今朝の産経社会面に、民主党の小沢一郎幹事長の元秘書で、小沢氏の資金管理団体の会計事務担当だった衆院議員の石川知裕氏が、地元で報道陣に対し「やましいところはない」と語ったという記事が載っていました。この石川氏に関して、今朝の日経は1面で「石川議員 在宅処分へ」との見出しで、「特捜部は来年1月の通常国会までに、在宅のまま刑事処分を出す方向で検討」と報じていましたが…。

 

 石川氏といえば、ご存じの通り、先の衆院選の北海道11区で故中川昭一財務相を破り、当選してきた議員です。どうしてそんな分かり切ったことを今さら書くかというと、昨日、会社に中川家から香典返しとして、下の写真のような図書カードが郵送されてきたので、連想せずにはいられなかったのです。私は本代にはいつも困っているのですが、このカードはちょっと使えないですね。

 

      

 

 また、今朝の産経政治面の「平成21年 鬼籍に入った政治家」の欄にも、当然のことながら中川氏の名前がありました。「北朝鮮による日本人拉致問題や歴史教科書問題などで活躍した」などと、他の政治家と一緒に簡単な記述があるだけでしたが…。この政治家のことを決して忘れてはいけないと改めて思い直しました。

 

 今年を振り返ると、言うまでもなく政権交代があった激動の年であり、「政治の年」でしたが、意外なほど拉致問題にスポットが当たることは少なかったように思います。やはり、中川氏の死去もあり、政治のメインプレイヤーから拉致問題を重視し、積極的に取り組み、あるいは発信する人が減ってしまったということかもしれません。

 

 そこで本日は、少し古い話なのですが、昨年9月16日から19日まで、福田内閣の中山恭子拉致問題担当相が訪米して米国の関係者と拉致問題や日米関係について意見交換した際のリポートの一部を紹介しようと思います。手に入れたのはしばらく前なのですが、取り上げる機会がないまま今に至ってしまいました。ブッシュ政権時代の話なので、オバマ政権とは多少の温度差はあるでしょうが、米側のある時期の北朝鮮に対する見方はある程度分かると思います。

 

    アーミテージ元国務副長官 「金正日の健康状態の悪化により、拉致問題が進むのが遅くなるのではないか。マケイン候補、オバマ候補にはそれぞれ良いアドバイザーがおり、日米関係という観点からは両氏のいずれが大統領になっても変わらない。給油支援の件は日本に努力してもらっている。是非、継続してもらいたい」

 

    ハムレ戦略国際問題研究所(CSIS)所長 「米国は核問題に集中し過ぎてきた。日本の拉致問題を注視し、もっと考えるように転換していく必要がある。拉致被害者の対象が際限なく続くのには抵抗があり、解決の定義がないと米国としてもやりようがない」

 

    ブラウン元CIA東アジア部長 「金正日が8月14日に脳梗塞で倒れたことは間違いない。金正日は決して核を放棄しないだろう。北朝鮮にとって核は国の基盤である。6カ国協議はすでに終わった。6カ国協議に何の成果も期待してはいけない。金正日は6カ国協議でとれるものは全て取った。経済制裁は北朝鮮には極めて有効だ。米国は、マカオのBDA(バンコデルタアジア、北朝鮮と関係の深いマカオの銀行)に対する制裁を実施したが、効果は絶大だった。拉致被害者の『再調査』など全くナンセンスだ。北朝鮮政府は、拉致被害者の実態を全て承知している。拉致被害者の生存を前提として交渉を行うのは当然だ。拉致被害者は価値があり、北朝鮮が価値のあるものを捨てることは考えられない。金正日の病状を考えた場合、北朝鮮の政策決定者としてのキー・パーソンは内妻のキム・オクと、張成沢だと思う」

 

    グリーンCSIS上級顧問 「小沢政権だと、テロ対策特別措置法延長、在日米軍駐留経費問題が心配だ。次期大統領候補の対北朝鮮政策に関し、マケイン候補は、拉致問題は重要であり、また、テロ支援国家指定は解除しないとの考え方を持っている一方で、オバマ候補は、現時点で対北朝鮮政策が明らかでなく、また、同候補のアドバイザーは対北朝鮮融和派と強行派に割れている」

 

…率直にいって、鳩山政権の拉致問題の対応方針はまだよく見えてきません。安倍政権時代に拉致対策本部が決定し、その後も福田、麻生両政権で引き継がれてきた①すべての拉致被害者の即時帰国を強く求める②厳格な法執行を引き続き実施③さらなる制裁措置を検討――など6項目の対応方針については踏襲しない考えをにじませている一方で、新たな方針は示していないからです。

 

 自民党政権は小泉内閣以降、「対話と圧力」という言葉を用いてきましたが、鳩山由紀夫首相は10月の所信表明演説で「拉致問題については、考え得るあらゆる方策を使う」というにとどめ、「圧力」という言葉は使いませんでした。この状態は、よく言えば柔軟ですが、下手をすると北朝鮮の仕掛けに原則なく簡単に嵌ってしまう恐れもあると考えます。

 

 しかし、北朝鮮の実態が上記のリポートでブラウン氏が指摘するようなものであるとすれば、自ずと日本のとるべき道は明らかではないかと思うのです。来年は、もっと拉致問題が関心を集め、解決への方途が示される年であってほしいと心から願います。