いろいろあって「徒労感」と「不遇感」に囚われてしまい、やる気喪失気味なのですが、エントリアップをさぼりすぎてもやはりナンだというか義理を欠くので、今話題の話をちょっとまったりと取り上げてみます。

 

 辻元清美前国土交通副大臣が社民党に離党届けを出しましたね。まあ、選挙区では民主党系の労組の支援がないと当選できないし、社民党に未来があるわけでもないし、いずれ民主党に加わりたくて沈みゆく船から逃れたわけでしょうが…。私は今回、辻元氏自身より、民主党閣僚の反応に関心をひかれました。

 

 元上司である前原誠司国土交通相が本日の記者会見で「素晴らしい政治家。もし無所属になられたら、まずは、同じ会派で共に一緒に仕事をさせていただきたい」と述べたのは、露骨ではあるけれどまだ分かるのですが、引っかかったのは中井ひろし拉致問題担当相のはしゃぎぶりです。中井氏はこう歓迎を表明しました。

 

 「彼女は鳩山内閣で、よく仕事をやっていただいた。一生懸命頑張ってくれたと高い評価をしている。これを契機に何とか一緒にやれる方法をお考えいただければ嬉しいがなぁと思っている

 

 私は辻元氏の過去の拉致問題に関する発言を思うと、やはり納得がいきません。もちろん、人間は過ちを犯すものだし、過去の言動をあまりあげつらうのも生産的ではないかもしれませんが、拉致問題担当相がそうまで辻元氏を持ち上げるのはいかがなものかと思います。

 

 中井氏は先日の金賢姫元北朝鮮工作員の来日時にも、特定失踪者問題調査会の荒木和博代表の面会要請を拒否し、金元工作員に失踪者の写真を見せて心当たりを尋ねることをしませんでした。どうもちぐはぐな言動が目立ち、いまひとつ信用がおけません。ともあれ、辻元氏の拉致問題に対する認識が分かる産経の過去記事を紹介します。

 

《北朝鮮の拉致問題 補償してないのに「返せ」ばかりフェアじゃない[ 20020317  東京朝刊  社会面 ]

 

 辻元清美議員、ネットで主張

 

 社民党の辻元清美政審会長が昨年十一月、インターネットに掲載されたインタビューで、北朝鮮による日本人拉致問題に関連、「北朝鮮には(戦後)補償を何もしていないのだから、そのことをセットにせず『九人、十人返せ』ばかり言ってもフェアじゃない」と発言していたことが十六日、明らかになった。

 辻元氏のインタビューは「カフェグローブ・ドット・コム」に昨年十一月中旬、掲載された。

 この中で、辻元氏は北朝鮮という国家が拉致という罪を犯している問題点を指摘しないまま、「拉致問題というのは、これまでにも世界のいろいろなところで起きている」と提起したうえで、拉致問題解決よりも北朝鮮との国交正常化を優先させるべきだと主張。

 さらに、「国交正常化の中では、戦後補償が出るでしょう。日本は、かつて朝鮮半島を植民地にして言葉まで奪ったことに対して、北朝鮮には補償も何もしていないのだから、あたり前の話」と述べている。(後略)》

 

 …この拉致軽視の発言は当時、それなりに話題になったので、記憶にある方もいると思います。この記事は後輩記者が書いたものですが、記事が掲載された後、辻元氏が真意を述べたいというので、私はその後輩記者と辻元氏に短いインタビューを行いました。以下がそれです。

 

《社民・辻元政審会長「9人、10人返せばかり言ってもフェアじゃない」[ 20020320  東京朝刊  総合・内政面 ]

 

 解決しなくていいとの趣旨ではない

 

 社民党の辻元清美政審会長=写真=は十九日までに産経新聞のインタビューに応じ、北朝鮮による日本人拉致問題に関連し、本紙が十七日に報じた「九人、十人返せばかり言ってもフェアじゃない」などの自身の発言について釈明した。

 --発言の真意は

 「拉致問題を解決しなくていいとの趣旨ではない。解決に向けて、進み出さないといけないと思っている。私は北朝鮮のシンパでもないし、代弁者でもない。ただ、交渉のチャンネル、窓口は持たないといけない」

 --まずは国交正常化というのは拉致家族には厳しい

 「拉致問題を解決しないと国交正常化が前に進まないというなら、拉致問題そのものの解決が難しいのではないか」

 --小泉純一郎首相は拉致問題の前進なくしては国交正常化はないと言っている

 「ひとつの考え方とは思うが、それを延々と言って解決できたのか」

 --社民党幹部は最近まで拉致家族に面会しなかった

 「昔の社会党というのはそれもあると思うが、私は新しいタイプだ。現実的に対応しないといけない。拉致問題は党派を超えて、衆院外務委員会の集中審議でやるべきテーマだと思う」

 --日本は平成十二年、北朝鮮にコメを支援したが、北朝鮮は「行方不明者」捜索を打ち切った

 「北朝鮮を孤立させるのがいいのかという議論はある。ただ、北朝鮮も国際社会にきちんとこたえる姿勢は大事だ。捜索を打ち切るのは不可解な行動で問題だ」

 --発言は軽率ではなかったか

 「自分の真意が伝わらなかったし、反省しなきゃいけないかなと思う」》

 

 …一応、反省は示していますが、まあ、つまりはそういう考えの人であるわけです。このとき辻元氏は私たちに猫なで声で「これからは、産経さんの意見もよく聞いて…ときどき意見交換をやりましょう」などと言っていましたが、その後、何かで意見を求められたことはありませんし、そんな機会は一度もめぐってきませんでした。

 

で、少なくとも、辻元氏は拉致問題担当相が「何とか一緒に…」と懇願するように話す対象ではないと思うのです。首相、法相(民間)と2人も拉致実行犯のシン・ガンス元死刑囚の釈放嘆願書に署名している内閣ですから、これも驚くには足りない話かもしれませんし、つまるところただの党利党略なのでしょうが。

 

 で、話はさかのぼって昨年春ごろの話です。当時、拉致被害者の「家族会」と「救う会」、拉致議連が訪米してオバマ政権の北朝鮮政策担当者らと意見交換しました。その際に米側は、家族会などに対し、岡田克也外相(当時幹事長)と前原氏の名前を挙げて次のような趣旨の懸念を示していました。

 

 「この二人は最近、米国で『日本が拉致問題にこだわることが、核問題解決の障害になっている』という趣旨の発言をしている。日本は拉致より核を優先させると政策転換したのか。オバマ政権はそう認識し始めていて、拉致問題を重視するよう主張してきた私たちの立場はないが…」

 

 その後、民主党代表選を控えて岡田氏は家族会と面会し、「そのようなことは言っていない」と釈明しました。しかし、前原氏の方は、家族会からそういう疑問をぶつけられても何も説明しようとしませんでした。もともと前原氏は「拉致より核優先」を明確にしてきた人なので、それも当然であるのかもしれません。あるいは、そのあたりも辻元氏と意気が合うのかなと…、これは少し牽強付会でしたか。

 

 世間のイメージはまた違うのでしょうが、私は辻元氏というと、この拉致軽視発言と秘書給与詐欺事件がまず頭に浮かぶのです。あとは、PKO部隊への侮辱とか、ピースボートの身勝手さとか。とにかく、ろくな連想はでてきません。