きょうはちょっと目先を変えて、今朝の在京各紙のベタ(1段見出し)記事・ミニ記事の中で、私が興味深いと感じたものをいくつか適当に見繕って紹介します。その日のニュースの多寡や編集幹部の価値判断、社内の方針・都合その他で、重要な内容だったり、面白い事象だったりしても、載らなかったり、ベタ記事として扱いが小さくなったりするものですから。

 

 まずは、朝日新聞の政治面の19行の記事からです。これは、私も昨日の参院予算委員会を聞いていて、一つのポイントだと感じたところでした。

 

 「対外関係考慮『先例はない』 船長釈放めぐり法務省」

 《尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の処分をめぐって那覇地検が日中関係を考慮したと説明している点について、法務省の西川克行刑事局長は25日、参院予算委員会で「この事件以外に外国との関係を考慮した例は承知していない」と答弁した。中国人船長の釈放を決めた地検の判断が前例のないものだったことを法務省が認めたのは初めて。草川昭三氏(公明党)の質問に答えた。

菅内閣は19日、検察官が刑事処分を判断する際に「国際関係への影響などについても考慮できる」という答弁書を閣議決定していた。》

 

 …これについては、産経は記事として見出しを立てるスペースがとれず、参院予算委詳報の中で、以下のように一問一答を紹介しています。

 

 《草川昭三氏(公明)「過去に国際関係への影響を考慮し、刑事事件への処分を判断した例はあるか」

西川克行法務省刑事局長「この事件以外での例は承知していない」》

 

 これは極めて重要な部分だと考えます。仙谷由人官房長官らは、船長釈放は「地検独自の判断だ」と言い張り、かつ、刑事訴訟法の手続き上、それはごく普通のことであるかのように強弁してきました。さらには、それを質問主意書で質問されると、政府答弁書で「検察は国際関係に考慮して刑事処分できる」という内容を閣議決定さえして既成事実化したのです。

 

 この卑怯で姑息なやり口と、なんでもかんでも地検など現場の責任に押し付ける菅内閣の姿勢に、おそらく法務省側がぎりぎりの抵抗を示したのがこの「前例はない」という答弁だったのではないかと推測します。今回の事例が、いかに異例かつ異様な事件処理であったかが分かりますね。もちろん、西川刑事局長に直接そう聞いても、「そんなことはない」と否定するでしょうが。

 

 次に、産経のもっと短いミニ記事を掲載します。上記の問題と関係があるような気がするからです。

 

 「首相、検事総長の罷免を否定」

 《菅直人首相は25日の参院予算委員会で、一連の検察不祥事などを理由に大林宏検事総長を罷免する可能性について「検察に人事権を行使することは考えていない」と否定した。(以下略)》

 

 …言うまでもなく、検察は現在、大阪地検特捜部の大不祥事に揺れています。今回の中国船衝突事件での船長釈放について、検察が「自分たちの判断だ」と泥をかぶったのも、大林検事総長のクビを守るため、官邸側と「暗黙の取り引き」に応じたのではないかと言われていますね。だからこそ、普通であれば検察トップの責任に言及するはずの菅首相らが、前代未聞の不祥事にもかかわらず、妙に大林検事総長をかばっているのではないかと邪推したくもなります。あるいは、本当にそうだったりして。

 

 次に、同一人物の発言をめぐって、新聞によってとらえ方が分かれた事例を紹介します。これはどちらかが間違っているというより、話者がわざと多義的な話し方をして、自分の意見をあいまいにしているように思えます。まずは毎日新聞のミニ記事からです。

 

 「鳩山氏進退問題『他人は口出し無用』」

 《民主党の岡田克也幹事長は25日の記者会見で、鳩山由紀夫前首相が政界引退の方針を事実上撤回したことに関し「議員の身分に関することは他人が何かコメントすべきではない。自らの言葉については自らが責任を持つのが基本だ」と述べ、鳩山氏の判断に委ねる考えを示した。(以下略)》

 

 …「コメントすべきではない」という言葉に「口出し無用」という見出しをつけるのはちょっとどうかな、という気もします。まあそれはともかく、この岡田氏の同じ発言について産経はこう対照的な見出しをつけて書いています。

 

 「引退撤回の鳩山氏に苦言 岡田氏『言葉に責任を』」

 《(前略)岡田克也幹事長は、同日の記者会見で「自らの言葉については、自らが責任を持つのが基本だ」と述べた》

 

 …よく新聞報道は一部を切り取って恣意的に報じると批判されます。その指摘はもっともだと思いますが、見出しが一本しかつけられない場合、発言のどの部分を重視するかで、結果的に全く印象の違った記事になるという現実は、なかなかいかんともし難いものがあります。

 

われわれは、先輩記者に耳が痛くなるほど「見出しが大事なんだ」と教わってきましたが、特に短い記事の場合、複数の見出しを立てることや、記事内で補足説明を加えることは不可能なので、自己の判断に従って、「これはこの部分がニュースだ」「こっちが重要だ」と感じた方を生かすしかありません。それがネットで配信された場合、紙面のバランスや他の記事との関係が目に見えないだけに、余計に読者の不信を招くことになっているところは否定できず、悩ましいのですが…。

 

 ちなみに、この鳩山氏の引退撤回に関しては、東京新聞のベタ記事内にあった自民党の大島理森副総裁の発言が目を引いたので引用します。

 

 

 「鳩山氏引退撤回 『国民は失望』野党から批判」

 《(前略)大島理森副総裁は記者団に「これはもう『国会議員発言責任法』をつくらなければならない。本当にけしからん」と述べた。(中略)公明党の山口那津男代表も記者団に「自らの政治とカネの問題でうそを重ねてきた。前言を撤回して政治活動を続けることが国民の不信を増加させるのではないか。その点の自覚が乏しいと言わざるを得ない」と批判した。(以下略)》

 

 …国会議員発言責任法はいいですね。大賛成です。ぜひ成立させて、鳩山氏だけでなく仙谷氏にも適用してほしい。鳩山氏に関しては、産経もミニ記事で自民党の谷垣禎一総裁の言葉を載せているのでそれにも触れておきます。

 

 「谷垣氏『現政権にウソ許される思想』」

 《「今の政権は国会答弁を甘く見ている。学生当時に新左翼だった友人は『権力と戦うのだから多少のウソぐらいは許される』と言っていた。非常にシニカルな思想が今の国会運営から現れてきているのではないか」》

 

 …まさか、この新左翼だった友人って、東大の同級生だったという仙谷氏じゃないでしょうね?この小さな記事を読みつつ、そんなことをふと思った次第でした。実際、ありえないことではないし。いずれにしろ、現在はその「ウソつき」たちが権力を握っているわけで、そりゃ大変なわけですねえ。やれやれ。

 

 あと、ベタ記事ではありませんが、今朝の朝日の鳩山氏批判は突き抜けていましたね。社説「新たな役割期待したのに」で、「あれれ、と思う」と書き、政治面トップで精神病理学者のコメントまで引いて「辞めるのや~めた 軽すぎる 鳩山前首相 地元も不信」と突き放し、署名解説記事で「資格なし、政界引退を」と改めて断じています。もっとやれ!やれ!