民主党の小沢一郎幹事長は23日、都内のホテルで東京地検特捜部の事情聴取を受けた後、記者会見するとともに説明文書を配布しました。その模様は、訪問者の皆さんもテレビや今朝の新聞でよくご存じでしょうからあまり繰り返しませんが、到底納得できるようなものではありませんでした。あれでいろんな疑問点について「理解しろ」と言われても無理があります。

 

 まあ、初めての事情聴取で、検察も小沢氏もいきなり手の内をすべてさらすとも思えませんし、いきなり決着がつくわけもありませんね。ただ、それにしても、よく分からない話でした。小沢氏は、陸山会に貸し付けた4億円の原資に関し、こう説明しました。

 

 ①昭和60年に湯島の自宅を売却して残った約2億円を積み立て、平成元年11月に銀行口座から引き出した②平成9年12月に家族名義の口座から引き出した3億円③平成14年に家族名義の口座から引き出した6000万円--を東京都港区元赤坂の事務所の金庫に保管していた。平成16年10月には金庫に4億数千万円残っており、4億円を陸山会に貸し付けた。

 

 つまり、計5億6000万円を小沢氏個人とその家族の名義の口座から引き出し、1億円と少しは何かに使ったけれども、それでも「タンス預金」はまだ4億数千万円ありました、ということですね。

 

 小沢氏はカネに細かく、実際、陸山会に貸し付けたカネについても、しっかりと平成15~17年の3年間で1000万円以上の利息を受け取っています。そういう人が、何で長期にわたって利子のつかない形でカネを寝かしていたのかという疑問も湧きますが、もう一つ、どうにも分からないことがあります。

 

 それは、①の部分です。小沢氏は「湯島の自宅を売却して残った2億円を積み立て」と説明していますね。これについては、元秘書で衆院議員の石川知裕容疑者が土地購入の原資について「小沢先生が父親から相続した遺産」と供述していることと、一応、符合しています。

 

 ただ、これは以前のエントリでも産経紙面でも書いたことですが、小沢氏自身は昭和58年1月の産経のインタビューに「遺産はなかった」と答えているわけです。そして、昭和61年2月の自治相時代の閣僚の資産公開時には、閣僚のうち2番目に不動産資産が多いことが発覚し、読売新聞に対し「最近、湯島の家を売って買い換えたもので、両親が残してくれた土地の資産価値が出ただけだ」と語っています。

 

 「湯島の家」は遺産のうちに入らないという感覚だったのか、どうなのかは分かりません。ともあれ、この資産公開時に示された小沢氏の資産は以下の通り(実勢価格とは異なるはず)です。

 

 【土地】 宅地 自家用 東京都世田谷区  1億5790万円

                岩手県水沢市     3363万円

            原野 静岡県東伊豆町       1万円

 

 【建物】住宅及び事務所 岩手県水沢市      339万円

             住宅 岩手県水沢市            321万円

 

 【預貯金、有価証券】 株式              466万円

 

  【貸付金、借入金】                   なし

 

 また、普通預金に関しては「あるにはあるが、公開しなくてもいいというので出さなかった」としています。このため、普通預金分がいくらあったかは分かりませんが、株式は多少あるにしても、外形上は現金は(少なくとも銀行口座には)あまり持っていなかったように見えます。

 

 小沢氏は、「最近、湯島の家を売って買い換えた」と読売に語っていますね。で、ここで気になるのが、平成5年12月27日付の朝日新聞の記事なのです。これは、「小沢一郎氏 世田谷区の土地・建物 取引前に転売契約成立」「所有7カ月 売却益3000万円」という見出しのもので、リードにはこうあります。

 

 《小沢一郎・新生党代表幹事が東京都世田谷区内の土地・建物を購入から七カ月後に売却し、三千万円の差額を得ていたことが、二十七日公表された衆院議員の資産公開や朝日新聞社の調べで分かった。この土地はその後、小沢氏と親しい会社社長など三者の間で転売されて、短期間で一億円以上の差益を生んでいた。契約書類によれば小沢氏が売却する前に、すでにその先の売買契約までが成立しているなど、不可解な点が浮かび上がっている》

 

 この朝日の記事によると、小沢氏は現在の世田谷区深沢の家に落ち着く以前の昭和60年2月に、同じ世田谷区の下馬に2億9000万円で土地と住宅を購入し、一度も住まないまま同年9月に3億2000万円で横浜市の元会社販売業者に売却した、とあります。

 

 あくまで他紙の記事ですし、もう20数年前の話なのでいろいろと確かめようがない点もあるのですが、この記事によると、次のように事実関係が記述されているのがひっかかるのです。

 

 《この下馬の取引の直後の八五年(昭和60年)十月に、小沢氏は代議士だった父親から相続した文京区湯島二丁目の四百三十八平方メートルの土地を十四億円で売却した。そして同年十一月十九日に、現在の世田谷区深沢六丁目の土地千六百十九平方メートルを九億千百四十万円で購入。三億三千三十三万四千五百円で住宅を新築した》

 

 湯島の土地が十四億円(!)で売れたということも、そんな不動産を受け継ぎながら堂々と「遺産はなかった」と答えたことも驚きですが、この記事によると小沢氏は、湯島の土地を売る前に2億9000万円もの土地取引をする(すぐに転売するつもりだったにしろ)金銭的な余裕があったという点にも関心を引かれました。それと、あの深沢の豪邸は土地・建物で12億4000万円もしたのかと。

 

 で、14億と下馬の土地を転がした差益金3000万円の計14億3000万円から深沢の自宅代の12億4000万円を引くと、一応、小沢氏の説明の①の「湯島の自宅を売却して残った約2億円」とほぼ合うことは合うのです。でもまあ、カネの出入りがこれだけのはずはないし、これはただ、表面上の数字がたまたま符合しただけでしょうね。それで「なるほど、疑問は氷解しました」となるかというと、逆にまた違った疑問が湧くばかりという感じを受けます。

 

 しっかし、鳩山首相もそうですが、お金というものは、あるところにはあるんですねえ。民主党のトップスリーを見ていると、真面目に働くのがバカらしくなる、と言ったら言い過ぎでしょうが。とにかく、今後の捜査の行方と政界のあり方についてきちんと注視していきたいと思います。