「ところで、鳩山内閣の功績って何かあるんでしょうかね。私らから見れば、赤字国債を発行して子ども手当を出すぐらいしか思いつかないんですが」

 

 窓の外に国会議事堂を望む某省の一室で、その男は、妙に明るい口調でさらっと根本的な疑問を投げかけてきた。蛍光灯特有の白々とした光の下で、男の輪郭が妙にぼやけて見えた。虚を突かれた私が咄嗟に言葉を返せずにいると、男はさらに言葉を重ねた。

 

 「今朝の産経のコラムに、『この政権が3回予算を組めば、日本は巨大なギリシャになる』とあったけど、これ、あながち嘘じゃないと思うんですよね。みんながバラバラに際限なく支出を増やすことばかりしていて、誰もコントロールできていない」

 

 ギリシャは債務不履行(デフォルト)寸前まで経済状態が悪化している。かつて経済大国ともてはやされた日本も、このままではいずれ同じ道をたどるということだろう。男の口調はどこまでも明るいが、目は真っ直ぐにこちらを見つめていた。

 

 語り続ける男の言葉を耳で追いながら、頭の中では鳩山政権の九ヶ月の軌跡を振り返っていた。

 

政権の「命」だったはずの政治主導は、肝心の政治家たちの能力不足から無惨な結果となりつつある。日本郵政は再国有化に向かい、国民の注目を集めた事業仕分けも実効は薄かった。「対等で緊密な同盟関係」を築くはずだった日米関係は戦後最悪となり、財政規律などなきに等しく、マニフェストはなし崩し的に破られている。

 

 表の政権トップと実質トップが二人とも政治とカネの問題を連日追及され、しかも責任はとらない。これを真似してか、違法献金事件が発覚した議員は、失職寸前になってもまだ辞めずに居座りつづけている。税金は、指摘されてから支払えばいいもので、天皇陛下のご心中は勝手に忖度して決めつけてかまわないとなった。

 

 そして今回の口蹄疫問題だ。この政権には、危機管理能力もそもそも危機意識そのものもないことが、はっきりと露呈した。そんな中で、鳩山首相は終始一貫してブレ続け、くるくると同じところを飽きずに回り続けている。国民を道連れに…。

 

 「この政権は、国民から遵法精神を奪い、社会秩序を壊し、国民にアパシーとアノミーを植え付けているな。たいした破壊力だ」

 

 そんなことを思いながら外を見ると、いつのまにか鬱陶しい雨が降り出していた。傘は持っていないし、近くにビニール傘を買えるような売店もない。気持ちはますます陰々滅々と暗くなるばかりだ。ぬるくなったお茶まで煩わしい気がする。話題は夏の参院選に移った。

 

 「五月上旬に民主党が実施した抽出世論調査では、一人区はだいたい自民党候補が民主党候補を上回っている。山梨のK氏は今のところ勝っているが、それは30対29と1ポイント差に過ぎない」

 

 こう言った私に、男は真剣な表情になって聞いてきた。

 

 「小沢幹事長は二人区に二人立てることにしていますが、共倒れもあると思いますか。民主党の議席は30台と見ていますか」

 

 首相官邸までは普段は歩く距離だ。だが、びしょ濡れになるのは嫌なので、タクシーを拾った。社の規定でワンメーター分、710円の金額では取材経費として精算することは認められない。当然、自腹となる。三年前の参院選の結果を見て、いずれ日本がこうなることは覚悟していたが、腹立たしいことばかりだ。

 

 そうだ、こういうときは気分転換に映画でも見よう。さいわい、今度の日曜日にはあの名作の上映会がある。

 

 第2回「正論」シネマサロン


 


 「受験のシンデレラ」上映会のお知らせ

雑誌「正論」は、読者の方との交流の場として映画上映会を開催しています。シネマサロンの第2回は、2007年度モナコ国際映画祭で作品賞、主演男優賞、同女優賞、脚本賞の四冠を獲得しながら、日本国内での公開は一部劇場にとどまった「受験のシンデレラ」(和田秀樹監督)を上映します。

 多くの受験生を東大に合格させ受験指導のカリスマと呼ばれる男が、驕り高ぶる日々のなか、末期がんに侵され余命1年半であることを知る。一方、父が出奔した後、働きもせず遊び呆ける母親のもとで暮らす少女は高校を中退し、彼氏にも裏切られて人生に絶望していた。自殺を図ろうとする少女に偶然出会った男は少女の抜群の数学センスに気づき、自分の残り時間をすべて費やして東大に進学させようと決意する

 いかなる境遇にあっても、明日を信じて努力すれば人生は必ず変えられる、夢は叶えられるというテーマを追求した本作は、新学期を喜びで迎えた若者、逆に失意で迎えた若者、その両親家族それぞれに向けて今や忘れ去られた感のある直向(ひたむ)きに生きることの意味、「努力すれば人生は変えられる」という熱いメッセージを届けます。家族のあり方、医療における「緩和ケア」や「格差」など今日的な問題も盛り込まれ、エンターテインメントの枠を超えた社会派ドラマとしても胸を打ちます。

 出演は寺島咲、豊原功補、田中実、浅田美代子ら。(2007年 (c)「受験のシンデレラ」パートナーズhttp://www.juken-movie.com/

和田秀樹氏のオフィシャルブログ「テレビで言えないホントの話」 http://ameblo.jp/wadahideki/entry-10517880017.html

「受験のシンデレラ」のDVD購入はこちら和田秀樹氏の公式サイト http://www.hidekiwada.com/

〔日時〕平成22年5月23日(日)正午(開演)~午後3時30分(終演)

〔場所〕九段会館大ホール 千代田区九段南1-6-5 地下鉄九段下駅すぐ

〔主催〕産経新聞社 雑誌「正論」 緑鐵受験指導ゼミナール

〔協賛〕積水ハウス株式会社

〔入場料〕事前予約1,000円(税込)当日券 1,500円(税込)(学生は学生証提示に限り1,000円) 全席自由

〔申し込み〕郵便番号、住所、氏名、電話番号・ファクス番号、購入する枚数を記入し、03-3241-4281までファクス、もしくはseirontaisho@sankei.co.jpまでメールでお申し込みください。予約番号を記して予約券として返送しますので、当日、受付にお持ちください。予約券をお持ちの方には1,000円で入場券を販売します。当日券は1,500円ですので、どうぞ事前に予約をお願いします。

〔問い合わせ〕産経新聞社正論調査室 03-3243-8454(平日午前10時~午後6時)

午前11時開場/正午開演です(上映時間106分)

映画上映後、本作の監督をつとめた和田秀樹氏(精神科医、産経新聞正論メンバー)、脚本をつとめた武田樹里さん(シナリオライター)、雑誌「正論」編集長・上島嘉郎によるトークライブを行います。