昨日は鳩山由紀夫首相が自身の偽装献金事件をめぐり、謝罪と釈明の記者会見を行いました。首相としてでも民主党代表としてでもなく、「一衆院議員として」の行為だとして、首相官邸や民主党本部ではなく、わざわざホテルを会見場にするなど、姑息かつカネをかけたやり方をするものだと感じました。「公人」である首相としての立場で会見すると、即座に進退に問われかねないので、私的行為であることを強調したのですが、こういうやり方が通用する、ごまかせると考える甘さがどうにも鼻につくのです。

 

 で、この事件の問題点や疑問点は、産経も含め各紙が紙面で書き尽くしている感があるので、私がここで付け加えることはあまりありません。ですので、本日は、在京各紙の社説(産経の場合は「主張」)が、どう書いているかを少し備忘録代わりに記しておこうと思いました。多少の濃淡はあれ、各紙とも厳しい論調です。当然ですが。

 

    産経 見出し「首相の政治責任は明白 『脱税』の疑い徹底解明せよ」

 《最大の問題は、母親からの約12億6千万円にも及ぶ資金提供である。首相は6億円を超える贈与税を払う意向を示したが、これは修正申告して済む問題ではない。国政の最高責任者が、国民の義務である納税を怠り、発覚しなかったら知らん顔を通す-という脱法行為が問われているのである

 《会見では「今回の件は私腹を肥やしたとか、不正な利得を受けたことはない」とした。過去の発言は自分には該当しないと釈明したのは、あまりにもご都合主義ではないか

 《身内からのカネなら悪質でないとの考えがあるのだとすれば、大きな誤りだ。衆参両院が定めた政治倫理綱領でも、政治不信を招く公私混同を断つことが重要課題に挙げられている

 

    読売 見出し「鳩山首相の政治責任は重大だ」

 《首相は記者会見で、母親からの巨額の資金提供について「全く承知していなかった」と改めて強調した。首相がいかに裕福な家庭環境で育ったとしても、この説明は信じがたい

 《(「故人献金」問題が発覚した6月)当時は、衆院選が迫っていた。自らの保身と、選挙への悪影響を避けるため、母親からの資金提供を隠していたのなら、国民に対する背信行為である

 《資金提供が発覚しなかったら、6億円以上の納税を逃れていたことになる。こうした行為がまかり通れば、まじめに納税しようとする国民の気持ちを踏みにじり、申告納税制度の根幹が揺らぎかねない

 

    朝日 見出し「『続投』で背負った十字架」

 《若手議員時代から政治改革や政治資金の透明化を唱えてきたのは鳩山首相自身である。本人は不起訴であっても、国民の信頼を裏切ったことについて、政治家としての責任は極めて重い

 《動機はどうあれ、長年うそを書いてきたことは、政治家とカネの関係を国民の監視の下に置くために作られた政治資金規正法を空洞化するものだ

 《提供された資金を長年にわたって申告していなかったことは、納税者からみると、脱税に類する行為とみられても仕方がない

 

    毎日 見出し「説得力欠いた鳩山会見」

 《首相は実母からの巨額な資金提供も再度「知らなかった」と釈明したが、「カネの話をすることがなかった」という裕福な家庭だったからというだけでは、「首相に国民生活の苦しさが分かるだろうか」と疑問を感じる人が多いだろう

 《巨額資金を何に使っていたかも疑問が残る。会見では政治活動だけでなく、プライベートな支出までもすべて秘書任せだったと認めたが、そこには相当な公私混同があったのではないか

 《事件が発覚しなければ、結果的に税金逃れになっていた可能性がある。納税者意識の低さを指摘されても仕方がない

 

    日経 見出し「元秘書起訴で首相の責任は極めて重い」

 《現職の首相が、事情聴取を受けたのにも等しい上申書提出に追い込まれたこと自体、極めて異例で、政治責任は免れない》

 《実母からの巨額な資金提供を知らなかったと説明されて、有権者は信じるだろうか。贈与税を払えば済むという話でもない

 《今回の事件は首相の資質への疑念を強め、指導者としての信頼感を失墜させかねないものだ》

 

    東京 見出し「『知らぬ』で疑惑消えず」

 《現職首相が嫌疑を持たれたこと自体が、憲政史上でも異例だ。その重大さを自覚してもらいたい》

 《それほど巨額な資金が渡っているのに、長年、納税していなかったのはなぜか。「脱税ではないか」という声がわき出ても当然だろう》

 《民主党のトップ二人が「政治とカネ」で泥にまみれていては、民心が政権交代からますます離れる》

 

 …日経は「首相としての資質への疑念」について書いていますが、今日のような展開となってくることは、衆院選前から分かっていたことでした。私も8月11日付のエントリ「鳩山由紀夫氏は首相が務まるのかという疑問」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/1166114/)で、「大丈夫か?」と指摘しましたが、事態はなるようになってきたというところでしょうか。

 

 鳩山氏の資質というか、「軽さ」については、こんなエピソードを聞いたことがあります。昨年3月、国会は日銀総裁人事をめぐり紛糾していたころのことです。当時の福田内閣は新総裁に武藤敏郎副総裁(元財務次官)を起用する考えで、実は民主党もこれを内諾していました。当時、町村信孝官房長官は鳩山由紀夫幹事長から「武藤さんで決まりだ。クビをかけてもいい」と言われていたそうです。

 

 ところが、これが「政局が第一」でとにかく政府・自民党に何でも反対したい小沢一郎代表の意向でひっくり返り、民主党は前言を翻して武藤氏の総裁就任への反対を決めました。町村氏が鳩山氏に「どうなっているんだ」と抗議すると、鳩山氏はなんと「ケセラセラです」と笑って答えたということです。鳩山氏は自分の言葉に責任を持たない、というよりも以前と違うことを言うことについてまずいとも悪いとも思っていないという話は枚挙にいとまがないのです。

 

 というわけで、私は昨日の記者会見(原稿処理に負われ、残念ながら現場にはいけませんでした)での鳩山氏の神妙な面持ちにも反省の言葉にも、極めてしらけた気持ちで接した次第です。鳩山氏をよく知る人の多くは「本当にいい人だ」というのですが、それっと政治家、特に首相の資質としては別にほめられた話ではないでしょうし。

 

 鳩山氏は今朝、記者団にこう語りました。

 

 「確かに鳩山の家は恵まれていたと、それは事実だと思います。ただ私は、むしろそういう政治ではいけないという思いのもとで、政治改革に炎を燃やしてきた」

 

 何のことやら…。