数日前の産経抄は「赤と黒」とスタンダールに引っかけて書いていましたが、菅直人首相と民主党の小沢一郎前幹事長との間で9月14日の代表選に向けて囲い込み、勢力示威、売り込み、神経戦、駆け引き、疑心暗鬼、足の引っ張り合い…その他みっともない動きが続いています。私も一応、政治記者の端くれではあるのですが、正直なところ、血湧き肉躍るどころか、うんざりげんなりお腹いっぱいというところです。

 

 しかしまあ、そうは言っても、日本の首相を決めることになる代表選の行方を取材し、報じないわけにもいかないし、どっちにしろ「ろくなもんじゃない」と思いつつ、あれこれ考えないわけにもいかないのであります。そんな政局より政策を論じよ、とお叱りを受けそうですが、結局、なんだかんだ言って政策を決めるのも政局であることは、政治の現場を見れば明らかです。

 

なので、それぞれの政治家が自己保身と自己利益に利用している「茶番劇」だと思いつつ、それを熱心に追いかけざるを得ないと…とぐだぐだ考えていたところ、昨日、西岡武夫参院議長が記者会見し、「政治に残された時間と余白はあるのか」という所感を発表し、民主党代表選のあり方を批判しました。

 

本来、政党の枠外・中立的立場を「タテマエ」的ではあっても求められる議長が、こういう文章を発表するのは異例なことだし、批判もあるでしょうが、内容に興味・共感を覚えた部分があるので抜粋して紹介します。

 

     私は、参議院議長として、所属していた政党が、代表を選出することに関しては、如何なる方法でも、投票権も採決権も行使しないし、党内において、発言することもありません。

 

     政権政党は、少なくとも、内閣総理大臣が続投を表明すれば、対抗する代表選の候補者は、相当の覚悟が必要である。自分が属する政党の代表であり、政権を手中にしている現首相を蹴落とそうとするのだから、敗れ場合(これは首相も同様だが)の立場は、惨めなものでなければ理屈に合わない。自分たちが選んだ現政権の理念と基本政策に異論を唱えるからには、突き詰めると、党を去ることも選択肢に入る

 

     だが、その実態は、全く私の考え方とは真逆である。(中略)対抗馬が理念や政策でなく、ただ代表選に出るだけで開かれた政党である、という虚構の下で、近年は、実際の代表選が行われている、という事実がある。

 

     代表選挙が行われ、その結果が出た瞬間、党大会の空気は、通過儀礼が終わった、という安堵感のような不思議な空気に包まれる。全く理解できない、緊張感のない雰囲気である。

 

     首相と戦って敗れた候補者(或いは候補者達)は、権力を互いに争ったのだから、政治家としての全情熱と政治生命を賭けた敗者としての身の処し方が当然ある筈である。このことは、敗者を推した総ての投票者にとって当て嵌まる。その結果は、特に国会議員にとって、政治家としての岐路に立たされる深刻な事態であるはずだ

 

     しかし、実情は、私の考える「本来の姿」からは、全く違う道筋を選択し、勝利者も、敗者も、党の空気も一変する。(中略)いわゆる「挙党一致」の空気が当然のことのように、勝利者も、挑戦した敗者をも呑み込んでしまう。

 

     この結果を予め想定して、自分自身が権力に近づく手段として、党大会での代表選挙を位置付ける、典型的な野心家の政党人の生き方を、私は、そこに見る

 

     事実上、猟官運動擬きの蠢きが開始される。そうして、敗者が、政治理念も政策も異なる筈の勝者から、党の要職か、閣僚のポストを与えられる、という仕掛けである。これは挙党一致でもなんでもない、茶番劇である。

 

     政権政党が、甘っちょろい党内の陳腐な就職運動劇をしている余裕は、断じてない。

 

     日本の進む方向や、広い視野を持った、総合政策のプランを語れる人材は、寡聞にして知らない。いま、そのことこそが求められている。

 

…これは別に西岡氏が菅首相を支持しているということではなく、あまり物事を安易に考えていて、言葉の軽い党内の空気や、また、それを煽っているようにも見えるマスコミ報道を批判しているのでしょうね。権力闘争というものを、あまりに軽くとらえ、覚悟もないままもてあそんでいないかと。

 

また、菅氏自身、これまで代表選が終わると「ノーサイドだ」という言葉を繰り返してきましたから。

 

 西岡氏は、旧自由党時代は小沢氏と行動をともにした人物でもありますが、今回の発言は、小沢氏や、その威を借る取り巻きたちへの痛烈な一撃にもなっています。「語れる人材は、寡聞にして知らない」というのは、当然、長く付き合ってきた小沢氏も含めてでしょうし。

 

 昨日は、この西岡氏の発言の後に鳩山由紀夫前首相がBSフジの番組に出演し、「ガチでやったら決して国民のためにならない。小沢、菅の両氏は2人とも(個性が?)強すぎる。そこで優しい私が仲介に入る」「自分は自分として、いい政策を作り上げてきているという自負はあった。友愛が旬の思想になってきている」と述べました。

 

この一言を聞いて、私は、本当に鳩山氏が首相を辞めてくれてよかった、と心の底から思いました。まったくろくでもない、自己愛ばかりが肥大したどうしようもない脳天気で自分勝手な人物だと再確認した次第です。

 

こんな人に代表選で支持する条件を突きつけられながら、「どうすればいい?」と電話する菅氏も菅氏だし、こんな人がいまだに発言権と影響力を持つ民主党もなんだかなあ、ですね。だいたい、政治とカネの問題で引責辞任した人物が、それから2カ月しか立たないのに、何をこんなに偉そうに振る舞っているのか。この人の勘違いは一生治らないと知りつつも、腹立たしい限りです。