沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場は、現在の危険な状態そのままに固定化しそうですね。せっかく沖縄県知事も名護市長も移設を容認するという「惑星大直列」(外務官僚)並みの千載一遇の好機が訪れていたのに、宇宙人(とその背後にいる闇将軍)が社民党なんかに引きずられ、元の木阿弥にしてしまいました。いや、今回の日本の対応に懲りた米側が、今後は移設協議にまともに応じない可能性もありますから、逆に大きく後退したと言った方が正確でしょうか。

 

 で、本日、鳩山政権は発足丸3カ月となったわけです。この間、いったい何をしてきたのか。政府関係者は口をそろえて「まだ3カ月だ。もっと長期的に見守ってほしい」と言いますが、日本にそんな余裕があるのかと心配です。鳩山首相ご本人は今朝、記者団に「一生懸命」であることを強調していましたが、そんなことを評価しろと言われても困ってしまいます。

 

 今回はその今朝の鳩山首相の記者団とのやりとりメモを読みながら、なぜかマキアヴェッリの言葉が思い浮かんで仕方なかったので、テキトーに挿入してみました(塩野七生氏訳文)。ただ読みにくくなっただけかもしれませんが、なんか今日はもう疲れてしまって…。

 

 《君主にとって最大の悪徳は、憎しみを買うことと軽蔑されることである。それゆえに、もしもこの悪徳さえ避けることができれば、他に悪評が立とうと、なんら怖れる必要はなくなる。(中略)軽蔑は、君主の気が変わりやすく、軽薄で、女性的で、小心者で、決断力に欠ける場合に、国民の心中に芽生えてくる》(「君主論」)

 

記者 総理、おはようございます。今日で政権発足からちょうど3ヵ月なんですけれども、総理ご自身この3ヶ月を振り返って採点されるとしたら何点でしょうか。

 

 《いかなる政体をとろうと、国家の指導者たる者は、必要に迫られてやむをえず行ったことでも、自ら進んで選択した結果であるかのように思わせることが重要である》(「政略論」)

 

 《弱体な共和国にあらわれる最も悪い傾向は、なにごとにつけても優柔不断であるということである。ゆえに、この種の国家の打ち出す政策は、なにかの圧力に屈したあげく、やむをえず為されたものになる。(中略)この「弱さ」が、強大な外圧によって吹きとばされでもしないかぎり、この種の国家は、あいも変わらず優柔不断をつづけていくことになろう》(「政略論」)

 

鳩山氏 まぁいろいろと努力はしました。政権交代に対する国民の皆さんの思い、そしてやはり変わって欲しいという強い思いに対して、ある意味での国民の皆さんの、まだまだ十分じゃないよというお気持ちも感じています。スタートしたばっかりですから、全てがまだ完璧だとは言えないと思います。

 

 《国家にとって、法律をつくっておきながらその法律を守らないことほど有害なことはない。とくに法律をつくった当の人々がそれを守らない場合は、文句なく最悪だ》(「政略論」)

 

ただ、一生懸命努力していることだけは認めていただきたいし、ま、普天間のこと、あるいは予算のこと、閣僚の中でね、いろいろと声があって、指導力がどうだという話があります。それは分かっていますが、いずれ国民の皆さんもこの答えが最適だったなということが分かる時が来ると、私はそう思っていますから、自分としては一生懸命やっていると、そのように感じています。

 

 《人を率いていくほどの者ならば、常に考慮しておくべきことの一つは、人の恨みは悪行からだけでなく善行からも生まれるということである。心からの善意で為されたことが、しばしば結果としては悪を生み、それによって人の恨みを買うことが少なくないからである》(「君主論」)

 

 《民衆に関して、次の二つのことに注目してほしいのだ。第一は、民衆というものはしばしば表面上の利益に幻惑されて、自分たちの破滅につながることさえ、望むものだということである。第二は、そしてもしも、彼らから信頼されている人物が、彼らに事の真相を告げ、道を誤らないよう説得でもしなければ、この民衆の性向は、国家に害を与え、重大な危険をもたらす源となる、ということだ》(「政略論」)

 

記者 普天間の移設問題についてなんですが、昨日まとまった政府の方針について、アメリカの海兵隊のトップは遺憾だというふうに不快感を示しているんですけれども、今後アメリカとの交渉において、理解を示されるとお考えでしょうか。

 

 《指導者ならば誰でも、次のことは心しておかねばならない。それは、個人でも国家でも同じだが、相手を絶望と怒りに駆りたてるほど痛めつけてはならないということだ。徹底的に痛めつけられたと感じた者は、もはや他に道なしという想いで、やみくもな反撃や復讐に出るものだからである》(「政略論」)

 

鳩山氏 そりゃ海兵隊の方が、その、そりゃ満足するというふうには思いません。しかし、日本の政府としては政府の考えがあるわけですから、それでアメリカと交渉して結論を得ていきたいと思っています。私は今の沖縄の現状を考えてみれば、これ以上の結論はないと、そのように思っていますから、ぜひ交渉のなかでね、理解を求めていきたい、そう思っています。

 

 《金銭で傭うことによって成り立つ傭兵制度が、なぜ役立たないか、の問題だが、その理由は、この種の兵士たちを掌握できる基盤が、支払われる給金以外にないというところにある。これでは、彼らの忠誠を期待するには少なすぎる。彼らがその程度のことで、雇い主のために死までいとわないほど働くと期待するほうが、甘いのだ》(「政略論」)

 

記者 総理、まず2点。今これ以上の結論はないとおっしゃってましたけれども、どういったことを思い描いていらっしゃるのかということと、昨夜ルースさんとお話されてですね、息子さんがスタンフォード入りされたというお話以外どういったことをされたのかなというのをお聞かせ頂ければ。

 

 《わたしは断言してもよいが、中立を保つことは、あまり有効な選択ではないと思う。とくに、仮想にしろ現実にしろ敵が存在し、その敵よりも弱体である場合は、効果がないどころか有害だ。中立でいると、勝者にとっては敵になるだけでなく、敗者にとっても、助けてくれなかったということで敵視されるのがオチなのだ》(「手紙」)

 

鳩山氏 それは2人の間で、皆様方にお話を申し上げることができないこともあります。ただ、私は岡田外務大臣同席のもとで、岡田外務大臣がルース大使と何度もね、議論を申し上げながら理解を求めて頂いています。で、その方針に沿ってやりますからという思いを私の方からも、お伝えをしたということです。

 

 《一国の国力を計る方法の一つは、その国と近隣諸国との間に、どのような関係が成り立っているかを見ることである。もしも近隣の諸国が、友好関係を保ちたいがために貢納してくるようならば、その国は強国と言えよう。反対に、弱体なはずの近隣諸国であるのに、それらの国々対し金銭をもって援助する関係である場合、その国家の国力は弱いと思うしかない》(「政略論」)

 

記者 ルース大使は理解されたんですか。

 

 《弱体な国家は、常に優柔不断である。そして決断に手間どることは、これまた常に有害である。このことについては、わたし自身確信をもって言える。国家活動において、ものごとをあいまいにしておいたことが、フィレンツェ共和国にとっていかに有害であったかは、わたし自身が体験したことであったからだ》(「政略論」)

 

鳩山氏 私は、私どもの考え方は理解してくださっていると思います。それは満足しているかどうかということは別ですよ。しかし、理解をしてオバマ大統領にもお伝えをするという思いを伝えて頂いています。

 

 《自らの安全を自らの力によって守る意志をもたない場合、いかなる国家といえども、独立と平和を期待することはできない》(「君主論」)

 

 今晩は、民主党の小沢一郎幹事長らが平成22年度予算に関する重点要望を官邸に持ってきました。「子ども手当」に所得制限を設けたり、暫定税率を維持したりと、衆院選のマニフェストと異なる内容もありますが、鳩山首相をはじめ政府側は「国民の要望だと受け止める」と唯々諾々の様子です。なんだかなあ。