さて、昨年末ごろから急にリーダーシップの演出に熱心となり、同時にひたすら野党に抱きつき「熟議の国会」を連発するわれらが菅直人首相についてです。最初から分かっていたことと言えばそれまでですが、この人のなんとも小さなキャパシティーと、一国の指導者らしからぬ言動、そしてそれを自らさらけ出していることに気付かぬ鈍感ぶりに、いつもため息をつくばかりです。

 

 といっても、例の国債引き下げに「疎い」発言は、テレビも産経を含めた新聞各紙も大きく取り上げているので、この隙間ブログとしては、もっとささいなことを取り上げようと思います。

 

 菅氏は今年1月4日、1年間の抱負と覚悟を国民に呼びかけるべき年頭記者会見で、いきなりこう語り出し、記者たちの失笑を買っていました。

 

「特に2点について具体的にお願いしたいと思います。ひとつは国会での質疑の、その質問要旨を、質問をされる、せめて24時間前には提示をいただきたいということであります。先の臨時国会で、予算委員会などでは、前の日のその質疑を翌朝5時に起きて、そしてそれを見て頭に入れるのが精一杯という時間の拘束がありました。これでは本当の意味での議論ができません。英国は3日前までに質問要旨を出すとうのが慣例になっておりますけれども、せめて24時間前にそうした質問の要旨を出すということを与野党を超えての合意とぜひ、していただきたいと思います」

 

 国内外に問題が山積する中で、しかも国民に向かって語りかける場で、菅氏はいきなり、国会質問は早めに提出してくれないと答えられないと主張しだしたのでした。こういう風に言えば、国民が同情して支持率が上がるとでも考えたのでしょうか。実際は、ただ己の能力と見識の低さを露呈するだけだというのに…。

 

 そして、翌日の5日にも、時事通信社などの新年互礼会の場であいさつした際、いきなりこんな「お願い」を始めました。

 

「メディアに皆さんには、もっと国会のあり方についてもですね、是非大きな議論を国民の皆さんに伝えていただきたい。昨日の、年初の会見で申し上げた、せめて国会質疑に当たっては24時間前に、野党の皆さんに質問を出して頂きたい。これは私自身に対する反省も含めて、野党時代の反省も含めて(会場で笑い声がざわざわと…)申し上げておりますが、そう言うことはメディアの皆さんはよく知っておられるけれど、ほとんど報道されない。メモしか見ないとかですね、うつむいてばかりいるって言ったって、朝5時に起きてもやっと質問が一通り答弁を見るのが精一杯という日程の中では、とても熟議としての議論にはならないわけであります」

 

 まあ、何をどう言おうと自由ではあるかもしれませんが、24時間前の質問提出が、メディアが大々的に取り上げるべき「大きな議論」でしょうか。それはむしろ、与野党間の国対協議だかなんだか、そのレベルで内々に話をし、打ち合わせておけばいいことではないかと。

 

 だいたい、会場で笑いが起きたことでも分かるように、われわれは菅氏が野党時代、政権与党だけでなく、質問取りにくる役人をいじめるために、わざわざ深夜まで質問提出を遅らせ、しかもごく簡単で抽象的な質問書しか出そうとしなかったことを知っています。何を偉そうに被害者面しているのだか。

 

 さらに、7日にインターネット番組に出演したときも、脈絡なくこんなことを言い出しました。菅氏は昨年末以来、ぶらさがりインタビューの際などでも、ペーパーを見ない質疑を心がけていたはずですが、よほど自分のアドリブ答弁には自信がないのでしょうね。あるいは夜、うなされているとか。

 

「日本のシステムは、あの、総理を萎えさせるような要素が、いろんな意味でたくさんありますから。例えばタイトな国会の審議にもですね。私がこの間、テレビで申し上げたように、せめてやっぱり質問はですね、24時間前に質問要旨をもらいたいというのは、決してこちらがなまけたいからでなくて、ちゃんとした議論をするためには、それでなければできないんですよ。結局、その時間が取れないようなタイトな時間で進んでいくと、だんだん自分の頭がですね、回る余地がなくなってしまって、最後は、もうこんなことをやってても変わんないや、ということになるということなんですね。(中略)国会のルールというのは、これは法律に必ずしもなっていない慣例もあります。さっき言った、24時間前とか、2日前の昼までとかですね。そういうものはやはりお互いに野党与党を経験をほとんどの党がしましたから。そういう中でやっていきたいと思ってるんです」

 

 確かに、仙谷由人前官房長官も昨年12月、菅氏について「朦朧となっている」とこぼしましていたのは以前のエントリで紹介した通りです。11月の横浜APECでの胡錦濤・中国国家主席との冒頭あいさつでいきなり紙を読み出したこともありましたが、この際、ある政府関係者は自分の頭を指さして「菅さんは、ここのキャパが足りないから」と酷評していたのを思い出します。

 

 で、世の中いろいろあるので、この質問予告問題はしばらく忘れていたのですが、27日の衆院代表質問の答弁で、菅氏のみんなの党の渡辺喜美代表の質問にまたこんなことを述べました。

 

「質問にできるだけ誠実に答えたいと思っています。ただ、質問の通告をいただいたのが午前中の参議院の質疑中でありまして、事実上、答弁を準備する時間はほとんど取れませんでしたので、多少の答弁が食い違うかもしれないことは、渡辺さんご自身もわずか2、3時間前に出された質問通告でありますから、ご了解をいただけるものと思っております」

 

 誠実にも何も、菅氏が相手の質問に対し、たどたどしく引っかかり、読み間違えながらペーパーを読み、しかもまともに答えていないのはご存じの通りです。でも菅氏の主観の中では、こういう風に反論したら国民は納得し、自分の味方になると信じているのでしょう。

 

28日の閣議前には、わざわざ記者団が見ている前で北沢俊美防衛相にこんなことを話しかけていました。

 

「今日はこれから参院で8名の方の質疑を受けます。いろいろと言われているところでありますが、遅いものは8時35分に質問の全文が届きました。.今朝のです。今一生懸命読んでいたところです」

 

 いったいどの程度の覚悟で首相になろうとしたのか、今さらながらに精神構造を疑います。そして、遅い質問通告に困っているのは本当だとしても、それをのべつまもなく愚痴ることが、首相の振るまいとしてどうなのかには思いが至らないらしいところに、またがっかりです。

 

この日の参院代表質問では、みんなの党の川田龍平氏への答弁でもこんなことを言い訳がましく言っていました。

 

「先ほど川田龍平議員から渡辺、みんなの党代表の質問に私が答弁をしなかったように言われましたが、そんなことはありません。ただ、昨日、最終的な文書をいただいたのは11時30分で、まだ私はこの議場におりました。2時からが質疑でありまして、たいへん項目が多いためにそれを詳細に答弁に起こすことができなかったわけでありまして。そういったことについて、やはり渡辺代表にも、少なくとも前の日の間には出していただきたいと思っております。また、川田議員も、項目は確かに昨日いただきましたけれども、全文をいただいたのはは今朝8時35分でありました。8人の方から今日質疑をいただきますけれども、そういう出し方で熟議をしたいと。私は熟議をしたいと、誠実に答えたいと思っていますけれど、是非とも熟議をしたいと言われるのであれば、ちゃんと答弁の準備ができる時間に質問を出して頂きたいと申し上げておきたいと思います」

 

 菅氏の中では、熟議とは時間の余裕をもって役人に答弁を書いてもらうことのようです。さすがは「政治主導」の民主党です。この川田氏の質問の際には、議場ではこんなヤジが飛んでいました。

 

「あら?」「総理でしょ?」「言い訳はいい」「言い訳はやめろ!」「見苦しい」「情けない」「民主党議員の提出時間チェックするからな」…。もちろん、ヤジはほめたものではありませんが、その気持ちはよく分かります。

 

 今朝、産経新聞の木村正人ロンドン支局長のコラム「『鉄の女』を生んだ政治風土」を読んだところ、サッチャー元首相について私的補佐官を務めたパウエル氏が語った次の言葉が記されていました。

 

 「彼女は要求のきつい指導者だったが、自らは午前3時前に就寝することは決してなく、午前6時には起床して仕事をしていた」

 

 さて、サッチャー氏が菅氏のようにみっともなく愚痴ったりしていたでしょうか。まあ、比較の対象にすること自体、失礼にあたりますが、記事を読みつつ、いよいよ菅氏のことが恥ずかしくて仕方がなくなったので、このエントリを書いてみました。どこに出しても恥ずかしい首相は、スイス・ダボスでどんな醜態をさらしたことやら…。