぱりこれだけの大きな公共事業になりますと、相当時間がかかります。長い経緯でその地域の生活が正に丸ごとかかってくる訳でありますので、熊本の場合には国の立ち場からしますと県でそう言う決定をされて、これ以上進めるなというご判断であった訳ですが、この川辺川でも本当の地元ではそれに必ずしも同意しておられないということがあると聞いております。

それから、八ツ場ダムの場合は、地元でも色々なご意見があるんでしょうけれども長い経過で進めるということでやってこられました。だから川辺川と八ツ場ダムとは若干違うかも知れませんが、やっぱり地元の生活、地域のあり方、こういうことも含めてですね、止めるという決断も私はもう少し丁寧にしなければいけなかったのではないか。川辺川を見るとそういう思いが致します。

それともう1つは、じゃあ止めた時の生活再建とか色々なことがございますが、特に治水面に関しますと、ダムに代わる、このごろは集中豪雨みたいなのも多くなっておりますのでね、そういう何年かに一度の大災害が起きたときの対応はどうだというと、中々これは専門家でないからよく分からないですけども、中々頭の痛い問題です。そこら辺まで十分視野を広げて議論しないといけないと思います。

 

 ■西村康稔氏

 まず公共事業一般については、私はもちろん無駄なものはやる必要はないと思います。道路特定財源を、2兆5000億円の財源でありましたけれども、一般財源化、私も主張しましてそれが実現を致しました。今年の予算で言えば、色々な計算ありますけども、約5000億円が一般財源化され、そのうちのかなりの部分、医療や福祉に回っているという風に思っています。そういう意味では新しい財源として無駄な公共事業を省いてそうしたところに回していく。私は民主党以上にコンクリートから命へということを実践しているのは自民党だという自負があります。

 一方で、必要な公共事業はやらなきゃいけません。先程の水害、洪水対策の事業であったり、あるいは新しいタイプの環境ですね。すべての公共施設、中学から高校や小学校まで太陽光パネルを付けていく、そうした新しいタイプの事業はやっていかなければならないと思います。

 個別の川辺川ダム、八ツ場ダム等は先程の話の通り、知事の判断が違いますので一概には言えませんけれども、私は総裁になれば、直ちに特別チームを作って調査団を派遣したいと思います。そして、住民の意見を聞き、地元の議員の皆さん、知事、市長、首長の皆さん、もちろん当事者だけでなく周辺の流域まで関係有るわけですから、そうした人の意見をしっかり聞いて、さらに代替の治水対策、どんなものがあるのか、それにいくらお金がかかるのか、あるいは止めた場合にいくら補償しなきゃいけないのか。そうしたことを総合的に判断していくチームを作りたい。調査団を派遣したいという風に思います。

 歴史があり住民の生活がありますから、その人たちの声を重視をしてあげたいという気持ちが非常に強いわけでありますけれども、調査団を派遣していきたいという風に思います。

 

 …もうしばらくすると、鳩山首相が米国から帰国します。新政権はいろいろと打ち上げていますが、まだこの先どうなるか(おそらく当の担当責任者も含めて)分からないことばかり(まあ、現時点では仕方ないとも思いますが)なので、首相が執務室に入る来週からは具体的方向性が少し見えてくるような様々な動きがあることと思います。

 

 また、できるだけ紙面になりにくいこと、紙面からこぼれたことを拾って報告しようと考えています。鳩山政権も課題山積ですが、それを報道する側の私たちも何がなんだかどうなるんだか、「ひーひー」「ぜいぜい」言いながら走るしかないのが現状であります。