本日は社民党の連立離脱騒動その他でバタバタしているので、手短に一点、報告しておきたいと思います。鳩山首相は昨日、米軍普天間飛行場の訓練移転への協力を呼びかけた全国知事会議の場で、「日本固有の領土で、歴史上、国際法上ともに疑いがない」(政府答弁)沖縄・尖閣諸島について、次のように述べました。

 

 「施政権は当然日本が有しているということでありますだけに、もし日本と中国との間で例えば衝突があったときには、米国は日本に対して安全保障条約の立場の中から行動するということである。しかしながら、(米国は)帰属問題に関して言えば、これは日本と中国の当事者同士でしっかりと議論して結論を見出してもらいたいということであると私は理解しております。尖閣列島に対しては、有事ということで衝突が起きたときには、安全保障条約が適用されるという理解をしておりますが、米国にも確かめる必要があると思います」

 

 私はこれを聞いて、鳩山氏に対してはいつものことながら、心底、あきれました。かつ、背筋が寒くなる思いもしました。まあ、日本が尖閣諸島を実効支配していて、施政権を持っているという当たり前のことは一応、鳩山氏も分かっているようですが、その後がいただけません。

 

 ある外交関係者はこの鳩山発言について、「えっ、そんなこと言ったの…」と絶句して固まっていましたが、尖閣諸島の帰属問題に関する鳩山氏の発言は、不用意どころか明らかに外患誘致に当たると考えます。

 

 まず、尖閣諸島の帰属に関しては、日本政府の従来の公式見解は「解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない」というものです。それなのに、首相の言葉はまるで、領土問題の存在を認めた上で、これから中国と話し合いのテーブルにつく用意があると言っているかのようにも聞こえます。たとえ、首相の意図がそこになくても、中国側に付け入る隙を見せたのは間違いありません。

 

 次に、米国へも誤ったメッセージを与えかねない懸念があります。外交関係者はこの発言について「米国に対し、そんな『中立でいい』ようなことを言ってしまったのか…」と驚愕していましたが、これは安保条約の効力を自ら薄めると同時に、米国が何らかの事情で安保条約適用をサボタージュしたくなった際の言い訳に利用されかねません。鳩山氏は、ただ息をして、ふつうに話すだけで国益をどんどん損なう天才です。

 

 さらに、現状認識、事実認識にも大きな疑問がわきます。鳩山氏は、「安保が適用されるかどうか米国に確かめる必要がある」と述べました。でもこれは、日本の立場として力強く「適用される」と明言すべき場面でした。

 

 しかも、麻生政権のときに民主党の前原誠司氏らがさんざん、オバマ政権に確かめろと要求して、実際に麻生政権が米側に照会し、返事をもらっている話でもありますね。こういうことをあまり表でやって信頼関係に不信のタネを撒くのもいかがと思いますが、ともあれ昨年3月、米国は「尖閣諸島は日本の施政下にある。日米安保条約5条は日本の施政下にある領域に適用される」と公式に回答しているのです。そしてそれは、麻生首相の国会答弁、河村建夫官房長官の記者会見などで繰り返し表明されました。

 

 鳩山氏は、民主党が火をつけたこの話を全く知らないのか、それとも知っていてもう一度確かめたいというのか。前者なら間抜けな話だし、後者なら、改めて米国に対して「日本は米国に不信を抱いている」との言わずもがななメッセージを送るつもりでしょうか。鳩山氏はどうしてこうまで問題を複雑化し、こじらせる特殊能力に恵まれているのか。日本に仇なす無能の総理というしかありません。

 

 かつては民主党の小沢一郎幹事長が「壊し屋」と呼ばれていましたが、今では鳩山氏が日本そのものを壊しています。それも本人は何も意識しないまま…。