最近、政治家の言葉とは何だろうかと、薄らぼんやりとした頭で考えることがよくあります。言葉で他者を説得し、味方に引き入れ、協力させることが仕事である政治家の浮沈は、当然のことながら、いかに言葉を操ることができるかで決まるのだと感じる機会が多いからです。

 

 政治家は、その発した言葉で大きな力を得るものだし、同時に、口に出してしまった失言、暴言、食言、寝言で地位や名誉や信用を失い、没落していきます。菅内閣は特に舌禍内閣の様相を呈しており、特に仙谷由人官房長官に至っては権力の「暴言装置」といった感すらありますね。

 

 そしてまた、政治家の言葉は思わぬ本音や深層心理を表していることもありますね。福田康夫元首相が退任の記者会見で思わず語った「あなたとは違うんです」など、それまで彼が首相として語ったどんな言葉より、彼の真実、実態を示しているように思いました。無意識に出てくる言葉だからこそ、あるいは本人も意識していない本当の姿が現れてくるのかもしれません。

 

 さて、ここからが本題なのですが、今や民主党の小沢一郎元代表の一の子分という自分の居場所を見つけた鳩山由紀夫前首相の話です。この「ルーピー」の愛称で世界中に親しまれている道化師は18日、苫小牧市のホテルで開いた後援会との会合で、政界引退を撤回し、またもや見事に国民を笑わせてくれました。

 

 ただ、もうこんな人をここで取り上げるのにも抵抗がありましたし、何をどうしようとルーピーはルーピーなので放っておき、現地取材をした小島優記者のメモもあまり真剣に読んでいませんでした。

 

 ところが、新聞各紙のスクラップをしていて、19日付の東京新聞を手にしたところ、「鳩山氏 引退撤回を正式表明 叫ぶは『友愛』 行動は火に油」というまことに的確な見出しの記事の一節が目につきました。そこには、こうありました。

 

 《鳩山氏は後援会会合で「国益に資する政治を行うため、次の衆院選でも行動を共にしたい」と強調。「私が民主党をつくった張本人。党の友愛の体質が壊れ始めている。一致団結して挙党態勢をつくらなければならない」と訴えた。》

 

 えっと驚いて、小島記者のメモを再読すると、確かにこうありました。

 

 《私が民主党をつくった張本人。その張本人として申し上げれば…》

 

 なるほど、鳩山氏は「犯意」を認めていて、それを表明したわけですね。だって、広辞苑によると、張本人とは以下の意味ですから。

 

 「事件を起すいちばんもとになった者。発頭人。首謀者」

 

 念のため、岩波国語辞典も引いてみましたが、やはりこうありました。

 

 「事件を起こす一番もとになった者。事件が起こるもと」

 

 事件には単に「出来事」という意味と、「もめ事」という意味と両方ありますが、いずれにしろ、張本人というと、「悪事を企む張本人」だとか「騒動の張本人」だとか、あまりいい意味で使用される言葉ではありませんね。なので、「民主党をつくった張本人」というと…。

 

 鳩山氏も、実は心の奥底では本当のところをよく理解していて反省しており、その思いをほのめかしてみせた…わけはないか。なにせ、「国民が聞く耳を持たなくなった」なんて、頑迷な国民が悪いと言わんばかりの言葉を残して首相を辞めていったルーピーですからね。

 

 もちろん、言葉遣いが難しいのは政治家に限ったことではありません。新聞に文を書くのが仕事である私自身も、言葉の誤用や誤変換、選択ミスで日々、恥をかいたり、青くなったりしています。このブログでも、しょっちゅう、誤字脱字を指摘されていますし(感謝しています)。